株の割安判断では、企業の資産と収益力に対して株価がどの程度割安に置かれているかを確認します。清原氏のわが投資術式のネットキャッシュ比率とキャッシュニュートラルPERは、手元資金の厚さを踏まえて企業価値を見直すための指標です。
今回のリストは、ネットキャッシュ比率が1倍超で、キャッシュニュートラルPERが低水準、配当利回りが3%以上という条件で抽出された銘柄です。
ネットキャッシュ比率とキャッシュニュートラルPERは何を見ているか
ネットキャッシュ比率
ネットキャッシュは、現金・預金などの資金から負債を差し引いた概算の残りです。ネットキャッシュ比率は、そのネットキャッシュが時価総額に対してどの程度あるかを示します。1倍を超える場合、時価総額以上のネットキャッシュを持つ計算になり、資産面から見ると株価が大きく割り引かれている可能性があります。
キャッシュニュートラルPER
キャッシュニュートラルPERは、時価総額からネットキャッシュを差し引いた値を、利益と比べて評価する考え方です。時価総額よりネットキャッシュが大きい場合、時価総額マイナスネットキャッシュがマイナスとなり、キャッシュニュートラルPERがマイナスになることがあります。
このマイナスは、直ちに業績不振を意味するものではありません。ネットキャッシュが株価を上回っているため、収益が一定水準にあるなら、事業価値が低く評価されている可能性があります。一方で、利益が一時的に落ちている場合や、将来の収益力に不確実性がある場合も、同じような形になります。指標の見た目だけで結論を出すのは避けるべきです。
実務の見方キャッシュニュートラルPERがマイナスの銘柄は、資金の余力が大きい一方で、市場が評価を抑える理由を抱えていることもあります。成長の見通し、収益の安定性、資本効率、株主還元、ガバナンスなどが論点になりやすいです。
抽出された10銘柄
ネットキャッシュ比率、実質PER、配当利回り、時価総額、ネットキャッシュ額の5点にまとめます。
また、無配当銘柄は捨てて、配当がある銘柄のみを掲載しています。
ネットキャッシュ比率は1以上で、高ければたかいほどよいです。キャシュニュートラルPERは、実質PERと略表記しておりマイナスであればあるほどよいです。
とく良い4銘柄は太字にしています。
| コード | 銘柄名 | NC比率 | 実質PER | 配当利回り | 時価総額 億円 | ネットキャッシュ 億円 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1853 | 森組 | 1.02 | -0.1 | 4.05% | 113.3 | 115.1 |
| 1994 | 高橋カーテンウォール工業 | 1.30 | -2.4 | 3.70% | 42.9 | 55.9 |
| 4627 | ナトコ | 1.35 | -2.5 | 3.43% | 121.2 | 163.5 |
| 5834 | SBIリーシングサービス | 1.01 | -0.1 | 3.50% | 498.2 | 503.8 |
| 5921 | 川岸工業 | 1.63 | -5.8 | 3.60% | 122.0 | 199.3 |
| 6249 | ゲームカードホールディングス | 1.55 | -2.4 | 3.20% | 438.2 | 680.5 |
| 6342 | 太平製作所 | 1.42 | -1.2 | 4.21% | 37.1 | 52.6 |
| 6778 | アルチザネットワークス | 1.10 | -7.5 | 3.34% | 52.5 | 57.5 |
| 6964 | サンコー | 1.65 | -3.1 | 3.10% | 57.3 | 94.9 |
| 7175 | 今村証券 | 1.08 | -0.9 | 3.83% | 66.8 | 72.4 |
このリストをどう読むか。共通点と注意点
共通点は、時価総額に対して資金余力が大きいこと
時価総額とネットキャッシュが近い、あるいはネットキャッシュが上回る銘柄が並んでいます。ネットキャッシュ比率が1倍を超えることは、資産面から見た評価が低い可能性を示します。ただし、資産が厚いことと、株価が上がることは同義ではありません。
実質PERがマイナスでも、理由の確認は欠かせない
実質PERがマイナスになるのは、ネットキャッシュ控除後の企業価値がマイナス側に振れるためです。形式上は事業価値が低く見積もられている状態ですが、背景は二つに分かれます。
資産価値に対して過度に売られているケースと、事業の将来性や収益の再現性が疑われているケースです。後者の場合、割安に見えても評価が戻らないことがあります。
配当利回りは入口で、継続性は別の確認が必要
利回りが3%以上でも、配当が続くかは別問題です。利益の変動が大きい会社では、配当性向が低く見えても翌期に減配となることがあります。逆に、利益が薄い局面でも資金で配当を維持する会社もありますが、その場合は財務余力が目減りします。
配当方針とキャッシュフローの状況を合わせて確認する必要があります。
3%未満を切っていますが、逆に3%未満であることはアクティビストからの圧力を考慮できるとも考えられ、配当余力が多ければ買い判断も可能です。
確認ポイント配当の継続性を見る際は、営業キャッシュフローが安定しているか、利益が特別損益で左右されていないか、過去に減配が多くないかを確認すると判断しやすくなります。
10銘柄を短評で整理
特にネットキャッシュ型では、資金をどう使うかが評価に直結します。増配や自社株買い、政策保有株の整理、投資の収益性改善など、資本政策が具体化すると市場の見方が変わりやすい一方、資金が滞留したままだと評価が動きにくい傾向があります。
森組は、時価総額とネットキャッシュが近く、配当利回りも4%台です。資産面の割安さは分かりやすい一方、事業の利益率や受注環境の影響を受けやすいかが論点になります。
高橋カーテンウォール工業は、時価総額に対するネットキャッシュの比率が高く、実質PERもマイナスで深い形です。資本政策の強弱で市場評価が変わりやすいタイプです。
ナトコは、ネットキャッシュの厚みに加えて投資有価証券も一定額あります。資産の内訳や換金性、評価損益が見方を左右しやすい点が論点になります。
SBIリーシングサービスとゲームカードホールディングスは、時価総額が大きい一方でネットキャッシュ比率が1倍前後から1.5倍台に入っています。資産面の割安さだけでなく、事業モデルや利益の変動要因を確認する必要があります。
川岸工業、サンコー、アルチザネットワークスは、実質PERのマイナスが大きく出ています。資産面の割安さが強い一方、市場が慎重になる理由がどこにあるのかが重要です。利益の安定性、成長投資の方向性、還元方針などが確認ポイントになります。
太平製作所は時価総額が小さく、利回りも4%台です。小型株は売買の厚みが薄く、材料が出たときの動きが大きくなる一方、注目されにくい時間も長くなりがちです。
今村証券は、ネットキャッシュ比率が1倍超で利回りも3%台です。金融系はバランスシートの内訳で印象が変わりやすいため、資産・負債の構成を前提に確認するのが無難です。
わが投資術のスクリーニング
ネットキャッシュ比率1倍超と配当利回り3%以上という条件は、財務余力と還元水準の両面から候補を絞り込む方法として合理的です。
一方で、資金余力が大きいだけでは市場評価は変わりません。資金をどのように使い、収益力や資本効率をどう改善するかが、評価見直しの条件になります。この一覧を起点にして、詳細な企業調査をしていきます。


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