スパークス「厳選投資」の2025年11月レポートは、まさに集中投資の強みと弱みが同時に露呈した1ヶ月と言える内容でした。TOPIXが+1.42%と堅調に推移した一方で、当ファンドは▲1.73%とアンダーパフォーム。理由はシンプルですが、背景には「市場環境の変化」「セクター間の温度差」「ファンドの構造的特徴」の3つが複雑に絡み合っています。

- 1. 今月の結論 ファンドはなぜTOPIXをアンダーパフォームしたのか
- 2. 市場環境まとめ 11月の日本株は何が起きたのか
- 3. パフォーマンス詳細 寄与した銘柄/足を引っ張った銘柄
- 4. ポートフォリオの現在地 たった22銘柄に絞り込む特化型の実像
- 5. 運用哲学 スパークスが採用する厳選投資の基準を読み解く
- 6. 今月の最大論点 AIバブルの揺り戻しに集中投資型の弱点が露呈したのか
- 7. リスクの再点検 特化型ファンドならではの注意点
- 8. 手数料・信託報酬の実質負担 1.804%をどう評価するか?
- 9. このファンドを保有すべき投資家/避けるべき投資家
- 10. レポートの重要ページまとめ 最短で理解するためにどこを読むか
1. 今月の結論 ファンドはなぜTOPIXをアンダーパフォームしたのか
結論から言うと、今月のアンダーパフォーマンスは「ファンドの集中投資スタイル」と「市場の気まぐれ」が正面衝突した結果です。特にソフトバンクグループや半導体関連銘柄の下落が痛手となり、逆に市場で買われたバリュー株や金融株の恩恵は限定的でした。
このズレは運用が失敗したのではなく、どこに比重を置くかという投資哲学の差といえます。22銘柄に絞り込んだポートフォリオでは、伸びると判断した企業の変動を強く受けます。今月は、その構造がマイナスに働いた月でした。
2. 市場環境まとめ 11月の日本株は何が起きたのか
11月相場の象徴は「AIバブルの一服とバリュー復権」です。AI関連株に過熱感が出ていたことに加え、米国市場では決算シーズンを迎え、半導体関連は全体的に調整しました。特に上旬はグロース系が軟調、中旬以降は中国リスク再燃でインバウンド関連が売られました。
そうした中で堅調だったのが金融・素材・自動車などのバリュー株です。さらにNVIDIAの決算が市場に安心感を与えたことで、月後半には反発も見られましたが、ファンドの主戦場はあくまで厳選銘柄であり、市場全体の復調からの恩恵は限定的となりました。
3. パフォーマンス詳細 寄与した銘柄/足を引っ張った銘柄
今月の寄与度を銘柄別に見ると、プラスとマイナスの明暗がはっきり分かれました。
- プラス寄与:オリックス、セブン&アイ、ソニーグループ
- マイナス寄与:ソフトバンクグループ、日立製作所、東京エレクトロン
オリックスは好業績を背景に堅調に推移し、セブン&アイもインフレ環境下で安定した収益を確保。一方、ソフトバンクグループは投資先の評価変動が重石となり、東京エレクトロンは世界的な半導体サイクル調整の影響を受けました。
厳選投資は「勝つ企業を深く持つ」戦略ですが、その裏返しとして「変調時の痛みも深くなる」ことを改めて実感させる月となりました。
4. ポートフォリオの現在地 たった22銘柄に絞り込む特化型の実像
このファンドの最大の特徴は、組入銘柄数が22しかない点です(レポートp2)。これだけ絞り込んだポートフォリオを運用しているファンドは珍しく、事実として上位5銘柄だけでポートフォリオの約50%弱を占めます。
例えば、オリックスは14.9%、ソニーGは9.3%、三井住友FGは8.6%。この集中度は一見するとリスクにも見えますが、ファンド側は経営が優れていて収益構造が強固な企業に深く張るという哲学に基づいています。
豆知識:組入銘柄数が少ないファンドは「銘柄選定能力そのもの」がファンドの価値を決めます。広く薄く持つインデックスとは真逆の世界観です。
