借金1342兆円でも日本は「破綻しない」のか?財政の実態と株価への影響

暇つぶし

「国の借金が1300兆円を超えた」というニュースを耳にするたびに、漠然とした不安を感じる人は少なくないでしょう。

今回は日本の財政を他の先進国と比較しながら通信簿形式で採点し、さらに株式市場への影響まで踏み込んで解説します。

日本の財政通信簿を採点する

借金の実態、1300兆円超えは今や当たり前

財務省の発表によると、国債と借入金などを合わせた「国の借金」は2024年度末時点で1323兆7155億円に達しました。これは9年連続で過去最高を更新した数字です。さらに2026年度末には普通国債の残高だけで1145兆円に達する見込みとなっています。

日本の名目GDPはおよそ560兆円であるため、GDP比で見ると政府債務比率は約216%という水準になります。これはOECD加盟国の中でもトップクラスの高さで、他の主要先進国と比べて際立った数字といえます。同じく財政に問題を抱えるイタリアでもGDP比140%程度であることを考えると、日本の数字がいかに突出しているかがわかります。

ではなぜ今まで問題が起きなかったのでしょうか。その理由は、長年にわたって金利が非常に低く抑えられてきたからです。借金があっても金利が低ければ利払い費は少なくて済みます。しかし、その状況は変わりつつあります。

金利上昇が始まった、利払い費の膨張が止まらない

日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、金融政策の正常化を進めています。その結果、長期金利は上昇傾向が続いており、2025年1月には約26年10か月ぶりに長期金利が2.1%台を付ける場面もありました。

金利上昇は財政に直撃します。財務省の試算によれば、金利が1%上昇すると3年後の国債費は3.7兆円増加するといいます。2026年度予算では、国債の元本返済と利払いを合わせた「国債費」がすでに31兆2758億円と過去最大を更新しました。利払い費単体でも13兆371億円とかつてない水準に達しています。

さらに財務省は、2028年度にかけて金利が2.5%まで上昇した場合、利払い費は約16兆1000億円まで増え、その後横ばいが続いても2034年度には約25兆6000億円まで膨らむと試算しています。現在の一般会計の総支出が約107兆円であることを考えると、これがいかに大きな圧迫になるか実感できるはずです。

豆知識・金利1%上昇で何が起きるか:借金が1000兆円あると仮定すると、金利が1%上がるだけで単純計算で年間10兆円の追加負担が生じることになります。日本の国防費(2024年度は約7.9兆円)を超える金額が、何も新しいものを作らずにただ利息の支払いに消えていくイメージです。財政の自由度がいかに失われているかがよくわかります。

「通信簿」3科目の採点結果

日本の財政を3つの視点で採点してみましょう。

採点科目 評価 理由
財務体質 不可 借金が増え続け、金利上昇で利払い費が急膨張しています。成長投資に回せる予算の余地が年々縮小しているのが現状です。
信用力 国債の9割以上を国内で消化しており、対外純資産も533兆円(2024年末)と巨額です。即座に破綻するリスクは先進国の中では低い方だといえます。
実質価値 不可 円安が続くことで、ドル建てで見た「日本の価値」は目減りしています。借金の実質的な重さは軽くなりましたが、国民の富も同時に目減りしてしまいました。

結論として、日本財政の現状は「慢性的な成人病」状態と言えます。すぐに倒れる(破綻する)ことはありませんが、放置すれば確実に悪化していく状態です。「国は破綻しないが、通貨(円)の価値を犠牲にして借金を維持している」というのが最も正確な表現でしょう。

対外純資産という「命綱」の本当の意味

世界2位の対外純資産国、それでも安心できない理由

「日本は世界有数の対外純資産国だから大丈夫」という意見を聞くことがあります。確かに財務省の発表によると、2024年末時点の日本の対外純資産は533兆500億円と、6年連続で過去最高を更新しました。しかしここで注意が必要な情報があります。

2024年末時点で、日本はドイツ(約569兆円)に抜かれ、34年ぶりに世界首位の座を失いました。順位自体よりも重要なのは「なぜ抜かれたか」という点です。日本の対外純資産が増えている要因の大部分は、円安によって外貨建て資産の円換算額が膨らんだことに過ぎません。実際の投資活動(取引フロー)は減少傾向にあるのです。

また、対外純資産の内訳も重要です。かつては証券投資(株や債券)が中心でしたが、現在は海外への直接投資(企業買収など)が全体の56%を占めるようになっています。直接投資は株や債券と違い、危機時に即座に売って円に換えることが困難です。「資産はあるが、いざというときに使えない」という構造的な問題があります。

国内消化という「内輪の借金」の強みと限界

日本が財政危機に陥りにくいもう一つの理由は、国債の9割以上を日本国内の金融機関や個人が保有しているという点です。ギリシャのように外国の投資家が国債を大量に保有していると、信頼が揺らいだ瞬間に一斉に売り浴びせられて金利が急騰し、財政が破綻に向かいます。日本はそのリスクが構造的に低いといえます。

