スモール・モンスターズ・ジャパンが選んだ10社を深掘り!中小型株ファンドの組入銘柄

中小型成長株オープン スモール・モンスターズ・ジャパン 投資信託

SBI岡三アセットマネジメントが運用する中小型成長株オープン(愛称:スモール・モンスターズ・ジャパン)の2026年3月末時点の月次運用レポートをもとに、組入上位10銘柄を一つひとつ深掘りしていきます。それぞれの会社がどんなビジネスを展開し、なぜファンドに選ばれているのか、初心者の方にもわかりやすく解説します。

まずファンドの概要を簡単に紹介すると、スモール・モンスターズ・ジャパンは2014年3月に設定され、国内の中小型・新興市場株の中から高い技術力優れた商品開発力特徴あるビジネスモデル事業構造の改革に着目して銘柄を厳選するアクティブファンドです。2026年3月末時点の基準価額は50,645円で、設定来の分配金再投資ベース騰落率は約406%という長期の実績を持っています。組入銘柄数は36銘柄と集中投資型で、上位10社だけでポートフォリオの約44%を占めます。では、その10社をじっくり見ていきましょう。

第1位 扶桑化学工業(組入比率5.3%)

リンゴ酸と半導体研磨剤のグローバルニッチトップ企業

扶桑化学工業は、食品・飲料向けのリンゴ酸やクエン酸といった果実酸と、半導体製造に不可欠な超高純度コロイダルシリカという2つのニッチ市場で世界トップクラスのシェアを持つ化学メーカーです。

コロイダルシリカとは何かというと、シリコン(ケイ素)の超微粒子を液体中に均一に分散させた素材で、半導体ウエハを極めて滑らかに磨くCMP(化学的機械的平坦化)スラリーの原料として使われます。スマートフォンやAIサーバーに搭載される最先端の半導体チップを作るには、髪の毛の数千分の1以下という超微細な回路を形成する必要があり、このプロセスに扶桑化学工業のコロイダルシリカが必要とされています。2026年3月期第3四半期時点では売上高が前年同期比10.5%増となっており、特にアジア向けの販売が好調です。

豆知識:グローバルニッチトップ企業100選とは?

扶桑化学工業は経済産業省が2014年に認定したグローバルニッチトップ企業100選に選ばれています。これは、世界市場でニッチ分野のトップシェアを持ちながら、国際競争力を持つ中堅・中小企業を表彰するものです。日本には意外と多く、世界で一番の製品を持つ中小企業が存在しているのです。

第2位 西華産業(組入比率5.1%)

三菱重工の代理店として発電設備を支える独立系機械商社

西華産業は、プラント、環境装置、電子機器などさまざまな機械設備の販売・輸出入を手がける独立系の機械総合商社です。特に発電設備(エネルギー)分野に強みを持ち、三菱重工業との関係が深いことで知られています。

商社といっても単なる仲介業者ではなく、発電所や産業プラントの保守・メンテナンスまで一貫して手がけるエンジニアリング能力が収益の安定を支えています。2025年度上期(2025年9月期)の売上高は前年同期比16.4%増の518億円、営業利益も11.7%増と堅調でした。国内外の電力需要が高まる中、火力発電設備のメンテナンス需要はすぐには消えない安定事業です。2024年には台湾法人を設立するなど海外展開も積極的です。

第3位 エクシオグループ(組入比率4.6%)

通信インフラを支え続ける電気通信工事の大手

エクシオグループは、通信キャリア向けの工事、都市インフラの整備、システムソリューションの3つの柱で構成される電気通信工事会社です。光ファイバーや5G基地局などの通信インフラ整備を担うため、デジタル社会が進む限り仕事がなくなりません。

日本全国の通信工事を手がける実績があり、つなぐエンジニアリングを標榜して社会インフラを陰から支えています。5G普及やデータセンター需要の拡大により、通信インフラへの投資需要は中長期的に旺盛と見込まれており、その恩恵を直接受ける企業です。内需型ビジネスであるため、円安や海外リスクの影響を受けにくいという安定性もファンドに評価されているポイントと考えられます。

第4位 オルガノ(組入比率4.5%)

半導体製造に欠かせない超純水を作る総合水処理エンジニアリング会社

オルガノは、東ソーグループの総合水処理エンジニアリング会社です。半導体製造装置向けの純水・超純水の製造装置で業界大手としての地位を持ち、電力向け純水製造装置にも強みがあります。

半導体ウエハを洗浄するには、不純物がほぼゼロという超純水が必要です。この水の純粋さは水道水を100万倍に薄めたような純度とも表現されるほどで、これを安定供給するシステムを作るのがオルガノの得意とするところです。半導体工場を新設・増設する際にはオルガノのような水処理企業が必ず必要となるため、半導体産業の設備投資と連動した成長が期待されます。

豆知識:超純水ってどれくらい純粋?

