金と銀の価格が下落中!その理由といつ上がるか

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2026年1月には金価格が国内で1グラム3万円を超え、銀も歴史的な高値を更新していました。それなのに今(2026年3月19日時点)は、かなり値を下げた水準で推移しています。

なぜこんなに急に下がったのか。そして、この下落はいつまで続くのか。金と銀の価格下落の原因を解説します。

金と銀の価格はどれくらい下がったのか

2026年1月末、金の国内店頭小売価格(税込)は一時1グラムあたり3万円を突破し、史上最高値を更新しました。国際価格(ドル建て)でも1トロイオンス=5,600ドル台まで急騰していました。

銀(シルバー)も同様です。2025年初めに1オンス=29ドル前後だった価格が、2026年1月には100ドルを超える水準まで駆け上がり、歴史的な高値を記録しました。

ところが、2026年3月19日現在の状況はどうかというと、金は国際価格で約4,850ドル前後、銀は約80ドル前後という水準まで下落し、いずれも1か月来の安値圏で推移しています。国内の金買取相場も3月11日時点で1グラムあたり28,953円(ブラリバ調べ)にまで下がっています。

つまり、金は高値から最大で約13〜20%もの下落を経験したことになります。これは、突然起きた複数の悪材料の重なりが原因です。

下落の原因その1:FRB次期議長の指名ショック

金と銀が最初に急落した直接のきっかけは、2026年1月30日のFRB(米連邦準備制度理事会)次期議長の指名でした。トランプ大統領が次期FRB議長として、ケビン・ウォーシュ元FRB理事を正式指名したのです。

ウォーシュ氏は、かつてFRB理事を務めていた時代にインフレ抑制を重視するタカ派として知られた人物です。タカ派とは、金利を上げることをためらわない姿勢のことを指します。

ここで重要なのが、金と金利の関係です。金は株や債券と違い、持っていても利息が生まれない資産です。そのため、金利が高くなると利息のつく債券を買ったほうが得では?という考えが広がり、金の魅力が相対的に下がります。ウォーシュ氏が利上げに積極的とみられたため、市場はこれ以上の利下げは期待できないと判断し、一斉に金と銀を売り始めたのです。

タカ派とハト派ってなに?:

中央銀行の金融政策スタンスを鳥にたとえた表現です。タカ派は物価上昇(インフレ)を抑えるために金利を上げることを重視する立場、ハト派は景気を支えるために金利を下げることを重視する立場を指します。タカ派が台頭すると金利が上がる方向に動きやすく、金や銀にとっては逆風になります。

下落の原因その2:先物市場での証拠金引き上げと強制売り

ウォーシュ氏の指名ショックに追い打ちをかけたのが、先物取引所による証拠金(担保金)の引き上げです。シカゴの先物市場(CME)は2026年1月だけで3回にわたって貴金属先物の証拠金を引き上げ、金先物は6%から8%へ、銀先物は11%から15%へと引き上げられました。

証拠金が上がったとはどういうことでしょうか。先物取引では、実際の取引金額のごく一部を担保として差し入れることで、大きな金額を動かせるレバレッジ取引ができます。証拠金が引き上げられると、同じポジションを維持するためにもっと多くの現金を用意しなければなりません。

それができないトレーダーは強制的にポジションを手放す(売る)ことになります。一人が売ると価格が下がり、次の人も強制売りに追い込まれる、という連鎖が一気に発生しました。こうした強制売りの連鎖が短時間での急落を生み出したのです。

下落の原因その3:中東情勢という皮肉な構図

2026年3月に入ると、新たな展開がありました。米国とイスラエルがイランに対して共同軍事作戦エピック・フューリー作戦を実施し、中東情勢が一気に緊迫化したのです。

通常、戦争や紛争は有事の金買いとして金価格を押し上げる材料です。実際、3月2〜3日には金価格が再び急騰し、国内価格も29,865円/gまで上昇しました。ところが、ここで皮肉な構図が生まれました。

戦争によってホルムズ海峡が脅かされ、原油価格が急騰したのです。原油が上がると物価が上がります(インフレ)。インフレが再燃すれば、FRBはやはり利下げはできないという判断になります。利下げ期待がしぼむと金の魅力が薄れ、今度は金が売られる。こうして中東で戦争が起きているのに金が下がるという、一見矛盾した現象が起きました。

3月16日、金は1か月以上ぶりに1オンス5,000ドルを割り込み、3月19日現在も約4,850ドル台で推移しています。銀も1か月来の安値圏となる約80ドル前後で推移しており、インフレ懸念と利下げ観測後退の重圧が続いています。

時期 金(ドル/オンス) 主な出来事
2026年1月上旬 5,600ドル台(最高値) 地政学リスク・利下げ期待で急騰
2026年1〜2月 4,500ドル台まで急落 ウォーシュ氏指名・証拠金引き上げ・強制売り
2026年3月2〜3日 5,418ドルまで反騰 米・イスラエルのイラン攻撃・有事の金買い
2026年3月16〜19日 4,850ドル前後 原油高→インフレ懸念→利下げ観測後退

銀はなぜ金よりも大きく動くのか

今回の値動きを見ると、銀は金よりもはるかに激しく上下しています。たとえば、銀は2026年2月5日に一時17%もの急落を記録しました。なぜ銀はこんなに動きやすいのでしょうか。

