ラサ工業(4022)の株価が下落中。これは調整局面なのか、それとも売り時なのか?

株式

2026年1月に上場来高値を更新したラサ工業(証券コード:4022)ですが、その後は調整色が強まり、3月に入っても一段安となる場面が見られました。一方で業績は好調、株式分割も発表と、ポジティブな材料が山積みな不思議な状況が続いています。

今回は、ラサ工業の足元の株価下落の背景を整理しつつ、ファンダメンタルズの観点から今後の見通しを考えていきます。

ラサ工業とはどんな会社か

ラサ工業は1913年創業の老舗化学メーカーで、東証プライム市場に上場しています。社名の由来は、現在の沖大東島(ラサ島)でリン鉱石を採掘したことにあります。歴史の重みを感じさせる会社です。

事業は大きく3つのセグメントに分かれています。リン酸や凝集剤などを扱う化成品事業、建設機械や土木機械を手がける機械事業、そして化合物半導体向け高純度無機素材を取り扱う電子材料事業です。

中でも投資家から注目を集めているのが、化成品事業に含まれる半導体向け高純度リン酸です。この製品は半導体の製造工程(窒化膜のエッチング)に欠かせない素材で、ラサ工業は世界シェアトップクラスを誇っています。連結売上高のおよそ3分の1を占める主力製品であり、これが株価の大きなドライバーになっています。

豆知識:高純度リン酸ってどんなもの?

スマートフォンやパソコンに使われる半導体チップ。その製造工程では、膜を正確に削るエッチングという作業が必要です。このときに使われるのが高純度リン酸です。ちょっとでも不純物が混ざると半導体の性能に影響が出るため、高純度であることが命。ラサ工業は日本・台湾・韓国の3拠点から各国の半導体メーカーへ直接販売しており、品質管理の厳しさと供給体制の安定性が評価されています。

直近の株価推移と下落の背景

ラサ工業の株価は2025年以降、大きく上昇してきました。2024年末頃は5,000円台で推移していたものが、2026年1月16日には上場来高値の7,580円に到達しています。この1年間だけで見ると、株価は170%超の上昇という驚異的なパフォーマンスでした。

ところが2月以降は調整に入り、3月初旬には8,850円(※株式分割前換算)から一日で9%超の下落を記録する場面もありました。3月19日時点では7,900円と、高値から約15%下落した水準で取引されています。

この下落の主な要因として考えられるのは、以下のような点です。

第一に、急騰後の利益確定売り圧力です。短期間で株価が倍以上になった銘柄には、高値掴みを避けたい投資家やすでに大きな利益を手にした投資家からの売りが出やすくなります。ラサ工業もこのパターンにはまった可能性があります。

第二に、日本株全体の地合い悪化です。2026年3月にかけて、米国の関税政策への警戒や円高進行などを背景に、日経平均先物が大幅下落する局面がありました。こうした市場全体の動揺が個別銘柄にも波及したとみられます。

第三に、株式分割前の需給変化です。2026年2月12日に3月31日基準日で1株を5株に分割すると発表され、権利付最終日の3月27日に向けて分割取りの動きも一部入りましたが、その後は需給が流動的になりやすい状況が続いています。

業績は本当に好調なのか

では、株価の調整とは裏腹に、業績はどうなっているのでしょうか。

2026年3月期の第3四半期(累計)の決算は、売上高352億3,700万円(前年同期比5.5%増)、営業利益45億1,000万円(前年同期比47.6%増)という大幅な増収増益でした。特に電子材料事業と半導体向け製品が好調で、通期予想も上方修正されています。

通期予想(最新)は下表のとおりで、すべての段階で増収増益を計画しています。

項目 2025年3月期(実績) 2026年3月期(会社予想) 増減率
売上高 454億円 492億円 +8.3%
営業利益 47億円 51億円 +7.7%
経常利益 46億円 49億円 +6.5%
当期純利益 31億円 33億円 +5.4%

さらに、自己資本比率も着実に上昇し、有利子負債は減少傾向にあります。財務の健全性が高まりながら利益も伸びているというのは、非常に理想的な状態です。

アナリストのレーティングも強気評価が続いており、複数の証券会社が目標株価を5,400〜5,500円(分割前換算)に設定しています。PERも14倍台と決して割高ではなく、ファンダメンタルズ面では引き続き評価できる状況です。