半導体製造に使われる超純水は、1リットルあたりの微粒子数が数個以下、電気抵抗率が18.2メガオームという驚異的な純度です。これほど純粋な水は自然界には存在せず、専用の装置を使って人工的に作り出すしかありません。一般的な精製水や蒸留水とは全くレベルが異なるのです。

第5位 大栄環境(組入比率4.4%)

廃棄物の収集から再資源化まで手がける環境インフラ企業

大栄環境は、兵庫県神戸市に本社を置き、廃棄物の収集運搬・処理処分・再資源化を手がける廃棄物処理の専門企業です。全国73カ所の事業拠点を持ち、産業廃棄物の最終処分場や焼却施設などを運営しています。

廃棄物処理は地域密着型で許認可が必要な参入障壁の高いビジネスです。最終処分場は新設が難しいため、既存の施設を持つ企業の希少価値は高まる一方です。さらに近年は廃プラスチックの再資源化など、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への注目が高まっており、廃棄物を資源に変えるビジネスとしての成長性も期待されます。環境規制が強まるほど需要が増すという、逆張り的な強さを持つ業種です。

第6位 イノテック(組入比率4.3%)

半導体設計ソフトとテスターを2本柱に持つ半導体商社兼メーカー

イノテックは、半導体設計用のEDAソフトウェア(電子設計自動化ツール)と半導体テスター(検査装置)を2本柱に持つユニークな企業です。単なる商社ではなく、専用LSIの設計や車載システム開発も子会社で行う商社+メーカーのハイブリッド型です。

2026年3月期第3四半期では売上高が前年同期比9.4%増、営業利益は78.6%増と大幅な業績改善を果たしており、通期業績予想も上方修正されています。生成AIブームを背景にAI向け半導体の需要が拡大しており、その設計・検査を担うイノテックへの恩恵が広がっています。半導体サプライチェーンの川上(設計・検査ツール)という目立ちにくい場所で稼ぐ企業です。

第7位 キッツ(組入比率4.1%)

国内最大手の総合バルブメーカーで、水素・半導体分野にも展開

キッツは、KITZブランドのバルブ(流体の流れを制御するための弁)を中心に、9万種類を超える製品ラインナップを持つ国内最大手の総合バルブメーカーです。ステンレス製バルブでは国内トップシェアを誇り、世界でもトップ10入りする規模を持っています。

バルブというと地味に聞こえますが、石油化学プラント、水処理施設、半導体製造装置、さらには水素ステーションまで、あらゆる産業インフラに不可欠な部品です。特に注目は、水素社会に向けた高圧水素対応バルブの開発です。水素あるところにキッツをスローガンに掲げ、脱炭素分野での成長を狙っています。2025年12月期は売上高・営業利益ともに増収増益を達成しており、2026年12月期はさらに積極投資を加速させる方針です。

第8位 アズビル(組入比率4.0%)

ビルのオートメーションと工場の計測・制御で稼ぐ精密機器メーカー

アズビルは、旧・山武(やまたけ)ホールディングスとして知られるオートメーション専門メーカーです。ビルの空調・防災・防犯システム(BA事業)と、工場・プラントの計測・制御システム(AA事業)を2本柱に持ちます。

建物の省エネ管理、工場の自動化、データセンターの空調最適化など、カーボンニュートラルの実現に直結する製品群を持つのが強みです。2024年度の実績では売上高3,003億円、営業利益414億円、営業利益率13.8%という高収益体質を示しました。2030年度を見据えた長期目標として売上高4,200億円、ROE15%を掲げており、東南アジアのデータセンター市場への拡大も本格化させています。

豆知識:アズビルの原点人間の苦役からの解放

アズビルの創業者の想いは人間を機械的な労働から解放することにありました。100年以上前から変わらぬ人を中心とした発想が、今日のビルオートメーションや工場自動化技術の礎となっています。単なる機器メーカーではなく、人が快適に働ける環境を作るという哲学が製品に宿っているのです。

第9位 名村造船所(組入比率3.4%)

大型商船を建造する中手造船所で、海運市況の回復が追い風

名村造船所は、大阪市に本社を置く中堅造船会社です。佐賀県伊万里湾に建設した伊万里事業所を主力拠点とし、ケープサイズバルクキャリア(大型バラ積み船)やVLCC(超大型タンカー)など大型商船の建造を得意としています。