しかし、これは永遠に続く保証はありません。日銀が大量に国債を保有しているほか、家計の金融資産も限りがあるからです。海外投資家の国債保有比率は近年じわじわと上昇しており、国内消化の「命綱」にも変化の兆しがあります。

株式市場への影響、「悪い株高」という奇妙な現象

なぜ財政が悪化しているのに株価が上がるのか

ここが多くの人が「なるほど」と感じる部分でしょう。財政が悪化し、円安が進んでいるにもかかわらず、日経平均株価が3万円、4万円と上昇していくという現象はどう説明できるのでしょうか。

答えは「インフレヘッジとしての株高」という現象にあります。国の借金が膨らみ、日銀が金利を十分に上げられない環境では、「現金(円)の価値」が下がっていきます。価値が下がり続けるお金をそのまま持ち続けるのは損なので、投資家は株式や不動産など「実物資産」に資金を移します。その結果、株価の数字は上がっていくのです。

これはトルコやアルゼンチンといった新興国でよく見られる現象です。通貨が弱くなると、現地通貨建ての株価は大きく上昇します。しかしドルで計算し直すと、実は全然増えていない、あるいは減っている、ということが起きます。日本でも同様のことが、より緩やかな形で起きている可能性があります。

株高で資産が増えたように見えても、スーパーの食料品やガソリン代も同じように上がっているとすれば、実際の生活は楽になりません。数字上の株高と実感としての豊かさは、必ずしも一致しないのです。

業種(セクター)別の明暗、明確な優勝劣敗の時代

金利上昇と円安という環境では、すべての業種が同じように影響を受けるわけではありません。勝ち組と負け組がはっきりと分かれます。

セクター 見通し 理由
銀行・金融 チャンス 金利上昇で貸出金利と預金金利の差(利ザヤ)が拡大し、本業の収益が増えます。ただし保有国債の価格下落リスクも抱える諸刃の剣です。
輸出関連(自動車・機械) やや有利 円安が続く限り、海外での売上を円に換算したときに為替差益が生まれます。外貨を稼げる企業としての評価が高まります。
内需・小売 逆風 増税・社会保険料の引き上げ・物価高で消費者の財布の紐が固くなり、売上が伸び悩むでしょう。
成長株・新興企業 逆風 金利上昇で借入コストが増え、将来の利益の現在価値が下がるため、株価が評価されにくくなります。

外国人投資家の視点、「バーゲンセール」か「売り逃げ」か

外国人投資家はドルを基準にして物事を見ます。円安が大幅に進んでいる現状では、ドルを持つ彼らからすれば日本の優良企業の株式が「割安に放置されている」状態に映ります。実際、ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株に大規模な投資を行ったことは記憶に新しいですね。

一方で、「日本政府の財政が本当に持続不可能だ」という判断が市場に広まれば、彼らは一斉に資金を引き上げる可能性もあります。外国人投資家の日本市場に対する売買動向は、日経平均株価に対して非常に大きな影響力を持っています。楽観と悲観、どちらに振れるかで短期的な株価の方向性は大きく変わるでしょう。

豆知識・「悪いインフレと良いインフレ」の違い:インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。企業の業績が上がり、賃金も上がり、消費も活発になってモノの値段が上がるのが「良いインフレ」です。一方、財政の悪化や通貨の信任低下によってお金の価値が下がり、コストが上がっても賃金が追いつかない形で物価が上がるのが「悪いインフレ」です。日本が現在どちらに向かっているかを見極めることが、投資判断においても重要な視点になります。

では個人はどう向き合えばいいのか

「現金(円)で持ち続けること」のリスクを直視する

「借金1300兆円超」という数字を見て「もう日本は終わりだ、株は全部売ろう」と考えるのは早計です。しかし同時に、何も考えずに日本円の現金だけで資産を持ち続けることも、決して安全な選択肢とは言えない状況になっています。

インフレが続けば、銀行の預金口座に100万円を入れておいても、5年後10年後にその100万円で買えるものの量は今より少なくなっている可能性があります。これはお金の数字が減っていなくても、実質的に目減りしているということです。

「分散」という考え方が改めて重要になっている

今の日本の状況を踏まえると、資産を「日本円の現金だけ」に集中させることのリスクは高まっています。株式、不動産、外貨建て資産など、複数の資産クラスに分けて持つ「分散投資」の考え方は、以前にも増して合理的な戦略と言えるでしょう。

ただし、急いで何かに飛びつく必要もありません。財政問題は「明日突然破綻する」類の話ではなく、10年、20年という時間軸で進む問題だからです。焦らず、少しずつ自分の資産の構造を見直していくことが大切です。

「国が破綻するかどうか」よりも「自分の資産の実質的な価値を守れるか」という視点で考えることが、個人にとっての本当のテーマだと言えるでしょう。ニュースの数字に振り回されるのではなく、その数字の意味を正しく理解することから始めたいものです。

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