【NYマムダニ氏政策の逆説】格差をなくす理想が格差を広げる?

暇つぶし

ニューヨーク市の新市長、ゾーラン・マムダニ氏。

彼は「すべての人に公平な都市を」というスローガンのもと、無料バス、家賃凍結、無償保育、公営グローサリーストアなど、革新的な政策を次々と打ち出しています。彼の目指すのは、格差の縮小と生活コストの削減です。

しかし、その理念の美しさとは裏腹に、「実際には格差を拡大させるのではないか」という声が広がっています。

1. 理想は明快、誰もがアクセスできる都市を

マムダニ氏の政策群の核心は「無料化」と「公営化」です。バス運賃の廃止、保育・教育の無償化、低価格の食料供給、家賃の凍結など、すべての施策が「生活インフラの基本を公共が担う」方向を向いています。

  • バスを無料化し、低所得者でも移動の自由を確保する
  • 無償保育で女性やシングルマザーの就労機会を拡大する
  • 市営グローサリーで「食のインフレ」に歯止めをかける
  • 家賃凍結で住宅不安を緩和する

いずれも、富裕層優位に傾いた都市構造を是正しようとする試みです。

豆知識:ニューヨークでは、2024年時点で平均家賃が月4,000ドルを超え、全米で最も高額な都市の一つでした。住民の約3人に1人が「家賃を払うために食費を削る」と回答しています。

「無料」はデメリットが必ずある、財政負担の現実

Business Insiderが試算したところ、これらの政策を同時に実現するには年間数十億ドル規模の財源が必要です。ニューヨーク・ポスト紙は「都市財政が破綻する可能性すらある」と指摘しています。

無料バスだけでも、運賃収入の約9億ドルが消える見込み。加えて利用者増加により運行コストや修繕費が膨らめば、財政赤字は拡大します。保育無償化や家賃補助が加われば、税金を引き上げる以外に道はなくなります。

つまり、格差を埋める政策が結果的に「中間層や若手世代への税負担」という新たな格差を生みかねないのです。

民間が逃げる格差の「逆流」

さらに深刻なのは、マムダニ政策が民間の投資意欲を冷やす点です。

家賃凍結の副作用

家賃を凍結すれば、オーナーや開発業者の収益は下がり、改修や新築の動機が弱まります。その結果、老朽物件が増え、住宅供給が減る。つまり「安い家を求めても見つからない」状態が生まれます。

公営ストアの逆効果

市営の食料品店が価格を引き下げれば、近隣の民間スーパーは競争力を失い撤退します。

結果、行政主導の一元化が進み、地域経済の多様性は損なわれます。これは共産主義的市場構造への逆戻りと批判されるゆえんです。

税率上昇による富裕層の流出

富裕層や企業が他州に移転すれば、税収基盤は一層脆弱になります。

所得再分配どころか、再分配する原資そのものが減少するという皮肉な構図が見えてきます。

擁護派の主張、「格差の是正はコストではなく投資」

一方で、マムダニ氏を支持する層は「短期的なコストではなく、長期的な社会的リターンを見るべき」と主張します。

無償保育は労働参加率を高め、交通無料化は経済活動を活性化させる。これらは将来的に税収を押し上げ、都市全体の生産性を高めるという見方です。

補足:フィンランドやエストニアでは公共交通を無料化した都市があり、一定の経済活性効果が報告されています。ただし、両国は人口密度や所得格差が小さく、ニューヨークのような超大都市とは条件が異なります。

「格差の再分配」から「格差の固定化」へ?

マムダニ氏の政策は、意図せずして「依存の構造」を強化する恐れもあります。無料や補助が当たり前になると、行政の効率よりも制度維持が目的化しやすくなります。結果、上位層は逃げ、下位層は依存する格差が動かない社会が生まれるのです。

制度疲労の兆候

公共サービスは一度無料にすると、再び有料化することが政治的に困難になります。財政赤字が蓄積しても、制度を縮小する勇気を持つ政治家は少ないのが現実です。

理念は美しい、だが「持続可能性」が鍵

マムダニ氏の構想は、格差是正という正義の名のもとに、人々の共感を呼び起こしました。しかし、「平等」には常にコストが伴うという現実が見えただけでした。

格差をなくすための政策が、結果的に税負担・供給制限・質の劣化という形で新たな格差を生み出す。それは、理想が現実を追い詰める典型的な構図です。
NYの生活コストが高すぎるのは、経済的に理由があるからで、経済的にはなんら問題のないところでバランスしているはずだからです。

マムダニ氏の政策は、人々に希望を与えるビジョンを掲げつつも、財政・制度・市場の持続可能性という現実的課題を突きつけています。格差を減らせたかどうか、注目していきます。

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