「良い問いなんて思いつかない」から始めるGPT活用法。凡人の私が使う“4つの思考駆動”

goodquestion 【AI】

「AIを活用するには、良い問いを立てなければならない」

最近、そう語られることが増えてきました。確かに、優れた問いがあれば、AIとの対話はより深く、豊かになると思います。
しかし、それは“問いを立てる力”がある人の話です。
私にとって、「問いを立てること」自体が難しいと感じています。

何が分かっていて、何が分かっていないのかも曖昧な状態で、いきなり「問いを出せ」と言われても、手が止まってしまうのは当然です。
Google検索なら、とりあえず単語を入れれば何かが返ってきます。しかしAIは、“適切な問いがないと使えない”と感じる人も多い。これでは、せっかくの技術を活かしきれません。

そこで本記事では「問いを立てる前でも始められる」、凡人AI活用法=“思考駆動”を4つご紹介します。いずれもGoogle検索では難しいけれど、AIなら自然にできる思考の形です。

①【連想駆動】芋づる式に、思考の枝葉を広げ、意外なつながりを発見する

どんな活用?

AIに、あるテーマやキーワードを投げかけ、そこから「それが影響を及ぼす可能性のある別の分野や事象」を、連鎖的にたどらせる方法です。まるで、一つの根から次々と新しい芽が出てくるように、思考が広がっていくイメージです。

例:

「“原油価格の下落”という事象から、一見関係なさそうな業界や社会現象まで、5段階で連想を広げてください。それぞれの関連性も簡単に説明してください。」

AIの思考プロセス(例):

  1. エネルギー業界の収益悪化: 原油価格下落は、石油元売り会社や資源開発会社の利益を直撃します。
  2. 化学素材メーカーのコストダウン: 原油は多くの化学製品の原料となるため、素材メーカーにとっては仕入れコスト削減につながります。
  3. 自動車部品メーカーの素材転換・軽量化加速: 素材コストの変動は、代替素材への移行や、より燃費効率の良い軽量部品の開発を後押しする可能性があります。
  4. 海外物流網の変化とコスト競争激化: 燃料費は物流コストの大きな部分を占めるため、原油価格下落は国際輸送のコスト構造に影響を与え、価格競争を激化させるかもしれません。
  5. 地方港湾における雇用形態の変化: 物流コストの変動や荷主の動向変化が、地方港湾の取扱量や業務内容に影響を及ぼし、結果的に関連企業の雇用形態(例えば、短期契約の増加など)に変化をもたらすかもしれません。

このように、AIは最初のテーマからスタートし、次々と関連性のありそうなトピックへと思考をジャンプさせ、まるで木の枝葉が伸びていくように、多角的な視点を提供してくれます。

なぜAIにしかできない?

私たち人間は、どうしても自分の知識や経験、思い込みの範囲内でしか物事を連想しがちです。

しかしAIは、学習した膨大なデータの中から、人間では思いもよらない、あるいは気づきにくい分野間の関連性や因果関係のパターンを見つけ出し、客観的かつ意外性のある接続を提示できます。特定のバイアスに囚われず、フラットな視点から多角的な連想を展開できるのがAIの強みです。

どんな場面で使える?

  • シナリオプランニング:未来に起こりうる複数の可能性を予測し、備えるために。
  • 新規事業や投資アイデアの発掘:まだ誰も気づいていないビジネスチャンスの種を見つけるために。
  • 企画会議のブレインストーミング補助:マンネリ化した議論に新たな視点を投入し、発想を飛躍させるために。
  • リスク要因の洗い出し:ある事象が引き起こす可能性のある、見過ごされがちなリスクを多角的に検討するために。

②【差異駆動】「違い」に光を当て、隠れた本質や新たな視点を見つけ出す

どんな活用?

