2010年頃、リチウム電池の膨張はパソコンで起きたことがあります。そのときはあまり大したことはないと思っており、膨張したまま使っておりました。最近では、発火で大火事になるなどの動画をみてリチウム電池の粗悪品は気をつけないといけないと思っています。
このリチウム電池製造で、ようやく本気の安全対策が動き始めました。より安全な電池と高度な電子回路を使う以上、製造コストは確実に上がります。業界の試算では全体コストが約20〜30%増える見込みで、安物充電器の世界は終わりに近づきつつあります。
新基準で何が変わるのか
「移动电源安全技术规范」とは何か
今回の新基準の正式名称は「移动电源安全技术规范」で、中国工業情報化部が主導する強制性国家標準として策定されています。
位置付けとしては、現在のモバイルバッテリー関連の3C認証技術基準を、より厳しい内容で置き換えるものです。過去のようにメーカーが独自基準で好き放題作るのではなく、「セル」「回路基板」「外装表示」まで細かく統一ルールを定める方向です。
タイムラインについては、いくつかの報道で「2026年2月に正式発表、同年6月施行」という見込みが語られていますが、標準を担当する中国電子技術標準化研究院は「日付はまだ確定していない」「強制標準には通常6〜12か月の移行期間を設ける」と説明しており、最終決定ではありません。
したがって現時点で言えるのは、「新基準はほぼ確実に出るが、正確な発表日と施行日はわからない」「施行まで一定の移行期間は確実にある」というところまでです。
3C認証は本当に「全面失効」するのか
一部メディアは「3C認証が全面失効」「3Cマークの意味がなくなる」といった強い表現を使っていますが、標準化機関はこの表現を明確に否定しています。
公式説明を整理すると次の通りです。
- 新基準が施行されると、今後新たに3C認証を取る製品は、新基準を満たす必要がある
- すでに3C認証を取得して市場に出ている製品は、そのまま使用してよい
- 航空機への持ち込み規則なども、既存の3Cマーク付き製品については有効なまま
つまり、「3C認証という制度が消える」のではなく、「3C認証の中身となる技術基準が入れ替わる」という理解が正確です。今のところ「3C全面無効」という言及は誤りであり、今後も3Cマークは安全な製品であることを示す最低条件として使われ続けると見てよいです。
どこまで安全性が上がるのか 技術面の変化
セルの安全試験が一段階上のレベルへ
新基準で最も重要なのは、モバイルバッテリー内部のリチウムイオンセルに対する安全試験の強化です。報道と標準案の説明から、主なポイントは次の通りです。
- 熱濫用試験の条件強化 従来は約130度で30分だった条件が、約135度で60分に強化される
- 過充電試験の電圧引き上げ 規定電圧の約1.4倍まで過充電しても熱暴走しないかを確認する試験が盛り込まれる
- 針刺し試験の厳格化 セルに物理的に針を刺しても、発火や爆発、継続的な発煙が起きないことが求められる
数値だけを見ると地味ですが、「温度も時間も高いストレスをかけても暴走しないセル」が標準になるということです。安価なセルほどこの試験を通過しにくくなるため、結果として粗悪な電池は市場から排除されやすくなります。
厳密にどれだけ事故率が下がるかは、今後の実測データが出ていない以上わからないため、ここでは「安全マージンが明確に広がる」としか言えません。この点は電池工学の専門領域であり、定量的なリスク低減効果を語るには専門家に確認が必要です。
ラベル表示で「寿命」と「製造元」が見える化
新基準案では、モバイルバッテリー外装のラベル表示についても大きくルール変更が入ります。
これまでの一般的な中華モバイルバッテリーは、ブランド名と容量くらいしか表示していないものも多く、「中身はどこで作っているのか」「いつまで安全に使えるのか」はブラックボックスでした。
新基準では次の表示が義務化される方向です。
第一に、「推奨安全使用年限」を外装に明記することです。例えば「推奨安全使用年限は3年です」といった形で、ユーザーに寿命の目安を直接示すことが求められます。第二に、ブランド名だけでなく、実際に製造している代工工場(OEMやODM)の正式名称を表示することが求められます。
これにより、事故が起きた際のトレーサビリティが飛躍的に向上します。どの工場のどのラインが問題を起こしたのかを追跡しやすくなり、問題メーカーを市場から排除する圧力になります。ユーザー側も、「何年使い続けているか」「どの工場の製品か」を意識しやすくなり、感覚ではなく情報に基づいて買い替え判断がしやすくなります。
