2026年3月23日、日経平均株価が前営業日比1857円安の5万1515円で取引を終えました。下げ幅は一時2600円を超え、5万円の大台割れが視野に入る場面もありました。2月26日に記録した年初来高値5万9332円から実に13%以上の下落です。
特に今回のような地政学リスクによる急落では、、本来の価値は変わっていないのに株価だけが大きく下がっている銘柄が出てくるのです。
そもそも今回の急落はなぜ起きたのか
今回の日本株急落の最大の要因は、中東情勢の緊迫化です。2月末に米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始して以来、市場は地政学リスクに揺さぶられ続けてきました。
3月23日にはトランプ大統領がイランに対して48時間以内にホルムズ海峡を開放するよう要求しましたが、イラン側は徹底抗戦の構えを崩していません。この海峡は世界の石油輸送の約2割が通過する超重要航路であり、封鎖が続けば原油価格の高騰は避けられません。実際にニューヨーク原油先物は1バレル100ドル近辺で高止まりしています。
原油高はインフレ加速を招き、各国の金利上昇圧力につながります。金利が上がれば株式の魅力は相対的に低下するため、株が売られやすくなるのです。さらに日本はエネルギー自給率が極めて低い国ですから、原油高は企業の製造コストを直撃します。輸入物価の上昇による、いわゆる悪い円安も進行中で、ドル円は159円台半ばまで下落しました。
加えて、信用買い残が高水準に積み上がっていた影響で、追証(追加保証金)に伴う投げ売りが連鎖的に発生し、下げ幅を増幅させたとみられています。
ホルムズ海峡とは:
ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海峡で、最も狭い箇所は幅約33kmしかありません。中東産原油の大部分がこの海峡を通って世界に輸出されるため、ここが封鎖されると世界経済に甚大な影響が及びます。過去にもイラン・イラク戦争時にタンカーへの攻撃が繰り返された歴史があり、エネルギー安全保障上の最大のチョークポイントといわれています。
急落時にディフェンシブ銘柄が強い理由
ディフェンシブ銘柄とは、景気が悪くなっても業績が大きく落ち込みにくい銘柄のことです。食品、医薬品、通信、電力・ガスなど、私たちの日常生活に欠かせないサービスを提供する企業がこれに該当します。
景気が悪くなったからといって、スマホの契約を解約したり、たばこをやめたりする人は多くありません。こうした景気に左右されにくい安定収益を持つ企業は、株式市場全体が大きく下がるときにも比較的底堅い値動きをする傾向があります。
さらに高配当銘柄には、株価が下がるほど配当利回りが上昇するという特徴があります。たとえば、年間100円の配当を出す銘柄の株価が2000円から1600円に下がれば、配当利回りは5%から6.25%へと跳ね上がります。するとこの利回りなら買いたいという投資家が増え、株価の下支えとなるのです。
マネックス証券のレポートによれば、過去30年間で3月前半に大きく下落したケース(2009年、2011年、2020年、2022年など)は、いずれもその後の株価回復局面で絶好の買い場となっていたとのこと。今回も歴史的に見れば同様のパターンになる可能性は十分にあります。
銘柄選定の基準
今回の3銘柄は以下の基準で選びました。
第一に、配当利回りが3%以上であること。東証プライムの平均配当利回りは約2%台前半ですので、それを大きく上回る水準を条件としました。
第二に、連続増配の実績があること。増配を続けている企業は、業績が安定しており、経営陣が株主還元に積極的だという証拠です。一時的に利回りが高くなっている銘柄とは本質的に異なります。
第三に、景気変動に左右されにくいビジネスモデルであること。今回のような地政学リスクや景気後退局面でも、本業の収益が大きく揺らがない企業を選んでいます。
第四に、NISAで買いやすいこと。初心者が少額から始められるよう、1単元(100株)の投資金額が比較的手頃な銘柄を重視しました。
注目銘柄1: NTT(9432) 15期連続増配の通信インフラの王者
なぜNTTなのか
NTTは日本の通信インフラを支える圧倒的な存在です。携帯電話のドコモ、光回線のフレッツ光など、私たちの生活に深く根付いたサービスを展開しています。景気が良かろうと悪かろうと、通信サービスの解約が急増することはまずありません。まさにディフェンシブの代表格です。
2025年度第3四半期決算では、営業収益10兆4210億円(前年同期比3.7%増)、営業利益1兆4571億円(同4.1%増)と増収増益を達成しています。グローバル・ソリューション事業が特に好調で、セグメント利益が62.8%も伸びました。
配当の魅力