業種別の配分を見ると、電気機器(25.2%)とその他金融(15.0%)が大きな比率を占めており、日本の製造業・金融業への評価が高いことが分かります。
5. 運用哲学 スパークスが採用する厳選投資の基準を読み解く
レポート4ページに示されている投資基準は、驚くほどシンプルでありながら本質を突いています。ファンドが重視するのは「本当に強い企業」です。そして強さの定義は、以下の4要素に凝縮されています。
- シンプルで理解しやすく、持続可能なビジネスであること
- 競争優位の源泉となる強固な参入障壁があること
- 高ROE、強いキャッシュフロー、健全な財務があること
- 資本配分を合理的に行える経営陣であること
特に最後の「資本配分力」はスパークスが一貫してこだわるテーマで、内部留保するべきか、投資すべきか、株主還元すべきかを判断できる経営チームに投資するという姿勢が鮮明です。
6. 今月の最大論点 AIバブルの揺り戻しに集中投資型の弱点が露呈したのか
今月多くの投資家が抱いた疑問は「集中投資型はAI調整局面に弱いのか?」という点でしょう。実際、半導体関連やソフトバンクGが下落すれば、比率が大きいファンドは直撃を受けます。しかし重要なのは、これが構造的な弱みなのか、それとも一時的な逆風なのかという見極めです。
レポートでは、AI関連の調整は過熱感の整理であり、長期トレンドが崩れたとは見ていません。むしろ、さらに強いプレイヤーと弱いプレイヤーの選別が進む局面と捉えています。つまり、今回の調整は「厳選投資の出番」ともいえるのです。
市場全体で見れば、内需・金融は堅調で、半導体は揺れながらも長期テーマとして強さが残る。そこでファンドは、短期のノイズではなく構造的成長力に賭け続けています。
7. リスクの再点検 特化型ファンドならではの注意点
集中投資には当然リスクがあります。レポート6〜7ページでは、投資リスクとして以下が強調されています。
・上位数銘柄の株価変動が基準価額に与える影響が大きいこと
・電気機器の比率が高く、半導体サイクルに影響を受けやすいこと
・市場急落時の機動性が低下する可能性があること
これは短所のように見えますが、長期的に見ると「集中だからこそ成果を最大化できる」メリットと表裏一体です。インデックスのような分散では到達できないリターンを狙う以上、揺れ幅は必然といえます。
8. 手数料・信託報酬の実質負担 1.804%をどう評価するか?
信託報酬1.804%はアクティブファンドとしても高めですが、22銘柄の深掘り分析を行う少数精鋭型である点を踏まえると、投資家が「価値を感じるかどうか」で評価が分かれる部分です。
年間の回転率も低く、頻繁に売買するタイプではないため「長期で経営者の価値創造に賭ける」という性質上、コストがパフォーマンスに与える影響は感覚以上に小さくなる傾向にあります。
9. このファンドを保有すべき投資家/避けるべき投資家
厳選投資は、以下のような投資家に向いています。
・短期的な値動きより、優れた企業の長期成長に賭けたい人
・集中投資による揺れ幅を許容できる人
・企業分析が好きで、経営者の質を重要視する人
逆に以下のタイプは相性が良くありません。
・毎月安定したパフォーマンスを求める人
・セクター偏重のリスクが気になる人
・指数連動型の滑らかな値動きを好む人
ファンドの良し悪しではなく、投資家の価値観との相性が何より重要です。
10. レポートの重要ページまとめ 最短で理解するためにどこを読むか
忙しい読者向けに、今回のレポートで必ず読むべきページを整理すると次のとおりです。
・p1:運用状況・パフォーマンスの要点
・p2:組入銘柄22の構造とセクター配分
・p4:市場環境と運用者コメント(最重要)
・p4〜5:投資哲学と銘柄選定方針
この4箇所を押さえれば、ファンドの今月の動きと意図をほぼ理解できます。

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