スマート監視機能で「健康状態」をリアルタイム把握
もう一つの大きな変更点は、モバイルバッテリー自体を半分スマートデバイス化してしまう規定です。
新基準案では、回路基板に液晶画面か、あるいはスマホアプリと連携できる通信モジュールの搭載が求められています。表示すべき情報として、残量だけではなく、電池の健康度(いわゆる State of Health)、充放電回数、電圧や温度などの安全関連パラメータが挙げられています。
さらに、一部報道によると、これらのデータを監視し、記録し、必要に応じて読み出せる機能も求められており、単なる「ランプ4つで残量を表示する箱」から、「状態監視のできる小さな電力機器」へと性格が変わります。
この結果、基板にはマイコン、メモリ、場合によっては無線通信モジュールが標準搭載されることになり、これまでのような極端にシンプルな保護回路だけの安価基板は、少なくとも中国国内市場からは姿を消していく可能性が高いと考えられます。
豆知識: リチウムイオン電池事故の典型パターン リチウムイオン電池の発火や膨張は、多くの場合、内部短絡や過充電、外部からの強い加熱がきっかけで起こります。こうしたトラブルは、セル品質が低い場合や、保護回路が貧弱な場合に発生しやすくなります。新基準がセル品質と監視機能を同時に引き上げようとしているのは、この典型パターンをまとめて潰す狙いがあると考えられます。
価格は上がる それでも安心と引き換えに許容できるか
コストは20〜30%増が業界の感覚
新基準対応のコストについては、標準検討会に参加した企業のコメントがいくつか報じられています。代表的なものでは、「新基準が施行されると、業界全体のコストは約20〜30%増加する」という見積もりが示されています。
増加要因はおおまかに二つです。
第一に、より高品質で厳しい試験を通過できるセルを使う必要があるため、セル単価が上昇します。第二に、基板に液晶や通信モジュールを追加するハードウェアアップグレードが必要となり、その分の部品費用と設計費用が上乗せされます。
一方で、中国電子技術標準化研究院など標準側の関係者は、「コストは上がるが、量産効果や技術進歩によって最終的な消費者価格への影響は限定的になり得る」と慎重なコメントを出しています。
結論として、実際に店頭価格が何%上がるかは、現時点ではわからないため「保留」です。ただ、少なくとも業界内では「安物はこのままの価格では生き残れない」という認識が共有されていると見てよいでしょう。
何が「安心」に変わるのか 実務的なメリット
価格上昇を受け入れるべきかどうかは、「その分何が得られるのか」で判断するしかありません。新基準による安心材料を整理すると、次のようなポイントがあります。
第一に、セル自体の安全性が底上げされます。熱暴走試験や針刺し試験を強化したことで、物理的なダメージや過酷な状況下でも発火しにくいセルが標準となります。これは、バイクの荷台や車内に放置してしまうような使い方をするユーザーにとって、非常に大きなリスク低減につながります。
第二に、ラベル表示と製造元の開示により、事故が発生したときの責任の所在が明確になります。これはメーカーにとってはプレッシャーですが、ユーザーにとっては「よくわからない工場の製品をつかまされる」リスクが減ることを意味します。
第三に、スマート監視機能により、セルが劣化して危険な状態に近づいているかどうかを、ある程度事前に察知できるようになります。使用回数や残り寿命の目安が見えることで、「いつまでも延々と古いバッテリーを使い続ける」という危険な習慣を抑制しやすくなります。
価格が仮に2割程度上がるとしても、発火事故や車両火災のリスクが有意に下がるなら、保険料として受け入れる価値はあります。少なくとも、数百円の差額を惜しんで安全性の低い製品を選び続ける合理性は、かなり薄れていくはずです。
規制強化は本当に正しいのか
規制を評価する立場
規制強化を評価する側の主張は、主に次のような点に集約されます。
第一に、過去に中国製モバイルバッテリーの発火や爆発事故が多数起きており、小さなガジェットであっても潜在的な危険性は高いという事実があります。工業情報化部やメディアも、新基準について「事故リスクを源流から抑えることが目的」と明言しており、安全対策としては筋が通っています。