NTTは15期連続増配を実現しており、2025年度の年間配当は1株あたり5.3円(前年度比+0.1円)を予定しています。2003年度と比べると、配当額は実に10倍以上に拡大しました。予想配当利回りは約3.3%で、配当性向は約40%と無理のない水準です。つまり、利益のうち4割を配当に回しているだけなので、増配余力もまだ残っています。
初心者に優しいポイント
NTTの株価は150円台(2026年3月時点)と非常に低い水準にあります。100株でも約1万5000円程度から投資できるため、NISAの成長投資枠でも気軽に始められます。これは過去の株式分割のおかげで、もともと数千円だった株が分割されて買いやすくなったものです。
また、NTTは次世代通信基盤IOWN(アイオン)の研究開発にも注力しており、将来の成長ストーリーも持ち合わせています。守りと攻めの両面を備えた銘柄といえるでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 証券コード | 9432 |
| 株価(3月19日時点) | 約158円 |
| 予想配当利回り | 約3.3% |
| 連続増配 | 15期 |
| 配当性向 | 約40% |
| PER | 約13.5倍 |
| 100株の投資額目安 | 約1万5800円 |
注目銘柄2: KDDI(9433) 24期連続増配のモンスター増配株
なぜKDDIなのか
KDDIはau、UQ mobile、povoの3ブランドを展開する大手通信キャリアです。約6780万の回線を抱え、通信事業という堅牢な収益基盤を持っています。さらに近年は通信だけにとどまらず、金融(auじぶん銀行、auカブコム証券)や決済(au PAY)、保険、エネルギーなど、生活インフラ全般にサービスを広げています。
2026年3月期の中間決算では売上高2.96兆円(前年同期比3.8%増)、営業利益5771億円(同0.7%増)と過去最高益を更新しました。通信料金引き下げの逆風を受けてもなお増益を続ける底力は、投資家からの評価も高いです。
配当の魅力
KDDIの最大の武器は、何といっても24期連続増配という驚異的な実績です。2002年度から一度も減配することなく配当を増やし続けており、この間に1株あたりの配当額は約1.5円から80円へと、53倍以上に膨れ上がっています。
配当性向は約43%と健全な水準を維持しており、中期経営戦略では連結配当性向40%超を掲げています。利益が伸びれば配当も自然と増える構造になっているわけです。現在の予想配当利回りは約3.0%で、株価下落局面ではさらに上昇します。
初心者に優しいポイント
KDDIは2025年4月に株式を1株から2株に分割しており、以前より買いやすくなりました。100株で約27万円程度の投資額です。また、保有株数と継続保有期間に応じてKDDI関連サービスの特典がもらえる株主優待制度も実施しています。配当と優待の二重のリターンが得られるのは、初心者にとって嬉しいポイントです。
連続増配と高配当の違い:
配当利回りが高い銘柄と、連続増配している銘柄は似ているようで実は違います。利回りが高いだけの銘柄は、業績悪化で株価が大幅に下落した結果、見かけ上の利回りが跳ね上がっているだけの場合があります。こうした銘柄は減配や無配になるリスクが高く、初心者にはおすすめできません。一方、連続増配銘柄は毎年配当を増やせるだけの業績を出し続けている企業なので、業績の安定性が裏付けされています。銘柄選びでは利回りの高さだけでなく、増配の継続性を重視するのがポイントです。
注目銘柄3: JT / 日本たばこ産業(2914) 配当利回り4%超の高配当王
なぜJTなのか
JTは日本国内のたばこ市場で約6割のシェアを持ち、海外でも130以上の国と地域で事業を展開するグローバル企業です。たばこという商品は景気の波に左右されにくく、嗜好品でありながら日用品に近い消費パターンを持っています。いわば究極のディフェンシブ事業です。
2025年12月期の業績は絶好調で、売上収益は前期比13.4%増の3兆4677億円、調整後営業利益は21.5%増の9022億円と大幅な増収増益を達成しました。海外たばこ事業における値上げ効果が寄与しており、インフレ環境下でもしっかりと価格転嫁ができるビジネスモデルの強さが証明された形です。
配当の魅力
2026年12月期の予想年間配当は1株あたり242円(前期比+8円)で、2期連続の増配となります。直近の株価5700円台で計算すると、配当利回りは約4.2%に達します。東証プライムの平均利回りの2倍近い水準であり、高配当株としてのインパクトは抜群です。
JTは株主還元方針として配当性向75%を目安(プラスマイナス5%の範囲)を掲げています。利益の大部分を配当に充てる方針を明確にしている点は、配当重視の投資家にとって安心材料です。
初心者に優しいポイント
100株の投資額は約57万円とやや高めですが、NISA口座で配当を非課税で受け取れるメリットは大きいです。通常なら配当金には約20%の税金がかかりますが、NISAなら丸ごと手元に残ります。年間2万4200円の配当が非課税になるインパクトは、長期保有を考えると無視できません。
