「天下一品に行きたいけど現金がない」、キャッシュレス社会と飲食店のすれ違い

天下一品のラーメン 【チェーン店】

かつて、Suicaで支払いができた頃によく通っていたラーメン店が、こってりスープでおなじみの「天下一品」です。

しかし、いつのまにか現金のみの支払いに変わってしまい、それ以降はすっかり足が遠のいてしまいました。代わりに利用するようになったのが、交通系ICカードやQRコード決済に対応している「どうとんぼり神座」です。

天下一品のラーメンを食べたいと思っても、現金を持っていないために諦めてしまう。そんな経験をされた方も、意外と多いのではないでしょうか。

「キャッシュレス決済がないなら、行かない」

近年では、スマホひとつで生活できるほどキャッシュレス化が進んでいます。現金を持ち歩かないライフスタイルが当たり前になりつつある中で、「現金のみ」の店舗に不便さを感じる人は少なくありません。特に都市部に住む20代から40代ではその傾向が強く、飲食店を選ぶ際の基準として「キャッシュレス対応かどうか」を重視する声が高まっています。

実際、アルファノートの調査によると、飲食店利用者のうち約65%が「キャッシュレス決済の可否で来店を判断する」と回答し、約50%が「現金のみの店にネガティブな印象を持つ」としています。つまり、キャッシュレス対応が「集客の入口」となっているのです。

https://www.tenpos.com/foodmedia/management/money/21289/

「ちょっと高くても、ポイントがつくならOK」な心理

一部の消費者は、「キャッシュレスにすると、その分コストが上がるのではないか」と懸念するかもしれません。しかし、実際には逆の傾向が見られます。ジー・プランが2025年に実施した調査によると、キャッシュレス決済を利用する人の約80%が「ポイント還元」を重要な理由として挙げています。つまり、「少し値段が高くても、ポイントで相殺できるなら構わない」と考えているのです。

豆知識: 中国のスーパーマーケットで行われた研究では、モバイル決済を使ったグループのほうが現金よりも平均購入金額が高くなる傾向が観察されました。支払いが簡単になると、支出に対する心理的抵抗が弱まるためだとされています。

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飲食店のキャッシュレス対応状況

経済産業省の調査によると、飲食店の約9割が何らかのキャッシュレス決済に対応しています。ただし、その対応内容には差があります。クレジットカード決済は58.3%、QRコード決済は68.4%と高い普及率を示している一方で、交通系ICカードは33.2%に留まっています。ショッピングモール内の店舗では対応している場合もありますが、路面店では未対応のケースが多く見受けられます。

一方、「どうとんぼり神座」のようにSuicaをはじめとした多様な決済手段に対応している店舗は、キャッシュレス派にとって非常に利便性の高い選択肢となっています。東京駅グランスタや渋谷店では、Suica・クレジットカード・QRコード決済に幅広く対応しており、「財布を持たずに出かけても安心して食事ができる」と感じられるでしょう。

  • 神座:交通系IC、クレジットカード、QRコード全対応。都市部に多数出店。
  • 天下一品:一部店舗でQRコード決済導入あり。基本的には現金主義。

「キャッシュレスがあるから、選ばれる」時代に対応しないこと

飲食店にとって、味や価格と同じくらい大切になってきたのが「支払い手段の選択肢」です。現金しか使えないことで、どれだけおいしいお店でも「選ばれない」可能性があるのです。これは経営面でも見逃せないポイントといえるでしょう。

特に若年層をターゲットにした店舗や、都市部の高回転型のラーメン店においては、「キャッシュレス未対応」が集客機会の損失につながることもあります。反対に、キャッシュレスに対応しているというだけで「なんとなく便利そう」と選ばれるケースもあるのです。

「行きたい店」から「行ける店」へ

私は本当は「天下一品」が食べたいのです。しかし、Suicaが使えないために「神座」へ行くことにしています。

せっかくなので、天下一品で豚キムチ定食を食べに行きました。

このような行動は、個人の好みや財布の中身だけでなく、時代の流れを反映しているのかもしれません。キャッシュレス社会において、飲食店は「味」や「値段」だけでなく、「支払い方法の選択肢」でも評価される時代になっています。

現金派の方もまだ多い時代だからこそ、どちらにも対応できる柔軟な飲食店こそが、これから選ばれ続ける存在になるのではないでしょうか。

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