ひふみプラス2025年11月レポート徹底解説。AI調整相場でも揺らがない投資思想とは。

ひふみ 株式

2025年11月の日本株市場は、「AI関連株の調整」「バリュー株の上昇」「インバウンド関連の売り」という複数の潮流が同時多発的に押し寄せ、投資家にとっては方向感をつかみにくい局面となりました。日経平均は大幅に下落したものの、TOPIXはバリュー株の強さに支えられ上昇。市場全体が「トレンドの転換点」に差し掛かっていることをうかがわせる、独特のムードに包まれた1ヶ月でした。

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そのような中でも、ひふみプラスは基準価額+0.96%と小幅ながらプラスを確保し、AI関連株への依存度が低い構造を生かして大幅下落を避けた一方、TOPIXの上昇幅を取り切ることはできませんでした。

ただこの結果より重要なのは、ひふみが「何を買い」「何を減らし」「どんな相場観を持っていたのか」です。本記事では、添付レポート内容をもとに、目次案に沿ってひふみプラスの投資判断を深掘りし、今の戦略をわかりやすく読み解きます。

1. 今月のひふみプラスはどう動いたのか

今月の基準価額は+0.96%。市場を振り返ると日経平均が-4.12%と下落しているため、ひふみは一定の防御能力を見せた形です。ただし、バリュー株が強かったためTOPIX(配当込み)は+1.42%と比較的堅調で、そこに対してひふみのリターンはやや届きませんでした。

その理由は、AI関連株が急落する一方、銀行や建設、不動産などのバリュー株が買われたという「資金の循環の偏り」にあります。ひふみはAIへの過度なリスクを取らず、むしろ企業価値を軸に投資を行うスタイルのため、AI急落局面では守備力を発揮しましたが、バリュー株の全面高に乗り切れなかった側面があります。

とはいえ、単に指数と比較するだけでは見えないのがひふみの面白さです。AI銘柄が調整し、バリュー株が上がるという環境変化を、ひふみはどのように受け止め、何を重視したのか。結論から言えば「短期の潮目に振り回されず、企業価値にこだわる」という姿勢を今月も貫いています。

2. 市場環境の要点

2025年11月は、一言でまとめるなら「主役交代の1ヶ月」です。AI関連株が市場の牽引役だった数ヶ月から一変し、今月はそのAI株が大幅調整。米国企業の人員削減や中国関連株の下落も追い打ちをかけ、グロース株は総じて冴えない展開になりました。

一方で自動車、銀行、建設、不動産といったバリュー株には強い買いが集まり、TOPIXが最高値を更新する場面もありました。さらに、月を通して日替わりで物色テーマが変化し、投資家は「どこに資金が向かうのか」を読みにくい状態が続きました。通常、こうした相場は短期トレード型の投資家に有利ですが、長期投資家にはストレスの多い展開です。

しかし、ひふみプラスはこうした短期波動の影響を受けつつも、投資の軸はぶらさず、「長期で勝つ企業」を粛々と選別しています。市場騒動とは距離を置き、自らの確信度に基づいて企業を評価し続ける姿勢が、レポート全体から伝わってきます。

3. ひふみプラスの現在のポートフォリオ構造

今月の構造変化で最も注目すべきは、組入銘柄数が90→83へ減少したことです。銘柄数削減はひふみの象徴ともいえる動きで、企業価値に対する確信度を高めた結果でもあります。単に銘柄を減らしただけではなく、「伸びると判断した企業をより厚く持つ」という方向へ舵を切っています。

ポートフォリオ全体を見ると、大型株比率は95.40%と極めて高く、現金比率は1.04%とほぼフルインベスト状態。海外株はMetaの1.52%のみで、実質的に国内企業への投資に全集中している構造です。

豆知識: ひふみの「現金比率が低い」のは弱気ではなく強気の証。成長すると信じる企業に資金を預け、資産の遊休を避けるという哲学に基づいています。

一見すると偏った構造にも見えますが、ひふみにとって重要なのは「何にどれだけの確信を持っているか」です。今月の構造からは、国内企業への信頼と選別投資の徹底がうかがえます。

4. 今月ウェイトを増やした代表テーマ:総合商社(伊藤忠・丸紅・三井物産)

今月もっともダイナミックだった動きが、総合商社3社へのウェイト増加です。伊藤忠商事、丸紅、三井物産の3社に絞って投資比率を上げており、「商社セクターが良い」という表面的な理由ではなく、各社が持つ個別の強みに着目しています。

