【ゴールドマン・サックスの見通し】2026年の日米株式市場、これまで当たってきたのかも検証

株式

ゴールドマン・サックスが、2026年の日米株式市場についての見通しを相次いで公表しています。日米ともにまだ上がるという強気(ブル)スタンスは維持されています。ただし、昨年までのようなバリュエーション頼みの上昇ではなく、これからは企業が実際に稼ぐ力(利益成長)が問われる相場になることがポイントです。

ゴールドマン・サックスの公式レポートや一次情報をもとに、米国株と日本株それぞれの最新見通しを整理します。そもそもゴールドマンの予想は当たってきたのかという、投資家なら誰もが気になるテーマも検証します。

米国株(S&P500)2026年3月時点の見通し

年末ターゲット7,600、12%のトータルリターンを想定

ゴールドマン・サックスのチーフ米国株ストラテジスト、ベン・スナイダー氏は2026年初に、S&P500の年末目標を7,600、トータルリターンで約12%と予測しています。2025年の18%、2024年の25%と比べると伸び幅は落ち着くものの、それでも4年連続で二桁リターンを見込むという強気な姿勢です。

その根拠として挙げられているのが、企業利益(EPS)の12%成長です。1株あたり利益は2026年に約309ドルに達すると見込まれており、今後の株価上昇は純粋に企業の稼ぐ力によってもたらされるという見立てです。テクノロジーセクターだけでなく、金融・ヘルスケア・通信サービスなども利益成長に貢献するとされており、特定の巨大IT企業だけが上がる相場から、より幅広い銘柄が参加する裾野の広い強気相場へのシフトが期待されています。

AIと再工業化が牽引役

2026年のテーマとして同社が特に注目しているのが、AIの本格活用フェーズへの移行です。これまでのAIインフラへの投資という段階から、企業がAIを使って実際にコストを下げたり収益を増やしたりする活用・収益化の段階に入ると見ています。また、米国の再工業化(リインダストリアライゼーション)や中小型株への物色拡大も重要なテーマとして挙げられています。

米国のGDP成長率については、市場コンセンサスの2.0%を上回る2.6%を予想。連邦準備制度(FED)による利下げも想定しており、健全な経済成長×金融緩和継続という組み合わせが株価を下支えするとしています。

高バリュエーションと地政学リスクへの警戒も増す

強気な見通しの一方で、ゴールドマンはリスクについても明確に言及しています。S&P500の予想PER(株価収益率)は22倍前後で、これは2021年の最高水準と並ぶ歴史的な高さです。企業利益が市場の期待を下回れば、株価の下落幅が大きくなりやすい状況です。

3月に入ってからは、中東情勢の緊迫化と原油価格の上昇を受けてFEDの利下げ開始時期を後ずれさせる見方も出ており、S&P500のフォワードPER想定を22倍から21倍に引き下げ、シナリオによっては6,300前後まで調整が入る可能性も示されています。ゴールドマン自身がベースシナリオでの強気を維持しつつも、下振れリスクが太ってきていると認識している点は要注意です。

豆知識:S&P500のPER22倍ってどのくらい高い?

PER(株価収益率)は今の株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標です。22倍という水準は、歴史的に見て上位数パーセントに入る割高な水準です。PERが高いときは、投資家が企業の将来利益に対して強い期待を抱いている状態を意味しますが、その期待が裏切られたときの下落も大きくなりやすいという特徴があります。

日本株(TOPIX)2026年3月時点の見通し

今後12カ月で10%のリターンを予想、構造的な強気姿勢を維持

日本株についても、ゴールドマンはオーバーウェイト(強気の組み入れ推奨)を維持しており、グローバルな確信銘柄リストの上位に日本株を挙げ続けています。チーフ日本株ストラテジストのブルース・カーク氏は、TOPIXの今後12カ月リターンを約10%と予想しています(2026年1月末時点)。

日本株に強気な理由として挙げているのは主に3点です。まず日銀の利上げを悪材料ではなくポジティブな政策正常化として評価している点です。長年にわたりマイナス金利下に置かれた日本では、金利正常化は景気が上向いている証拠として株式市場にプラスに働くとしています。次に、米国の再工業化が日本の産業ロボットや設備機器メーカーに追い風になるという見方です。そして3点目が、企業ガバナンス改革の継続です。資本効率の改善や自社株買いの増加が海外投資家を引きつける構造的な要因として機能しているとしています。

