パルグループホールディングス(証券コード:2726)の株価が、2025年9月10日につけた年初来高値2,948円から、2026年2月25日現在の1,647円まで、わずか半年足らずで約44%も下落しています。3COINS(スリーコインズ)やCIAOPANICなどの人気ブランドを抱え、業績は増収増益が続いているにもかかわらず、株価は低迷したままです。
好業績なのに株価が下がるという矛盾した現象には、いくつかの重なった要因がありました。
まず現状を把握!パルグループHDの基本データ(2026年2月25日現在)
現在のパルグループHDがどんな状況にあるのかを、数字で確認しましょう。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 現在値(2026/2/25) | 1,647円 |
| 年初来高値(2025/9/10) | 2,948円 |
| 年初来安値(2026/2/9) | 1,588円 |
| 高値からの下落率 | 約▲44% |
| 時価総額 | 約3,045億円 |
| 予想PER | 15.88倍 |
| 予想配当利回り | 2.43% |
| 予想ROE(26/02期) | 25.4% |
業績の数字を見ると、26/02期予想では増収率+13.1%、経常増益率+17.4%とどちらもプラスです。売上高経常利益率も12.0%と、アパレル・小売業界の中ではかなり高い水準を維持しています。好業績が続いているのに株価が大きく下がっている、というのがこの銘柄の最大の謎と言えます。
パルグループHDってどんな会社?知っておきたい事業の全体像
株価を理解するには、まず会社そのものを知ることが大切です。パルグループHDは1973年に大阪で設立されたアパレル・雑貨の持株会社で、東証プライム市場に上場しています。
事業は大きく2本柱です。衣料事業ではCIAOPANICやKastane、Discoatなど多様なブランドを展開し、20代から60代以上まで幅広い世代の女性をターゲットにしています。もう一方の雑貨事業の看板が、あの「3COINS(スリーコインズ)」です。330円(税込)を主体価格とするファッション性の高い生活雑貨店として全国に展開し、テレビの情報番組や経済誌でも頻繁に特集されるほどのブランド力を誇ります。
2025年2月期の売上高は約2,078億円、営業利益は約236億円で3期連続の過去最高益を更新。SNSのフォロワー数も2,000万人を超えており、デジタルマーケティング戦略でも先進的な企業です。業績は完璧なのになぜ?と私も考えていました。
なぜ株価は下がり続けているのか?4つの要因を解説
要因1:創業者退任と31.5億円の特別損失が投資家を驚かせた
最初のきっかけは、2025年1月に発表された創業者・井上英隆氏の退任です。同氏は2025年5月をもって全役職から退任しましたが、その際に特別功労金として約31.6億円(3,158百万円)が特別損失として計上されました。
同社は3期連続で過去最高の営業利益・経常利益を更新したにもかかわらず、この特別損失のために当期純利益は前期比で減益となりました。数字の上では「増収増益の好決算」なのに「最終利益は減った」という見え方になったため、決算を見た投資家が戸惑い、売り圧力が強まりました。
要因2:創業家による大量株式売り出しで需給が悪化した
2025年5月には、創業家の井上英隆氏・井上隆太氏によって合計250万株の売り出しが実施されました。オーバーアロットメントを含めると最大287.5万株に達する大規模な売り出しです。
これは市場に一気に大量の株が放出されることを意味します。需要と供給の関係で、同じ価格の株がたくさん市場に出れば価格は下がりやすくなります。会社の経営がおかしいわけではなく、あくまで「株式の需給バランスが崩れた」という市場のメカニズムによる下落です。会社自身は自社株買いで対抗しましたが、下落のインパクトを完全には吸収できませんでした。
要因3:市場全体のリスクオフ・アパレルへの懸念
米国トランプ政権の関税政策の不透明感、日銀の利上げ観測、円高基調など、2025年後半から2026年にかけてのマクロ環境は、ファッション・小売りセクター全体に逆風でした。アパレル企業は原材料を海外から調達するため、円安・物価上昇・消費者の節約志向という三重苦に直面しやすい業種です。個別企業の業績が好調でも、セクター全体が売られる局面では下げに巻き込まれます。
要因4:高値から「成長期待の修正」が起きた
2025年9月の高値2,948円がつけられた時点では、予想PERが約30倍前後と、かなり高い成長期待が株価に織り込まれていました。その後の業績を見ると「確かに増収増益は続いているが、当初期待されていたほどのペースか?」という問い直しが起き、バリュエーション(評価倍率)が切り下がりました。
現在の予想PER約15.88倍は、高値時点の半分程度まで圧縮されています。これは業績悪化ではなく、期待値の調整による株価下落です。
豆知識:テクニカル指標も弱気シグナルを示している
現在の株価(1,647円)は5日移動平均(1,665円)・25日移動平均(1,676円)をともに下回っており、かい離率はそれぞれ約▲1.1%、▲1.75%とマイナス圏です。サイコロジカルラインも5勝7敗(勝率41.7%)と売り優勢の状態が続いています。ただし、これらは過去の値動きをもとにした参考指標であり、業績が好転すれば一気に逆転することもあります。