伊藤忠は非資源ビジネスを中心に高い資本効率を誇り、自ら改善できる企業体質を持ちます。丸紅は戦略プラットフォーム型の事業構造にシフトしつつあり、資本効率の改善サイクルが継続中。そして三井物産は資源分野で強固な収益基盤を持ち、直近では豪州鉄鉱石事業への大型投資で長期成長を見据えています。

これら3社は単なる景気敏感株ではなく、「世界の構造変化に合わせて自らを変えてきた企業」。ひふみがウェイトを上げたのは、短期的な値動きよりも企業の戦略と実行力を評価した結果です。

5. 上位10銘柄から見るひふみの勝ち筋

組入上位10銘柄には、フジ・メディアHD(4.29%)を筆頭に、ソニー、伊藤忠、トヨタ、三菱UFJ、富士通、NECなど、複数業種が並びます。ここから浮かび上がるのは「安定収益を持ちながら、変革期にある企業を好む」というひふみの特徴です。

例えば、フジ・メディアHDは放送事業だけでなく、不動産収入やデジタル領域の成長余地を併せ持つ企業です。ソニーも音楽・映画・ゲームと複数の収益源を持ち、トヨタはモビリティカンパニーへの変革を進めています。富士通やNECは官公庁・金融向けの大型IT案件に強みを持ち、DX需要の追い風があります。

ひふみは、単に「人気のある企業」ではなく「構造改革によって企業価値が伸びるステージにある企業」を優先していることが、上位構成から明確に読み取れます。

6. この1ヶ月で何が変わったのか:売買・構造変化

今月の売買動向は非常にストイックでした。新規購入はほとんどなく、既存銘柄のウェイト調整と銘柄数削減に力を入れています。これは「幅広く持つより、確信のある企業に厚く投資したい」という戦略をより明確にした動きです。

AI関連株が急落した局面でも無理に買い下がらず、商社株の追加投資という形で、リスクをコントロールしながら中長期視点の強化を行っています。銘柄数を83にまで絞ったこと自体が、ひふみの投資判断の明確なメッセージであり、集中投資への覚悟を感じさせます。

7. 運用者コメントから読み解く投資哲学

運用責任者の藤野氏は、今月のレポートで「確信度に応じてウェイトを積極的に上げる」と述べています。これは単に強気という意味ではなく、「市場が理解していない価値を見つけ、その企業が変化を実現できるか」に投資するという姿勢です。

グロースかバリューかという区別を捨て、企業価値の向上につながる物語を持つ企業を重視すること。さらに、その物語が短期ではなく長期で効いてくると確信した瞬間にウェイトを上げること。これがひふみの投資思想の中心であり、市場騒動が起きてもぶれない理由です。

8. 今後の市場見通し:経済調査室・三宅氏の視点

市場見通しでは、世界経済に対する慎重ながらも前向きなトーンが示されています。米国は利下げ局面入りし、企業収益も堅調。日本も政権の成長志向が株式市場の追い風になる可能性があります。一方、中国は不動産バブル崩壊の影響が長引き、期待がしぼむ局面が続きそうです。

世界株式市場は、短期的な調整を挟みながらも上昇基調を維持するとの見立てで、2026年の中間選挙を控えた米国の政策動向が鍵となります。特に景気刺激策が実施されれば、株式市場全体が恩恵を受ける可能性があります。

9. 投資家がチェックすべきリスクポイント

注意すべきリスクは複数あります。ひふみのポートフォリオが国内大型株に強く寄っている点、商社株比率が上昇している点、海外株がMeta1銘柄に限定されている点などです。また、AI関連株を抑えているため、AI相場が再び盛り上がった場合に指数との乖離が出る可能性もあります。

ただし、これらはひふみの投資思想と切り離して理解することはできません。短期的な流行やテーマ株への依存を避け、企業価値に基づいた投資を行うという姿勢の結果であり、そこに共感できるかどうかが投資判断の分岐点になります。

10. ひふみプラスを保有し続けるか判断するためのチェックリスト

ひふみプラスは、指数との短期差ではなく「企業価値の積み上がり」を重視する投資家に向いています。変革期にある企業の成長を信じ、銘柄数を絞った集中投資に共感できるなら、長期の運用パートナーとして非常に魅力的です。

逆に、短期で指数に勝ち続けることを求める人、大型株偏重が気になる人、テーマ型投資を好む人にはミスマッチになる可能性があります。自分の投資スタイルとの相性を考えることが何より重要です。

11. 今月のレポートで特に読むべきページまとめ

特に重要なのは1ページ(パフォーマンス概要)、3ページ(組入上位10銘柄)、6ページ(運用責任者コメント)、7ページ(市場見通し)です。

これらを読むだけでも、ひふみの今月の判断軸と投資の方向性が理解できます。

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