また、JTは過去に一度減配を経験していますが(2021年12月期)、その後は増配に転じ、過去最高配当を更新し続けています。一度の失敗を乗り越えて株主還元を強化している姿勢は、むしろ信頼に値するのではないでしょうか。
NISAで高配当株を持つメリット:
通常、株式の配当金には20.315%の税金がかかります。たとえばJTの年間配当2万4200円(100株)の場合、通常口座なら約4900円が税金として引かれ、手取りは約1万9300円です。しかしNISA口座なら2万4200円がまるまる受け取れます。10年間保有すれば、この税金差は約4万9000円にもなります。高配当株とNISAの相性は非常に良いのです。
3銘柄の比較まとめ
| 比較項目 | NTT(9432) | KDDI(9433) | JT(2914) |
|---|---|---|---|
| 業種 | 通信 | 通信 | 食料品(たばこ) |
| 予想配当利回り | 約3.3% | 約3.0% | 約4.2% |
| 連続増配 | 15期 | 24期 | 2期 |
| 配当性向 | 約40% | 約43% | 約75% |
| 100株投資額の目安 | 約1.6万円 | 約27万円 | 約57万円 |
| ディフェンシブ度 | 非常に高い | 非常に高い | 高い |
| 株主優待 | なし(dポイント) | あり | なし |
パニック売りが最大の敵
投資初心者にとって最も危険なのは、急落を目にしてパニック的に持ち株を売ってしまうことです。日経平均が1日で1857円も下がるともっと下がるのではと不安になる気持ちはよくわかります。しかし、過去の暴落局面を振り返ると、パニック売りした投資家の多くがあのとき売らなければ良かったと後悔しています。
2020年のコロナショックでは日経平均が1万6000円台まで急落しましたが、その後は約3年で4万円を超える水準まで回復しました。2025年4月の関税ショックでも3万円台まで下がりましたが、年末には5万円台を回復しています。
大切なのはこの企業の事業価値は本当に変わったのかを冷静に考えることです。NTTの通信インフラがなくなるわけでも、KDDIのau契約者が一斉に解約するわけでも、JTのたばこが売れなくなるわけでもありません。地政学リスクによる一時的な混乱で株価が下がっているだけであれば、むしろ配当利回りが高くなった分だけお得に買えるチャンスです。
初心者が急落局面で実践すべき3つのステップ
ステップ1: 一括投入しない
底値で買いたいと思っても、株価の底がどこかを正確に当てることは誰にもできません。今日が底かもしれないし、明日さらに下がるかもしれません。だからこそ、投資資金を3回から5回に分けて、時間を空けて少しずつ買い増す分散買いが有効です。仮にさらに下落しても、次の買いで平均取得単価を下げられるため、精神的にも楽になります。
ステップ2: 配当カレンダーを確認する
高配当株を買うなら、配当の権利確定日を把握しておくことが大切です。NTTとKDDIは3月末が権利確定日で、権利落ち日は3月30日前後です。この日までに株を持っていれば配当を受け取る権利が発生します。JTは6月末と12月末が権利確定月です。急落で株価が下がったタイミングで、なおかつ権利確定日前であれば、高い利回りで配当権利を取得できる好機となります。
ステップ3: 長期目線を忘れない
高配当ディフェンシブ株の真価は、短期の値上がり益ではなく、長期保有による配当の積み上げにあります。KDDIに10年前に100万円を投資していた場合、株価は約1.9倍に上昇し、さらに10年間の配当金合計は約97万円に達していたという試算もあります。株価の値上がり益と配当金の合計で、元手が約3倍近くになっていた計算です。短期的な株価の上げ下げに一喜一憂せず、配当を受け取りながら企業の成長を見守るスタンスが、高配当株投資の王道です。
嵐のときこそ種をまこう
2026年3月23日の日経平均1857円安は確かに衝撃的な数字です。しかし、その背景にあるのはイラン情勢という一時的な地政学リスクであり、日本企業のファンダメンタルズ(業績や財務の基盤)そのものが大きく崩れたわけではありません。
今回ご紹介したNTT、KDDI、JTの3銘柄は、いずれも景気に左右されにくいビジネスモデル、堅調な業績、そして株主還元への強い意志を兼ね備えた企業です。急落で配当利回りが上昇している今こそ、長期投資の視点で検討する価値があるのではないでしょうか。
もちろん、投資に絶対はありません。中東情勢のさらなる悪化、原油価格の一段高、金利の急上昇など、想定外のリスクは常に存在します。だからこそ一度に全額を投じるのではなく、分散して少しずつ買い増す戦略が重要です。


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