今、世界で何が起きているのか?
有名経済学者でノーベル賞受賞者のポール・クルーグマン教授が、アメリカの最新の貿易政策について強い警鐘を鳴らしています。
特に問題視しているのは、関税(輸入品にかける税金)が急激に引き上げられたこと。それにより、世界の経済の流れが大きく変わろうとしています。
なお、4月9日木曜日には高い関税は、10%の関税に90日間暫定で戻されています。ただ、関税自体はなくなったわけではありません。
関税が上がると、何が困るの?
関税が高くなると、輸入品の価格が上がります。すると、消費者が払う金額も高くなり、生活が苦しくなります。それだけでなく、企業も海外から部品を仕入れにくくなり、生産コストが上がってしまいます。
クルーグマン教授は、「今回の関税の上げ幅は、1930年代の『スムート・ホーリー関税法』よりもひどいかもしれない」と言っています。この法律が原因で世界恐慌が悪化したとも言われているほどの影響力があったのです。
なぜビジネスが不安になるの?
今回の問題は、ただ関税が高いというだけではありません。
「数か月後にどれだけ関税がかかるか、誰にもわからない」ことが問題なのです。これでは企業は安心して投資や生産計画を立てられません。今の状況では、製造業の人たちは「何も動けない」と感じているでしょう。
中国やヨーロッパはどう動く?
中国はアメリカの関税攻撃に対して強く反発しています。
中国もアメリカに対して関税をかける可能性があり、貿易戦争が激化するおそれがあります。ヨーロッパに対しても、アメリカは「不公平だ」と主張していますが、実際にはヨーロッパの関税は非常に低く、問題視されるようなものではありません。
トランプ政権の狙いは「世界経済の再編」?
トランプ前大統領は「国と国の貿易はすべてバランスが取れていなければならない」と主張しています。しかし、これは現実には不可能です。
たとえば、あなたがお給料をもらって、そのお金でスーパーで買い物をしたとします。そのスーパーはあなたから何かを買ってくれるでしょうか? きっと買ってくれませんよね。国同士の貿易も同じです。
関税が経済に与える影響はどれくらい?
クルーグマン教授は、「関税の影響は、2乗で効いてくる」と言います。10%の関税が経済に与えるダメージを「1」としたら、20%になるとその影響は「4倍」になるというわけです。
例えばイギリスがEUから離脱した「ブレグジット」ではGDPが3~4%下がったと見られていますが、今回のアメリカの関税政策はそれ以上の影響をもたらす可能性があると言われています。
一番ダメージを受けるのは誰?
関税で損をするのは、消費者と企業の両方です。特に、物価の上昇と同時に企業がモノを作りにくくなると、失業が増えたり、給料が上がらなかったりと、生活への影響も出てきます。
長期的には失業率はそれほど上がらないかもしれませんが、「生産性」や「実質所得」(物価を考慮した実際の生活レベル)は確実に下がるだろうと予測されています。
今後のアメリカ経済はどうなる?
クルーグマン教授は、「今年中にアメリカは景気後退(リセッション)に入る可能性が高い」とも述べています。普段、関税が原因で景気後退が起きることはあまりないのですが、今回は「不確実性」が非常に大きいため、経済が止まってしまう可能性があるのです。
グローバル経済の未来は?
今までの世界は「グローバル化」によってつながってきました。さまざまな国が協力して製品を作り、取引をしてきました。しかし、もしアメリカが平均23%もの関税をかけ続けると、そうした仕組みは壊れてしまいます。
科学やテクノロジーへの影響も深刻
経済だけでなく、アメリカでは科学研究費の削減や人員削減が進んでいます。これにより、未来のテクノロジーの発展にもブレーキがかかり、「アメリカの強み」が失われるおそれも出てきています。
今、政治は何をすべきか?
現在、アメリカの貿易政策は大統領の裁量に任されていて、議会はほとんど関与していません。
クルーグマン教授は、「このままでは危険。議会が権限を取り戻し、正常な政策に戻すべきだ」と強く訴えています。
まとめ:関税がもたらす未来を正しく理解しよう
ポール・クルーグマン教授の話を通じて、今のアメリカの貿易政策がどれほど異常で危険かがわかってきました。短期的な政治的判断が、長期的には経済や技術、私たちの生活にまで大きな影響を及ぼすのです。
私たち個人としては、情報を正しく知り、感情的なニュースに振り回されずに冷静に経済の動きを見ていくことが大切です。
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