近年の世界的な資源輸送需要の高まりと、新造船市場の活況が造船株全体を押し上げています。中東情勢による原油・資源輸送への注目や、老朽船の代替需要も追い風です。かつて国内造船業は長期低迷を続けていましたが、2020年代に入ってから市場環境が大きく変わり、手持ち工事残高(受注残)の積み上がりが続いています。中長期的な業績の視界が開けてきた注目セクターの一つです。

第10位 アジアパイルホールディングス(組入比率3.3%)

建物の基礎を担う杭メーカーで、国内外の建設需要を取り込む

アジアパイルホールディングスは、建物を支える基礎工事に使うコンクリート杭・鋼管杭の製造・施工・販売を手がける総合基礎建設企業です。世界に通じる基礎を造るという企業理念を掲げ、日本国内にとどまらず東南アジア(ASEAN)への展開を積極的に進めています。

マンションや工場、インフラ施設を建てる際に、建物の基礎杭は必ず必要です。特に軟弱な地盤が多い日本や東南アジアでは、杭基礎の需要は恒常的に存在します。2026年3月期は増収増益の見通しで、業績は順調に拡大しています。ASEAN諸国の都市化・経済成長とともに需要が広がる事業モデルであり、縁の下の力持ちとして社会インフラを支える企業です。

10銘柄を並べてわかること:ポートフォリオのテーマを読み解く

10社を俯瞰すると、スモール・モンスターズ・ジャパンのファンドマネージャーが何を重視して銘柄を選んでいるかが見えてきます。

テーマ 該当銘柄
半導体・AI関連(直接・間接) 扶桑化学工業、オルガノ、イノテック、キッツ
エネルギー・インフラ 西華産業、エクシオグループ、アズビル
環境・循環型経済 大栄環境
海外成長(造船・アジア建設) 名村造船所、アジアパイルホールディングス

半導体関連が4社と最も多いのは、AIやデータセンターの拡大という大きな潮流を意識したものです。しかし注目すべきは、直接的な半導体メーカーではなく、半導体を作るために必要な素材・装置・インフラを手がける企業を選んでいる点です。競争が激しい完成品ではなく、必要不可欠な縁の下の力持ちを選ぶのが、このファンドの独自視点といえます。

また、エネルギー・インフラ系の3社はいずれも内需型で業績の安定性が高く、市場が荒れる局面でもポートフォリオ全体のブレを抑える役割を担っています。

2026年3月の市場環境とファンドの今後の方針

2026年3月は、米国とイスラエルによるイランへの攻撃をきっかけに中東情勢が悪化し、ホルムズ海峡経由の原油・天然ガス供給に懸念が広がりました。日本はエネルギー資源の中東依存度が高いため、国内株式市場も大きく下落し、スモール・モンスターズ・ジャパンの基準価額も1カ月で14.89%下落しました。参考指数(TOPIX Small配当込み)の10.21%下落を上回る下げ幅となっており、小型株特有の値動きの大きさが表れた月でした。

こうした状況を受け、ファンドマネージャーは今後の方針として外需株の組入比率を引き下げ、業績の安定性が高い内需株へ資金をシフトする方針を示しています。中東情勢が最悪期を越えれば株式市場は上昇基調に戻ると見ており、今回の調整で過熱感が冷めたことを中長期的には肯定的に捉えています。

投資に関するご注意:

本記事は特定のファンドや銘柄への投資を推奨するものではありません。投資信託は元本が保証されるものではなく、基準価額の下落により損失が生じる可能性があります。投資の判断はご自身の責任において行い、必要に応じて専門家にご相談ください。また、本記事の情報は2026年3月31日時点の月次運用レポートをもとにしており、その後の状況変化は反映されていません。

名前を知らなくても世界を支えている企業たち

スモール・モンスターズ・ジャパンの組入上位10社は、どれも一般消費者にはなじみが薄い企業ばかりです。しかし私たちが使うスマートフォン、乗る電車、住む家、飲む水、そして捨てるゴミに至るまで、これらの企業のビジネスが密接に関わっています。

知名度が低い=価値が低いではないのが中小型株の面白さです。むしろ、一般に知られていないからこそ市場に見過ごされた割安な成長株が眠っていることがあります。ファンドマネージャーが足で稼いでリサーチし、発掘してきた銘柄たちを通じて、普段は見えない日本経済の縁の下の力持ちを知ることができました。

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