似たような概念や事象、あるいは対立するように見えるものをAIに提示し、「それらの間にある決定的な違いは何か?」「なぜその違いが生まれるのか?」といった問いを通じて、それぞれの本質や特徴を浮き彫りにする方法です。

単に表面的な違いを並べるのではなく、その背景にある文脈や構造まで掘り下げます。

例:

  • 「日本の“成果主義”とアメリカの“成果主義”を比較し、それぞれの文化的な背景や従業員の受け止め方の違いについて、具体的な事例を交えながら説明してください。」
  • 「AIチャットボットであるChatGPTとClaudeについて、ユーザーに対する応答の基本的なスタンスや思想的背景に違いがあるとしたら、それはどのような点か、哲学的な観点も踏まえて比較・考察してください。」

違いを深く問うことで、それぞれの対象が持つ独自の価値や、あるいは両者に共通して存在するものの、普段は意識されていない「暗黙の前提」が明らかになることもあります。

なぜAIにしかできない?

Googleなどの検索エンジンは、キーワードに「関連する情報」や「似た情報」を集めてくることには長けています。しかしAIは、提示された複数の対象の特性を深く理解し、文脈に応じてそれらの間に存在する「意味のある違い」を多角的に生成・言語化することができます。単に情報を並べるのではなく、それぞれの特徴や背景、さらにはそれらが社会や個人に与える影響まで考慮した上で、立体的かつ洞察に富んだ比較分析を行えるのが特徴です。

どんな場面で使える?

  • 海外進出時の文化・制度理解:ビジネスを展開する国や地域の特性を深く理解し、適切な戦略を立てるために。
  • 競合製品・サービスの差別化ポイント検討:自社製品のユニークな強みを見つけ出し、市場でのポジショニングを明確にするために。
  • コンセプトや理念の明確化:抽象的な概念や組織の理念について、他の類似概念との違いを明らかにすることで、よりシャープに定義するために。
  • 歴史的出来事や思想の多角的理解:異なる時代や背景を持つ事象や思想を比較することで、それぞれの意義や現代への影響を深く考察するために。

③【物語駆動】フィクションの力を借りて、複雑な問題をリアルに体感する

どんな活用?

抽象的で捉えにくい問題や、将来起こりうるかもしれない状況などを、AIに具体的な「物語」や「キャラクターの視点を通したシナリオ」として描いてもらう方法です。

複雑なデータや専門的な解説だけではピンとこないことも、物語の形を取ることで、登場人物の感情や葛藤を通じて直感的に理解し、自分事として捉えやすくなります。

例:

  • 「成果主義が極端に推し進められた結果、社員の精神的な健康が蝕まれていく未来のIT企業の様子を、入社3年目のある若手エンジニアの視点から、1日の出来事を追う形で物語にしてください。」
  • 「経営危機に瀕した地方銀行が、地域社会との関係や行員の生活を守るために苦闘し、最終的に再生に至る(あるいは破綻する)までの数年間を、あるベテラン融資担当者の回想という形でストーリーとして描いてください。」

ドキュメンタリーのような事実の羅列でも、論理的な説明でもなく、あえてフィクションの力を借りることで、問題の本質やそれがもたらす影響を、より生々しく、感情に訴えかける形で理解することができます。

なぜAIにしかできない?

人間がゼロから独創的な物語を紡ぎ出すには、多くの時間と労力、そして創造的な才能が必要です。一方、AIは、与えられたテーマや設定に基づいて、膨大な物語のパターンや表現を組み合わせ、即座に「ありえそうな状況」や「共感を呼ぶキャラクター」を生成し、 もっともらしい物語を構築できます。

多様な登場人物の視点、複雑なプロット展開、感情の機微などを盛り込み、読者が状況をリアルに想像できるようなストーリーを瞬時に提供できるのがAIの強みです。

どんな場面で使える?

  • 企画書やプレゼンテーションの導入:提案内容の重要性や顧客の課題を、共感を呼ぶショートストーリーで伝え、聞き手の心を掴むために。
  • 社内研修やワークショップの教材:倫理的なジレンマや組織内コミュニケーションの課題などを物語で提示し、参加者の主体的な議論や内省を促すために。
  • 思考の抽象化と具体化の往復訓練:複雑な社会問題や将来予測などを物語に落とし込むことで、具体的なイメージを持ち、そこから再び本質的な課題を抽出する思考力を養うために。
  • 新しいサービスやプロダクトの利用イメージの具体化:ユーザーがどのような状況で、どのようにそのサービスを体験するのかを物語で示すことで、開発チーム内での共通認識を醸成するために。

④【脱・正解駆動】「分からなさ」と共にあり続け、思考の余白と対話を生み出す

どんな活用?