信用残高から見える需給の実態
信用取引のデータを見ると、さらに興味深い状況が見えてきます。信用買い残は1,695,100株に対して信用売り残は117,700株、貸借倍率は14.4倍という高い水準です。これは「将来上がると見込んで買っている投資家」が、「空売りしている投資家」の約14倍いることを意味します。
つまり、株価が低迷しているにもかかわらず、多くの個人投資家が「いずれ上がる」と信じて保有し続けている状態です。この信用買い残が多いことは、反転した際の買い戻し需要という意味でプラスに働く可能性がある一方、下落が続いた場合の「投げ売り(ロスカット売り)」のリスクも内包しています。
財務指標から見た「本当の企業力」
| 指標 | 24/02期 | 25/02期 | 26/02期予 |
|---|---|---|---|
| 増収率 | +17.1% | +7.9% | +13.1% |
| 経常増益率 | +17.3% | +27.0% | +17.4% |
| 売上高経常利益率 | 9.8% | 11.5% | 12.0% |
| ROE | 21.7% | 17.6% | 25.4% |
| ROA | 15.7% | 17.4% | 19.0% |
| 配当性向 | 33.9% | 44.0% | 38.6% |
この表を見て、売上と利益が毎年伸び、収益性を示すROEとROAは業界平均を大きく上回り、配当性向も安定しています。第3四半期(2026年2月期)の実績でも売上高1,763億円(前年同期比+15.6%)、営業利益215億円(同+17.9%)と堅調な伸びを続けています。
株価は下がっているのに、中身は着実に成長しているという状況です。
株価が反転する可能性はあるのか?上昇シナリオを探る
シナリオ1:特別損失という一時要因が消えれば純利益が急回復する
2025年2月期の純利益を大きく押し下げた約31.6億円の創業者特別功労金は、あくまで一度きりの特殊要因です。この費用は26/02期以降には発生しません。したがって、来期以降は本業の利益がそのまま純利益に反映されやすくなります。
現在の予想ROEが25.4%と前期(17.6%)を大きく上回る見通しとなっているのも、この一時費用の消滅が大きく影響しています。
シナリオ2:3COINSのさらなる拡大と大型店戦略
3COINSは現在も積極的な新規出店と既存店の大型化を進めています。2026年2月期の雑貨事業の営業利益は前年同期比+63.1%と驚異的な伸びを示しており、今後の成長エンジンとして期待が高まっています。ショッピングモールのキーテナントとして誘致される機会も増えており、ブランド力の向上が出店条件の改善にもつながる好循環が生まれています。
シナリオ3:SNS2,000万フォロワーを活かしたEC拡大
パルグループのSNS総フォロワー数は2,000万人を超えています。社員インフルエンサーを活用した独自のプロモーション戦略は、広告費をかけずに新商品の認知を広げられる強力な武器です。ネット通販の既存店売上高は足元でも+11.6%増と好調で、今後のEC比率の向上は利益率の改善にも直結します。
シナリオ4:PER15倍台という割安水準が長期投資家を引きつける
現在の予想PER約15.88倍は、小売・アパレルセクターの平均的な水準かやや低い位置にあります。ROEが25%超、増収増益が続く企業としてはかなり割安と評価する投資家も多く、みんかぶのAI株価診断でも「割安」と判定されています。
長期投資を目的とした機関投資家や個人投資家の買いが入りやすいゾーンにいると言えます。
豆知識:パルグループの「4週間MD」とは何か
パルグループが強さの源の一つとして挙げているのが「4週間マーチャンダイジング(4週間MD)」という仕組みです。4週間を1シーズンとして新商品を投入し、売れ行きを素早く見極めて次の商品計画に反映させます。これにより「流行遅れの在庫を抱えてバーゲンで安売りする」というアパレル業界の宿命的なロスを最小化し、高い粗利率を維持することができています。この「在庫を作らない・持たない」経営が、業界トップ水準の利益率につながっているのです。
パルグループHDの株価下落は「業績悪化」ではなく「需給と期待値の問題」
今回のパルグループHDの株価下落は、業績が傾いたからではありません。創業者退任に伴う特別損失という一時的なマイナス要因、創業家による大量株式売り出しで需給バランスが崩れたこと、そして高値時に織り込まれすぎた成長期待が修正されたこと、この3つが重なった結果です。
一方で、3COINSのブランド力と雑貨事業の急拡大、SNS2,000万フォロワーを活かしたEC強化、4週間MDによる在庫効率の高さ、そして創業者功労金という一時費用の消滅と純利益の回復、といった反転材料は着実に積み上がっています。
株価は年初来高値から44%下落し、予想PERは約16倍まで低下しました。ここからの注目ポイントは、26/02期の通期決算での純利益回復確認、3COINSの出店状況と雑貨事業の利益貢献度、そしてEC売上の伸びの3点です。業績の本質的な強さが再評価されるとき、株価は大きく動き出す可能性があります。

コメント