中長期での成長は

株価は短期的に上下しますが、事業の将来性を考えるうえで重要な材料があります。ラサ工業には現在、中長期的な成長を後押しする大きな追い風が3つ吹いています。

追い風1:AI半導体ブームが続く限り、高純度リン酸の需要は拡大する

生成AIの普及を背景に、世界の半導体メーカーは先端半導体の増産投資を続けています。TSMCやサムスンなどの大手ファウンドリが積極的に設備投資を拡大するなか、その製造に必要な高純度リン酸の需要も着実に伸びています。ラサ工業の化成品事業における半導体向け製品の売上は、海外向けを中心に好調に推移しており、このトレンドは当面続くと予想されます。

追い風2:台湾工場の増強と米国進出による生産体制の強化

ラサ工業は台湾子会社に約30億円を投じて生産能力を4割増強する設備投資を進めており、2026年3月期中に完工予定です。さらに韓国の持ち分法適用会社がテキサス州に新工場を建設予定(2027年前半完工予定)で、日本・台湾・韓国・米国の世界4拠点体制が整う見通しです。

この消費地の近くで生産する地産地消モデルは、半導体サプライチェーンの安定化を求める顧客企業からの信頼を高め、競合他社との差別化にもつながります。

追い風3:経済安全保障の観点から注目度が高まっている

リンは半導体製造に不可欠な元素であると同時に、供給網が中国に偏っているとして経済安全保障上の重要性が増しています。

実際にラサ工業は経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けており、国から見ても重要なサプライヤーとして位置づけられています。地政学的リスクが高まるほど、非中国系サプライヤーとしてのラサ工業の価値は上がる可能性があります。

豆知識:株式分割とは何か、株価にどう影響する?

ラサ工業は2026年3月31日を基準日に、1株を5株に分割しました。例えば分割前に1株8,000円だった株が、分割後は1株1,600円になるイメージです。株価が下がっても、株数が5倍になるので保有資産の価値は変わりません。ただし株価が手頃になることで、これまで高くて買えなかったという新規投資家が参入しやすくなります。これが流動性の向上につながり、株価の下支えになると期待されることが多いです。

リスク要因も正直に確認しておこう

ラサ工業のリスク要因は以下になります。

まず、半導体市況の急変動リスクがあります。半導体業界は需給サイクルが激しく、投資の波が引けば高純度リン酸の需要も影響を受ける可能性があります。足元は好調ですが、2023年のような市況悪化局面が再来すれば業績への影響は避けられません。

次に、原材料コストの上昇リスクです。高純度リン酸の原料となる黄リンはほぼ全量を輸入に依存しています。価格高騰や輸入制限が発生すると、コスト面での圧迫要因になります。

また、機械事業の低迷も懸念材料です。化成品・電子材料事業が好調な一方で、機械事業は建設機械・土木機械ともに厳しい状況が続いています。事業全体のバランスという観点では、この事業の回復が待たれるところです。

さらに、為替リスクも無視できません。台湾・韓国・将来的には米国でも事業を展開するなか、円高が進めば海外事業の円換算収益が目減りする可能性があります。

今の下落は調整か天井か

ラサ工業の株価下落は業績悪化によるものではなく、急騰後の利益確定と市場全体の地合い悪化が重なった調整局面と見るのが自然です。

業績は過去12四半期にわたって改善傾向が続いており、第3四半期の営業利益は前年同期比47.6%増という非常に強い数字が出ています。通期予想も上方修正済みで、台湾工場の増強完工や米国展開など成長ストーリーは変わっていません。

一方で、すでに株価が過去1年間で2.7倍以上になっていることも事実であり、ある程度の成長期待は株価に織り込まれています。短期的には株式分割後の需給変動や市場全体の動向次第で、さらに下振れする可能性も十分にあります。

業績は良いのに株価が下がっているという状況は、長期投資家にとっては見逃せないチャンスになりうる反面、短期的にはさらに下落するリスクもあります。

チェックポイント 現状評価
業績トレンド 増収増益が継続、過去12四半期改善
株価下落の主因 利確売り+地合い悪化(業績悪化ではない)
株式分割 3月31日基準、1株を5株に(流動性向上期待)
成長材料 台湾工場完工、米国展開、AI半導体需要拡大
主なリスク 半導体市況急変、原材料高騰、為替リスク
PER(予想) 約14.7倍(2026年3月19日時点)

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