「真・日本の歴史」を読む 日本史の地殻変動を体験する一冊だった

【本】

近年、日本史の通説が揺れ続けています。縄文・弥生の境界線は再定義され、古墳の権力構造も書き換えが進み、律令国家の成立過程さえ今なお再検討されている。こうした潮流の中で刊行されたのが本書『真・日本の歴史』(2024年7月発売)です。ネット上では「教科書が書き換わるレベルの再整理」「資料密度が異様に高い」といった評価が見られ、その一方で「常識を壊しすぎでは」という慎重派の声もあるようです。

実際に読んでみると、本書はこれまでの歴史の上に別の答えを積み上げたというよりも、そもそも問い方を変えていることに気づきます。これこそが本書が他の歴史解説書と決定的に違うポイントでした。

高校生くらいのときに同じ著者の逆説の日本史がブックオフで100円で売られていて、よく読んでいました。教科書と違うことが書かれていたりするので、参考程度でしたが。

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本書が提示するのは「出来事の羅列」ではなく「日本がどういう論理で動いてきたか」

教科書的な日本史は、時代区分ごとに権力者・制度・戦争を並べていくスタイルです。しかし本書はその並べ方を意図的に崩し、日本社会の動く仕組みそのものを中心に据えます。特に印象に残ったのは次の3点でした。

  • 日本の国家形成は、外圧ではなく内側の経済構造の変化が主因だったという視点
  • 天皇制は「権力の中心」ではなく「調停システム」として発達したという整理
  • 武士の台頭は軍事力よりも物流の掌握が決定打だったという指摘

これらは、従来の流れとは違うが、最新の研究動向を踏まえるとむしろ合理的です。歴史を「変化の力学」として説明するため、個々の事件が突然つながり、断片だった日本史が大きな一枚絵になる体験がありました。

読みながら私が最も驚いた箇所

個人的に最も意識を揺さぶられたのは、室町〜戦国期の解釈でした。多くの本では「弱体化した幕府・群雄割拠」という説明で済まされますが、本書はここを物流と自治の歴史として描き直します。

戦国大名は武力で領土を拡げた人物ではなく、「市場・関所・道路」を掌握した者が勝者になったという視点に変わるのです。この読み替えによって、織田信長の政策(関所撤廃・楽市楽座)が経済史の文脈で理解でき、彼が単なる破壊者でも天才でもなく論理的なプレイヤーに見えてくる。

本書は、こうした歴史の焦点の当て方を変える部分が随所にあり、読みながら何度も地図の見え方が変わっていきました。

本書の価値は「知識量」ではなく読み替えの設計力にある

多くの歴史本は知識量の勝負になりがちです。しかし本書は、知識よりも歴史をどう読むかという視座の転換を促します。これは読んだ人のリテラシーを上げる形の本であり、事実を増やすだけの教科書型とは本質的に違います。

読後は、日本史という大河に対して「表面の出来事を見るのではなく、下流を押し動かしている水脈そのものを見るべきだ」という感覚が強く残りました。この本が指しているのはまさにそこです。

歴史をもう一度読み直すための道具として最適な一冊

『真・日本の歴史』は、単なる新説の寄せ集めではなく、日本の歩みを構造から読み直すための設計図のような本でした。教科書的な時系列に疑問を持っていた人、断片的な知識がつながらないと感じていた人には、強力な突破口になるでしょう。

歴史の答えそのものよりも「問いの立て方」を変えてくれる本。そういう意味で、本書は日本史を再学習したい大人にとって、きわめて価値の高い一冊だと感じました。

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