2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始しました。開戦初日の空爆でイランのハメネイ最高指導者が死亡し、戦争は一気に本格化。3月26日現在、すでに26日目を迎えています。
ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態が続き、世界の原油輸送の約20パーセントが通過するこの海峡が止まったことで、日本を含む世界各国のエネルギー価格が急騰しています。
イラン・アメリカ・イスラエルという三者それぞれの本音と思惑を、できるだけわかりやすく整理します。英語メディア、イラン側メディアの情報源をもとに解説します。
イランの公式発言と本音のズレ
イランの外交姿勢を理解するうえで、まず注目すべきなのが停戦拒否と交渉拒否は別物だという点です。
外務大臣のアラグチ氏は3月15日のCBSインタビューで、われわれは停戦を求めたことも、交渉を求めたこともない。必要なだけ自国を守り続けると明言しました。これだけ聞けば完全拒否に聞こえます。
しかし彼が続けてこう言っていることは、あまり大きく報じられていません。停戦ではなく、戦争の完全かつ恒久的な終結を求めていると。つまりイランが拒否しているのは一時的な停戦という枠組みであり、外交そのものを閉じたわけではないのです。
イランが提示している終戦条件:
イランは一時停戦ではなく、再攻撃を防ぐための保証、イランへの損害賠償、戦争の恒久的な終結を条件として挙げています。さらに、ホルムズ海峡の新たな国際的枠組みの策定も求めており、単純な停戦ボタンを押す気はなく、戦後の秩序ごと交渉テーブルに乗せようとしています。
ではなぜイランはここまで強硬なのでしょうか。アラグチ外相は繰り返しわれわれは交渉の最中に攻撃されたと述べています。2025年に行われた核交渉の過程で、交渉が続いている最中に米・イスラエルによる攻撃が始まったというのがイラン側の認識です。同じ相手と同じ形ではもう話せないという不信感が、現在の強硬姿勢の核心にあります。
ただし、直接交渉はしないと間接接触は行うは矛盾しません。パキスタンやトルコ、エジプトなどの友好国を通じた間接的な接触は継続しており、3月23日にはイラン外務省が米国からの提案を受け取り検討中であることを認めています。公式には否定しながら裏ルートは動いている。これがいまのイランの実態です。
アメリカが早く終わらせたい本当の理由
トランプ大統領は3月23日、イランと生産的な対話を行っており、主要な合意点に達したと発言しました。同時に、48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければイランの発電所を攻撃するという最後通告を出した後、その期限を5日間延期しています。
このちぐはぐな行動の背景には、アメリカが抱える現実的な問題があります。
ホルムズ海峡の封鎖が続くことで、原油価格が急騰しています。エネルギー価格の上昇はトランプ政権にとって国内政治上のリスクです。戦争を続けながらも油価を抑えたい、米軍の負担を増やしたくない。そうした複数の政治的圧力が、トランプ発言のブレを生んでいます。
つまりアメリカは早く終わらせたいが、それは自分たちに有利な条件で終わらせたいという意味です。無条件停戦を急いでいるわけでも、戦争に飽きたわけでもありません。
ホルムズ海峡が日本に与える影響:
日本は原油輸入の約90パーセントを中東に依存しており、その大半がホルムズ海峡を通過します。海峡の封鎖が長期化すれば、日本のガソリン価格や電気料金への影響は避けられません。イランのアラグチ外相は日本向けの安全通航を示唆する発言をしましたが、日本の茂木外相はその内容を正式に受け取っていないと否定しており、実態はいまも流動的です。
イスラエルのまだ終わらせないという姿勢
三者のなかで最も継戦意欲が明確なのがイスラエルです。ネタニヤフ首相は3月22日にわれわれが何をするにしても一緒に行動すると述べた一方、3月19日にはイランでもレバノンでも攻撃を続けていると明言しています。
注目すべきはその目標の広さです。ネタニヤフ首相は単にイランの核施設やミサイル能力の破壊を目指しているだけでなく、現在の体制のない未来の条件を作るという政権交代に近い目標も公言しています。さらに南レバノンへの実効支配の拡大も進めており、これは単なる報復を超えた中東の秩序変更を狙った動きとも読めます。
CNNの報道によると、イスラエル国内ではこの戦争への支持率が66パーセントと高い水準を維持しています。しかし同時に、イランは毎日350発以上の弾道ミサイルやドローンをイスラエルに向けて発射し続けており、市民は連日防空シェルターに避難しています。
注意深く見ると、米国とイスラエルの間にも温度差があります。トランプ大統領はイスラエルに対してホルムズ海峡周辺のエネルギー施設への攻撃を控えるよう求め、イスラエルはいったん従いましたが、独自の判断で南パールスのガス田を攻撃し、その結果イランが湾岸諸国のエネルギー施設へ報復するという連鎖を起こしました。一緒に行動すると言いながら、実際には独自の判断で動いているというのが現実です。
三者を比べると見えてくる構図
| 国 | 公式姿勢 | 実際の動き |
|---|---|---|
| イラン | 交渉・停戦は一切求めない | 条件付き終戦に向けた間接接触は継続 |
| アメリカ | 生産的な対話が進んでいる | 自国に有利な条件が整うまで軍事継続 |
| イスラエル | アメリカと連携して戦争目的を達成する | 独自の戦争目標に向けて攻撃を継続・拡大 |
この表を見ると、今の状況の構造が見えてきます。三者はそれぞれ異なる終わりの定義を持っており、それが一致していないのです。
アメリカにとっての終わりは、エネルギー価格が安定し、米軍の負担が下がり、国内政治的に勝利と説明できる状態です。イスラエルにとっての終わりは、イランの核・ミサイル能力が完全に破壊され、地域における脅威が消えた状態です。イランにとっての終わりは、再攻撃されない保証と補償を得たうえで恒久的な停戦が実現した状態です。
三者の終わりがそれぞれ違うから、交渉は噛み合わない状況になっています。
各立場のメディアをみて見えたこと
トランプ大統領は繰り返しイランは合意を望んでいると発言していますが、これはイラン側が明確に否定している内容です。一方でイランの強硬発言だけを切り取ると外交は完全に閉じているという印象になりますが、実態は間接接触が続いています。
より立体的に状況を把握するためには、パキスタン、トルコ、アラブ諸国などの中東系・南アジア系メディア、そしてイラン国際放送(Iran International)のような中立寄りのイラン系メディアも合わせて参照することが有効です。複数の視点を重ねたときに初めて、公式発言と実際の動きのズレが見えてきます。

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