第二に、低品質な製品を作るノーブランドや零細メーカーが市場から退出し、産業集中が進むことで、全体として品質水準が上がるという期待があります。実際、業界では新基準施行後に「既存産能の近7割が満たせず退出する可能性」が語られており、粗悪品の淘汰を目的とした政策であることはほぼ間違いありません。
第三に、スマート監視機能によって、事故の予兆を検知しやすくなり、ユーザー教育と組み合わせれば、実際の事故件数を減らせる可能性があります。これは単なるルールではなく、実装された技術によるリスク管理であり、規制として合理性が高いという評価ができます。
規制に懐疑的な立場
一方で、今回の新基準には懐疑的な意見も成り立ちます。こちらも同程度の分量で整理します。
第一に、スマート機能の義務化が本当に安全のために必要なレベルまで合理的かどうかという疑問があります。推測ですが、セルの品質向上と保護回路の強化だけでも多くの事故を防げる可能性があり、そこに通信モジュールや液晶画面まで義務化するのは、過剰仕様であるという見方もあり得ます。
第二に、基板にマイコンや通信モジュールを載せることは、コスト増だけでなく故障点の増加にもつながります。推測ですが、将来、画面や通信モジュールだけが壊れた製品が大量に廃棄されるようになれば、電子ゴミの増加という別の問題を生み出すリスクがあります。これは今のところわからない部分であり、実際の故障統計を待つ必要があります。
第三に、価格上昇により、最も価格に敏感なユーザーが、むしろ規制の緩い国や品質不明の輸入品に流れる可能性があります。推測ですが、中国国内市場が高品質化していく一方で、日本を含む海外市場には、現状のルールに縛られない低品質品が流入し続ける構図も考えられます。この場合、中国国内の安全性は上がっても、グローバル全体の事故リスクはあまり下がらないかもしれません。
このように、規制強化には明確なメリットがありますが、副作用や予期しない影響もあり得るため、「規制さえ強くすれば全て解決」と考えるのは単純すぎると言わざるを得ません。
リチウム電池ユーザーにとっての現実的な影響
短期的には、中国国内向けに販売されるモバイルバッテリーが新基準に対応することで、グローバルの大手ブランド製品の安全性が底上げされると考えられます。大手メーカーは、中国市場だけ別仕様にするより、世界共通設計に寄せる方が合理的なためです。これは推測ですが、数年スパンで見れば、日本で売られる有名ブランド品も、新基準レベルに近い設計へ徐々に移行していく可能性が高いでしょう。
現時点では、中国の3Cと新基準は中国国内市場を直接の対象としており、日本へ輸出される格安モバイルバッテリーがすぐに一掃されるわけではありません。したがって、「中国で新基準ができたから、日本の通販サイトから粗悪品が消える」と期待するのは誤りです。
ユーザー自身が取れる対策は明確です。数百円をケチって聞いたこともないブランドのバッテリーを買うのではなく、セルメーカーや完成品ブランドがはっきりしている製品、できれば安全試験や規格への言及がある製品を選ぶことです。新基準が施行された後は、「推奨使用年限」や製造元の表示が増えていくはずなので、それを見て「安いだけの謎製品」を避ける行動が重要になります。
これからモバイルバッテリーを選ぶときのポイント
最後に、具体的な購入時のチェックポイントを整理します。
「価格だけで選ばない」ことです。新基準対応品と旧来の粗悪品の価格差は、今後徐々に開いていきます。長時間の外出や車中泊、防災用として使うなら、数百円の差を惜しまず、セル品質と安全試験に投資すべきです。
また、表示情報をよく見ることです。推奨安全使用年限や製造元の工場名が明記されている製品は、規制対応を意識している可能性が高く、責任の所在も明確です。一方で、ブランド名しか書いていないような製品は、今後ますます敬遠すべき存在になります。
スマート機能の使い方を理解することが必要です。今後増えていくであろう「寿命表示つき」や「健康状態モニタ付き」のバッテリーは、表示を見ながら早めの買い替えや使用方法の見直しをする前提で使わなければ意味がありません。表示された警告を無視すれば、安全性のメリットは大きく削がれます。
まとめると、「高価になるが、安全になるならよい」という姿勢は合理的です。ただし、単に高いものを買えば安心というわけではなく、規格と表示を読み、どのような安全機能が搭載されているのかを理解した上で選ぶ必要があります。

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