すぐに明確な「答え」や「結論」を求めようとするのではなく、あえてAIに「現時点では明確な答えがない」という前提で、多様な視点や可能性を探求し続けてもらう方法です。

問題の複雑さや多面性を認識し、性急な結論を避け、「分からないこと」そのものと向き合い続けることで、かえって思考の深まりや新たな問いが生まれる余地を作り出します。

例:

  • 「“人生における生きがいとは何か?”という問いに対して、ストア哲学、実存主義、日本の禅の思想という3つの異なる哲学的視点から、それぞれどのような考察が可能か、結論を出さずに多角的に論じてください。」
  • 「AI技術の進化によって、“人間が働く意味”が根本から変わる可能性のある未来において、私たちはどのような価値観を持ち、社会とどう関わっていくべきか。悲観論、楽観論、中立論など、複数の視点から問いを深め、それぞれの論拠を提示してください。」

「分からないままでいい」「結論は急がない」とAIに許容させることで、一方的な情報提供ではなく、まるで人間同士が対話するように、思考のキャッチボールを続けることができます。

なぜAIにしかできない?

検索エンジンは、ユーザーが入力したキーワードに対して、最も関連性の高い「答え」や「情報源」を提示することを目的として設計されています。

一方、AIは、明確な「正解」が存在しない問いに対しても、その問い自体が持つ多義性や複雑性を受け止め、異なる立場や文脈からの多様な意見や論点を提示し続けることで、ユーザーとの間で「思考を深めるための対話」を継続できるユニークな能力を持っています。

人間のように「早く結論を出さなければ」というプレッシャーを感じさせず、思考のプロセスそのものを支援し、新たな気づきや視点の転換を促す壁打ち相手となれるのです。

どんな場面で使える?

  • 哲学対話や自己内省のパートナー:明確な答えのない倫理的・哲学的な問いについて、多様な視点に触れながらじっくり考えるために。
  • 複雑な問題やイシューの構造整理:解決策がすぐには見えない問題に対して、様々な角度から論点を洗い出し、問題の全体像を把握するために。
  • 会議やディスカッションの導入・活性化:参加者に多様な視点を提供し、議論の前提となる論点を整理することで、より建設的な話し合いを促すために。
  • 創造的なアイデア発想の触媒:あえて結論を出さない対話を通じて、既存の枠組みにとらわれない自由な発想や、新たな問いの発見を促すために。

4つの【思考駆動型AI活用の比較表】

駆動タイプ どんな思考の型か? AIならではの強みはどこか?
連想駆動 あるテーマから芋づる式に思考を広げ、意外なつながりを発見する 人間の思い込みを超え、膨大なデータから客観的かつ意外性のある関連性を見つけ出し、思考の枝葉を多角的に広げられる。
差異駆動 「違い」に光を当て、隠れた本質や新たな視点を見つけ出す 単なる情報収集ではなく、文脈や背景を理解し、複数の対象間に存在する「意味のある違い」を多角的に生成・言語化できる。
物語駆動 フィクションの力を借りて、複雑な問題をリアルに体感する 抽象的なテーマや複雑な状況を、共感を呼ぶキャラクターや もっともらしい展開で即座に物語化し、直感的な理解を促せる。
脱・正解駆動 「分からなさ」と共にあり続け、思考の余白と対話を生み出す 明確な答えのない問いに対し、性急な結論を避け、多様な視点を提供し続けることで、「思考を深めるための対話」を継続できる。

「問いを立てなきゃ」は、もう忘れていい

「良い問いを立てなければAIは使えない」というプレッシャーを感じる必要はもうありません。むしろ、私たちの頭の中にある、まだ言葉にならないモヤモヤとした感情、うまく説明できない違和感、ぼんやりとしたアイデアの種こそが、AI活用の絶好のスタート地点なのです。

AIは、あなたが明確な問いを持っていなくても、あなたの頭の中にある“何か”を察知し、それを様々な形に拡張(連想駆動)、明確化(差異駆動)、具体化(物語駆動)、そして深掘り(脱・正解駆動)してくれる、頼もしい思考のパートナーです。

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