サンリオ(8136)は、ここ数年で株価も業績も一気に別次元に飛びました。ハローキティにクロミ、マイメロディなど、キャラクタービジネスの成功例としては教科書級です。
グッズを買ったりyoutubeを見たりと日常でよくお世話になるので、検証をしてみました。
ネットキャッシュは1,000億円超、自己資本比率は67パーセント台、ROEは約49パーセント、ROICは試算ベースで100パーセント超という異常値です。一方で、PERは26〜30倍、PBRは11倍超でかなり強気の水準です。

サンリオの現在地をざっくり整理する
まずは簡単に数字の全体像を押さえます。単位は、百万円です。
2025年3月期実績は、売上高144,904、営業利益51,806、純利益41,731、EPS176.6です。わずか2年前の2023年3月期は、売上高72,624、営業利益13,247、純利益8,158、EPS33.7でした。売上は約2倍、営業利益は約4倍、EPSは約5倍という、普通の日本企業では見ないスピードで利益が増えています。
2026年3月期会社予想は、売上184,300、営業利益70,200、純利益49,400、EPS204.26と、さらに増収増益の計画です。この数字だけ見ると「絶好調過ぎて怖い」と感じるレベルで、あなたが「割安に見える」と感じてしまうのも無理はありません。
財務安全性 ネットキャッシュ1,000億円超の鉄壁バランスシート
1 ネットキャッシュと自己資本比率
2026年3月期第2四半期時点の貸借対照表は次の通りです。単位は、百万円です。
| 指標 | 数値 | コメント |
|---|---|---|
| 総資産 | 214,108 | 前期末202,406から+11,702 |
| 自己資本 | 144,530 | 親会社株主分143,879+非支配株主持分651 |
| 自己資本比率 | 67.2% | 前期末52.9%から急改善 |
| 現金及び預金 | 124,073 | 前期末118,976から増加 |
| 有利子負債合計 | 17,264 | 短期5,133+長期4,311+CB等7,820 |
| D/Eレシオ | 約0.12倍 | 17,264 ÷ 144,530 |
| ネットキャッシュ | 106,809 | 124,073 − 17,264 |
この数字を見て分かる通り、サンリオは有利子負債を十分に上回る現預金を持つ、ネットキャッシュ企業です。ネットキャッシュ106,809は自己資本144,530の約74パーセントに相当し、借金依存とは全く逆の超保守的な財務構造です。
問題があるとすれば、現金を抱え過ぎていて資本効率が低下する方向のリスクの方です。
2 営業キャッシュフローと純利益
直近2期のキャッシュフローは以下の通りです。単位は、百万円です。
| 期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | 現金期末 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024.3 | 22,100 | -3,400 | 15,700 | 67,900 | 17,584 |
| 2025.3 | 40,800 | 8,200 | -16,800 | 102,200 | 41,731 |
2年平均で見ると、営業CFは31,450、純利益は29,658で、営業CFが純利益を少し上回っています。
3 財務は安定
自己資本比率67.2%、ネットキャッシュ1,000億円超、営業CFが直近2年平均で純利益を上回っているという事実から、財務安全性はかなり高いと評価して差し支えありません。
収益性 ROICが100パーセント超という異常値をどう見るか
1 営業利益率とROE
2025年3月期の収益性指標は次の通りです。単位は、百万円です。
| 指標 | 数値 | コメント |
|---|---|---|
| 売上高 | 144,904 | |
| 営業利益 | 51,806 | |
| 純利益 | 41,731 | |
| 営業利益率 | 35.8% | 51,806 ÷ 144,904 |
| ROE | 48.6% | 会社開示値 |
営業利益率35.8%は、日本企業としてはほぼ最上位グループです。ROE48.6%も同様です。ここだけ切り取ると化け物級に稼ぐ会社です。
成長性 直近2年はバブル級に伸びているが
1 売上と利益とEPSの伸び
| 期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 72,624 | 13,247 | 8,158 | 33.7 |
| 2024.3 | 99,981 | 26,952 | 17,584 | 73.1 |
| 2025.3 | 144,904 | 51,806 | 41,731 | 176.6 |
2023.3から2025.3までの2年で、売上高の年率成長率は約41.3%、営業利益は約97.8%、EPSは約128.9%です。数字だけ見れば、バブル級の伸び方です。
2 会社計画と3年後の見通し
2026.3期会社予想は、売上184,300、営業利益70,200、純利益49,400、EPS204.26です。ここから計算すると、2025.3から2026.3への1年で、売上は約27.2%、純利益は約18.4%、EPSは約15.7%の伸びです。つまり、爆発的な伸びから、やや落ち着いた中高成長にシフトしているイメージです。
豆知識 キャラクタービジネスの典型パターン: キャラクターIPは、ブレイクした直後の数年は利益率が跳ね上がり、その後は一定レンジで推移するか、人気の入れ替わりで波打つことが多いです。平均的には「急成長期」と「成熟期」を分けて考える必要があります。
割安性 PERとPBRはかなり高い
| 指標 | 数値 | 計算 |
|---|---|---|
| PER 2025実績 | 約30.1倍 | 5,317 ÷ 176.6 |
| PER 2026予想 | 約26.0倍 | 5,317 ÷ 204.26 |
| PBR 2025.6時点 | 約11.4倍 | 5,317 ÷ 467.7 |
営業利益率が35パーセント超と桁違いに高いため、PERとPBRが非常に高くなっていることです。
強気と慎重のシナリオ
強気シナリオ 高成長が数年続くと仮定する場合
強気派の前提は単純です。現在の高い営業利益率が数年間維持され、売上とEPSが年率10〜15パーセント程度で伸び続けるなら、PER26倍でも「極端に割高とは言えない」という考え方です。特に、今のEPS水準が3年後にさらに大きく増えているなら、PBR11倍もある程度正当化されてしまいます。
この立場を取るなら、次のように動くべきです。
- ここからさらに大きな上昇を期待して追いかけ買いするのではなく、調整局面で段階的にポジションを作る。
- 少なくとも今後2期連続で営業利益率30%以上、ROE30%以上を維持できているかを必ずチェックする。
- 悪材料や一時的な利益鈍化で株価が急落したときに、収益性とCFが崩れていないなら淡々と買い増す覚悟を持つ。
慎重シナリオ 高マルチプルと人気リスクを重く見る場合
慎重派の立場に立つなら、今の株価で大きなポジションを取るのは妥当ではありません。
慎重シナリオでの実務的な行動はこうなります。目安株価は4,000円くらいでしょうか。
- 自分なりのバリュエーションの閾値を決める。例えば「PER20倍以下かつPBR8倍以下、PSR0.7倍以下」のような条件を明文化する。
- その条件を満たすまでは一切買わず、ウォッチリストに入れるだけにとどめる。
- 有価証券報告書や説明会資料で、地域別、キャラクター別、ライセンシー別の売上割合と契約集中度を確認し、それが把握できるまでは資金を入れない。
一方で、もしこれからも高成長が何年も続いた場合、かなりの上昇の機会を逃すことになります。この機会コストを自分で許容できるかどうかがポイントです。


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