ドルの価値が下落しているという話題は、金価格の上昇と一緒に語られます。ドルの強弱を測る指標と、金銀の値動きが実務上つながっているためです。
いまのドル安を他の資産との比較で示したうえで、ドルと金と銀のレシオから見て、まだ単純に金銀が上がるのか検討します。
ドルの価値とは何を指すのか
ドルの価値は、次の2つです。
- 主要通貨に対するドルの強さであるドル指数DXY
- 貿易相手国の比重を入れた広義の貿易加重ドル指数であるBroad Dollar Index
DXYは市場の体感に近く、ニュースで引用されやすい指標です。一方、貿易加重指数は実需に近い尺度で、米連邦準備制度理事会やFREDの枠組みでも用いられます。
他の資産と比べてもドル安が見えるか
通貨としてのドルは下がっている
貿易加重のBroad Dollar Indexは、直近の水準が約120.6で、1年前の約127.8から低下しています。これはドルが貿易相手国通貨の集合に対して弱くなったことを示します。
また、DXYについても、2025年にかけて大きく下落したという整理が複数の報道で共有されています。Reutersは2025年が大きな年次下落だった点を伝えています。
資産として見てもドルは強かったとは言いにくい
ここからが重要です。ドルが弱くなる局面では、同じドル建てで価格が表示される資産が目立って上がりやすくなります。2026年1月の局面ではまさにそれが起きています。たとえば、過去1年の騰落で見ると、金ETFのGLDは大幅高で、銀ETFのSLVはさらに大幅高です。株式ETFのSPYも上昇しています。一方でビットコインは直近1年ではマイナス圏にあります。
| 比較対象 | 直近1年の見え方 | 意味合い |
|---|---|---|
| 貿易加重ドル指数 | 低下 | 通貨としてドル安が進んだことを示す |
| 金 ETF GLD | 大幅上昇 | ドル安と安全資産需要の両方を吸収しやすい |
| 銀 ETF SLV | さらに大幅上昇 | 金より値動きが荒く、上げも下げも大きくなりやすい |
| 米株 ETF SPY | 上昇 | ドル安でも株が上がる局面はある |
| ビットコイン | 下落 | 安全資産としてではなくリスク資産として振れやすい |
豆知識: 金銀が強いときに必ずしもビットコインが強いとは限りません。2026年1月は金銀が最高値圏でも、ビットコインはリスク資産として売られやすいという解釈が報じられています。
金はドル建てで価格が表示されるため、同じ金でもドルが弱いほどドル建て価格は上がりやすくなります。
ドル安の背景が財政不安や地政学リスク、金融政策不透明感のときは、安全資産需要として金が買われやすくなります。
ドルと金と銀のレシオで今を数値化する
2026年1月で報じられたスポット価格を使って、レシオを機械的に出します。スポット金は約4,957ドル、スポット銀は約98.9ドルと報じられています。
金銀レシオは約50まで低下している
金銀レシオは金価格を銀価格で割った数です。上の水準だと、金銀レシオはおおむね50前後になります。これは銀が金に対してかなり強かった状態を意味します。
一方で、金銀レシオは1970年代以降の平均が約65とされるという整理もあります。平均が65で、いまが50なら、銀が割安に先行しています。
そして、金銀が上がったというよりは、ドル安になっただけです。ここから先のリターンは、上昇余地というより、上昇したあとにどれだけ耐えられるかの問題になります。銀の相対的な上昇余地が平均回帰の観点では小さくなっているということです。
それでも上がるシナリオと崩れるシナリオ
上がるシナリオ
上がるシナリオは、ドル安が継続し、実質金利が低下方向で、地政学や政策不確実性が解消しない場合です。
加えて銀は工業用途の需要が大きく、景気や設備投資の波が需要側に乗ると上げが加速します。2026年序盤の銀高には、投資資金の流入や需給要因が絡むという解説も出ています。
崩れるシナリオ
崩れるシナリオは、ドル安が止まるか反転し、金利やリスク許容度の変化でポジション解消が連鎖する場合です。金は比較的粘っても、銀は高ベータで下げが深くなりやすい点が現実的なリスクです。
金銀レシオがすでに低い局面では、銀だけが一段上がるより、銀が大きく振ってレシオが戻る動きのほうが起きやすくなります。
ドルの価値下落と金銀
ドルの価値が下落していることは、通貨指数でも確認でき、資産比較でも金銀の突出として現れています。だからドル安と金高がセットで語られます。ただし、金銀レシオが約50まで低下している現状は、銀がすでに金を大きく上回って走った状態です。
したがって、単純にドル安だから金銀はまだ上がると言い切るのは危険で、上がるにしても値動きの荒さと平均回帰のリスクを抱えた局面です。


コメント