その理由は、銀が2つの顔を持っているからです。

ひとつは金と同じく安全資産・投資用貴金属という顔。もうひとつは、工業用金属という顔です。銀は太陽光パネル、半導体、EV(電気自動車)、電子部品など幅広い産業に使われており、価格の約半分は工業需要によって支えられています。

つまり銀は、世界情勢が不安定になると売られ、景気が悪化しても工業需要の減少が懸念されて売られるという、どちらに転んでも売られやすい場面があるという特徴を持っています。また、銀市場は金市場と比べて規模が小さいため、資金の出入りによる価格変動が大きくなりやすいという面もあります。

金と銀の比率ゴールド・シルバーレシオ:

金価格を銀価格で割った数値をゴールド・シルバーレシオと呼びます。この比率が高いほど、銀が金に対して割安であることを示します。2023年〜2025年3月頃の比率は80〜90倍で推移していましたが、2026年1月には47倍まで急低下し、その後再び60倍前後に戻るなど、大きく変動しました。野村證券の分析によると、中長期的にはこの比率が80〜90倍に戻る傾向があるため、銀が金より伸び悩みやすいと見込まれています。

原因が解消されたら、金と銀は上がるのか?

では、今の下落原因が解消されれば、金と銀は再び上昇するのでしょうか。それぞれの原因ごとに整理してみましょう。

FRBが利下げに転じれば

最も大きな反発要因となるのが、FRBの利下げ再開です。現在の市場では、少なくとも2026年9月まで利下げがないという見方が広がっています。もし経済指標の悪化やインフレの沈静化を受けてFRBが早期に利下げに踏み切った場合、金・銀にとって強力な買い材料になります。

ただし、現在の中東情勢を受けた原油高がインフレを長引かせるリスクがあり、この条件が満たされるかどうかは予断を許しません。

中東情勢が緊張緩和に向かえば

中東情勢の緩和は、本来は金にとって下落要因です(有事の金買いが薄れるため)。ただし今の状況では、中東問題が解決すれば原油高が収まり→インフレ懸念が後退し→利下げ期待が復活するという経路で、むしろ金の上昇につながる可能性があります。これが現在の相場の複雑さです。

各国中央銀行の金買いは継続中

実は、下落に関係なく金価格を下支えしている力強い要因があります。中国をはじめ、ポーランド、トルコ、インド、カザフスタンなど新興国の中央銀行が積極的に金を買い増ししています。中央銀行の購入は短期の値動きに左右されにくく、金価格の長期的な下値を支える安定需要として機能しています。

銀の工業需要は長期では強い

銀については、2026年に6,700万オンスの供給不足が予測されており、電子機器セクターからの需要も堅調に続いています。また、再生可能エネルギーやEVの普及拡大によって銀の工業用途は中長期的に拡大すると見られており、ファンダメンタルズ(本質的な需給)は悪くありません。

回復条件 現在の状況 金・銀への影響
FRBの利下げ転換 少なくとも9月まで据え置き予想 実現すれば強い上昇要因
中東情勢の緊張緩和 イラン戦争が継続・不透明 原油安→インフレ後退→利下げ期待で上昇へ
各国中銀の金購入継続 継続中(下値支え要因) 長期的な価格下支え
銀の工業需要拡大 供給不足の予測あり 中長期では強い支援材料

買い時なのか、それとも待ち時なのか

短期での売買を狙う場合は、現在の相場はインフレ指標・FRBの発言・中東情勢という3つの不確実性が重なっており、予測が非常に難しい状況です。今が底値と判断して飛び込んだとしても、さらに下落する可能性は十分あります。

一方、5〜10年単位の長期保有を前提にするならば、話は変わります。野村證券などの専門家分析でも長期的な上昇トレンドは継続しているという見方が多く、2026年1月の最高値からの調整は長期で見れば割安な仕込みの機会と捉えることもできます。一括で購入するよりも、ドルコスト平均法(毎月一定金額ずつ積み立てる方法)で少しずつ購入することで、タイミングによるリスクを抑えられます。

ドルコスト平均法とは?:

毎月決まった金額(たとえば1万円)を定期的に買い続ける投資手法です。価格が高いときは少ししか買えませんが、価格が低いときにはたくさん買えます。結果として、平均購入単価を下げる効果が期待でき、いつが底値かを当てなくてよいというメリットがあります。金・銀の積立投資でも広く活用されている方法です。

金・銀下落は複合要因、回復には時間がかかりそう

2026年3月19日現在の金・銀価格下落を整理すると、ウォーシュ指名ショック証拠金引き上げによる強制売り原油高によるインフレ懸念→利下げ観測後退という3つの悪材料が重なった結果であることがわかります。

原因が単純な一つの要因ではなく複合的であるため、短期での回復は簡単ではありません。特に利下げ期待の後退という根本的な問題が解決するまでは、上値が重い展開が続く可能性があります。

ただし長期的な視点では、各国中央銀行の金購入継続、銀の工業需要の拡大、世界的な資産防衛ニーズの高まりといった根強い支援材料が残っています。今回の下落を長期投資のチャンスと見るか、まだ動かないと見るか。その判断はあなた自身の投資目的と時間軸によって異なります。

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