3月時点での修正点と注意点

ただし2026年3月には、中東情勢の緊迫化と原油高を受けて、TOPIXの3カ月・6カ月目標を引き下げる修正がありました。12カ月目標は維持されているものの、エネルギー輸入依存度が高い日本にとってオイルショック的な動きは業績へのダメージが大きく、近距離の目線では警戒が必要とされています。

また同社が明確に指摘しているのが、期待だけでは続かないという点です。日本株はTOPIX・日経平均ともにドル換算で年初来15〜16%高と、ほぼ横ばいの米国株を大きく上回るパフォーマンスを見せてきました。しかしここから先は、実際に企業がROE(自己資本利益率)を改善し、賃上げが消費につながり、政策が具体的に実行されるかどうかが問われると強調しています。

豆知識:TOPIXと日経平均の違いとは?

日経平均は東京証券取引所に上場する代表的な225銘柄の平均株価です。一方TOPIXは、東証プライム市場に上場するほぼすべての銘柄を時価総額で加重平均したもので、市場全体の動きをより広く反映します。ゴールドマンがTOPIXを重視するのは、日経平均がAI・半導体関連の値がさ株に左右されやすく、日本株全体の稼ぐ力を正確に評価しにくいためです。

日米の見通し比較まとめ

項目 米国株(S&P500) 日本株(TOPIX)
スタンス 強気(ブル)維持 強気(オーバーウェイト)維持
年末・12カ月目標 7,600(約12%上昇) 12カ月で約10%上昇
主な牽引役 EPS12%成長、AI活用、再工業化 ガバナンス改革、賃上げ、米国再工業化の恩恵
主なリスク 高バリュエーション、原油高、Fed後ずれ 原油高、米通商政策、政策実行力の検証
注目ポイント 利益成長で割高感を正当化できるか 期待から実績へのシフトが焦点

ゴールドマンの予想は過去に当たってきたのか

正直に言えば外れることも多いのが実態

2022年末にゴールドマンは2023年末のS&P500は4,000と予想しましたが、実際は4,769と約19%高い水準で年を終えました。2023年末には2024年末は5,100と予想しましたが、実際は5,800を超え、約14%の読み違いでした。

過去5年間で見ると、ゴールドマンの年末予想は実際の結果と比べて中央値で約14%低かったという分析もあります。つまり、強気ではあったものの、それ以上に株価が上昇してしまったケースが多かったのです。

より広い視点で言えば、ウォール街全体の市場予想を調査した研究によると、株式市場の方向性を正しく予測できたストラテジストは平均で約47%、つまりコインの表裏を当てるよりわずかに低い精度だったというデータもあります。金融のプロであっても、短期的な株価の方向性を一貫して正確に読むことは非常に難しいのが現実です。

それでも読む価値はある

だからといって、ゴールドマンのレポートを無視すればいいかというと、そうでもありません。同社の強みは、数字の正確さよりもどのリスクに注目すべきかという論点整理にあります。高バリュエーション、AI投資の回収不確実性、地政学リスクといった着眼点は、個人投資家が見落としがちな視点を補ってくれます。

また、年末の株価水準を外したとしても、経済成長×利下げ×AIという大きな相場の方向性については比較的正確に捉えてきた実績もあります。予想そのものを信じる・信じないではなく、どんなシナリオと、どんなリスクを想定しているかを読み取る情報源として活用するのが賢い付き合い方と言えるでしょう。

参考:ゴールドマンが示す主なシナリオ別株価水準(2026年3月時点)

ゴールドマンは単一の予測だけでなく、複数シナリオを示しています。ベースケースは年末7,600ですが、中程度の成長ショックが起きれば6,300程度、深刻なオイルショックが発生すれば5,400程度まで下落しうるとしています。逆に良好な環境が続けば8,000超えのシナリオも示されており、どのシナリオの確率が高いかを投資判断に組み込むことが重要です。

2026年3月の投資家が押さえておきたいポイント

ゴールドマン・サックスの2026年3月時点での見通しを一言でまとめると、強気は維持、ただし条件付きです。米国株は企業利益の成長という実力で割高感を正当化できるか、日本株は期待先行から実績の積み上げに移行できるかが、今後の相場の分岐点になります。

どちらの市場においても、ゴールドマンは無条件の全面強気ではなく、高バリュエーション・地政学リスク・政策の不確実性という三つのリスク要因を常に意識したうえでの強気を示しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました