EVと内燃車、どちらが効率的か?エネルギー変換から2030年の未来まで徹底検証!

ev 暇つぶし

電気自動車(EV)とガソリン車は、どちらが効率的なのか。

この問いに対して、多くの人が直感的な意見を持つが、ここでは熱量、発電効率、送電ロス、モーター効率などの科学的なファクトを積み上げて、冷静に比較していく。さらに、2030年の日本におけるEV普及と発電量のバランス、そして電力網へのインパクトについても掘り下げてみました。

石油1リットルの使われ方:EVと内燃車で何が違う?

まず、燃料としての石油1リットルが持つエネルギー量は約10.5kWhとされている。これは、非常に高いエネルギー密度を持つ液体燃料の特徴でもある。

しかし、問題はこのエネルギーをどれだけ効率的に車両の動力に変換できるか、という点である。EVと内燃機関車(ガソリン車)とでは、その仕組みが大きく異なるため、エネルギー変換効率にも顕著な差が生じている。

EVの場合

EVの場合、石油を直接使うわけではないが、例えば火力発電所で石油を燃やして発電した電気をEVに供給することを想定する。その際のエネルギー変換の流れは以下の通りだ。

まず、最新の複合ガスタービン発電所(GTCC)では、熱エネルギーから電力への変換効率が約55%に達する。次に、発電された電力は高効率な日本の送電網を通じて運ばれるが、その送電効率は約95%とされている。

さらに、EVのバッテリーは充電と放電の過程で約90%のエネルギーを維持できる。そして、最終的に車輪を回すモーターは非常に効率が高く、その変換効率は98%にも達する。これらの効率を全て掛け合わせると、石油1Lあたりのモーター出力として約5.4kWhが得られる計算になる。これは、日産リーフなどのEV車が1kWhで6km走ると仮定すれば、1リットルあたり32.4kmの走行距離に相当する。

ガソリン車の場合

一方、ガソリン車では石油をそのままエンジンで燃やして動力を得るが、その熱効率は一般的に30%程度である。つまり、燃料に含まれるエネルギーの70%は熱として無駄になっているということだ。近年の高効率エンジンでは40%を超える場合もあるが、それは理想的な走行条件での話であり、実際の道路環境や気温などを考慮すれば平均値として30%前後が現実的である。

したがって、石油1L(10.5kWh)から得られる駆動力は約3.15kWh程度にとどまる。1kWhあたり5km走るとすれば、走行距離は15.75kmに過ぎず、EVの半分以下となる。

ハイブリッド車(HV)はどうか?

ハイブリッド車(HV)は、エンジンとモーターの両方を使用することで効率の向上を図っている。たとえばトヨタ・プリウスなどでは、回生ブレーキにより減速時のエネルギーを回収し、燃費は30km/Lに達することもある。ただし、これは最適な条件下での最大値であり、日常的な運転ではそれほど高くはならない。

また、EVにも同様に回生ブレーキが搭載されており、さらにアイドリング時に無駄な燃料消費がないため、都市部のストップ&ゴーの運転ではEVの方がより効率的であるといえる。

豆知識: モーターはエンジンよりも圧倒的に効率が高く、都市部の短距離運転ではその差がさらに顕著になる。特に渋滞時や信号の多い道では、EVの利点がより際立つ。

送電効率の現実:日本と海外でこんなに違う!

日本の送電効率が約95%と極めて高いのは、全国に張り巡らされた高品質な送電網と、高電圧送電技術、そして比較的短距離な送電構造によるものだ。しかし、この水準は世界的に見れば例外的である。

例えばアメリカのような広大な国土を持つ地域では、送電距離が長く、また老朽化した送電網も多く存在するため、平均的な送電効率は90%を切ることもある。つまり、同じEVであっても、その国の送電インフラによってエネルギー効率に差が生じるのだ。

EVの航続距離はどこまで伸びる?技術とコストの進化

次世代電池の登場

これまでEVの課題とされてきたのが「航続距離」だった。しかし、近年では固体電池や半固体電池といった新技術の登場により、その限界が急速に押し広げられている。

2024年にはNIOやIM Motorsが1,000km以上走行できるモデルを発表し、2027年には中国のChanganが1,500kmを走行可能なEVを発売する計画だ。

コストの進化

EVの価格の大部分を占めていたのがバッテリーコストであるが、BloombergNEFの予測によれば2030年には1kWhあたり80ドルまで低下すると見込まれている。これは2020年代初頭と比較して50%以上の削減にあたり、EVとガソリン車の価格差がほぼ消滅する水準である。

そしてエンジン車は、すでにコストダウンが限界に来ているが、EV車はまだまだコストダウンの余地が残されている。

2030年、日本のEV台数と電力供給は釣り合うのか?

想定EV台数と電力需要

政府の目標や市場動向から見ても、2030年には日本国内でEVが1,000万台を超える可能性は十分にあるとされている。1台あたりの年間走行距離を1万km、電費を6km/kWhと仮定すると、年間の電力消費は1,667kWh程度。これを1,000万台分に換算すれば、約166.7億kWhが必要となる。

日本の年間総発電量(約8,640億kWh)に対しては、わずか1.9%に相当するに過ぎず、供給総量としては十分に余裕があるといえる。

それでも電力網は壊れないのか?

重要なのは「いつ電力が使われるか」という時間帯の問題だ。もし全てのEVが夕方から夜にかけて一斉に充電を始めれば、ピーク負荷が急激に高まり、地域によっては電力網に大きなストレスがかかることになる。

対策は進んでいる

  • スマート充電システムを導入し、深夜など負荷の低い時間帯への充電を促す
  • 時間帯別の電気料金制度を活用してピーク分散を図る
  • V2G技術によってEVから電力網への供給も可能にする
  • 全国で急速充電器を含む30万基の充電インフラ整備を推進中

注目技術: V2G技術を活用すれば、EVは”動く蓄電池”として停電時にも家庭を支えることができる。地域電力の需給バランス調整にも寄与する期待が高い。

EVは本当に未来の主役なのか?

ここまで見てきたように、エネルギー変換効率ではEVが内燃機関車を圧倒しており、今後の電池技術の進化によってその優位性はますます強まっていくと考えられる。ガソリン車やハイブリッド車に対しても、都市部での実用性や維持コストの観点からEVの方が優れている点が多く、社会全体のカーボンニュートラル政策とも合致している。

もちろん、充電インフラの整備や電力供給体制の対応など、乗り越えるべき課題も多い。しかし、それらはすでに解決に向けた取り組みが始まっており、技術と制度の両輪で進化している。

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