バフェット指数200%超え常態化はなぜ?機能停止?世界版指数とその意味

株式

近年、米国株式市場で「バフェット指数(株式時価総額 ÷ GDP)」が200%を超えるのが当たり前になっており、「割高=暴落リスク」のシグナルとしては機能していないと感じています。

その根本には、指標そのもののロジックが変わったわけではなく、環境変化が指数の解釈を揺さぶっている原因があるからと考えています。

本記事では、まずバフェット指数の問題点を整理し、次に「世界版バフェット指数」を用いる意義と限界、最後に100%超えが常態化したときの見方を再定義します。

1. バフェット指数が暴落予測指標として効かなくなった理由

まず、なぜバフェット指数が過去数年で機能を失ったように見えるのか、主な論点を整理します。

1.1 計算に用いられる数値自体は信頼できるか?

バフェット指数の分子は上場株式の時価総額、分母は名目GDPです。いずれも公的な統計であり、誤差は限定的です。したがって、「数字が怪しいから指数が使えない」というよりも、数字の意味する関係性そのものが変化したと考えるべきです。

1.2 構造的・環境的変化ゆえの乖離

  • 金融緩和と超低金利:2010年代以降、FRBなど各国中央銀行が量的緩和(QE)を実施。国債利回りが極端に低下し、「株しか選択肢がない(TINA)」環境が続いた。
  • グローバル企業化:上場企業の収益の多くが海外事業に依存しており、GDP(国内経済)との対応関係が崩れた。
  • 無形資産経済の台頭:GAFAなどの巨大テック企業はデータ・知財・ブランドなどGDPに計上されにくい価値で成長している。
  • 流動性と政策の影響:コロナ禍での財政出動とマネー供給が直接市場へ流れ、時価総額を押し上げた。

こうした構造変化により、「指数が高い=暴落前兆」という過去の経験則が機能しづらくなっているのです。

2. 世界版バフェット指数(世界の時価総額 ÷ 世界GDP)という視点

では、アメリカに限らず、世界全体で「時価総額 ÷ GDP」を見たらどうなるか。国境をまたぐ企業活動を考慮する意味で、こちらの方が実態に近い可能性があります。

2.1 世界の最新データ

2024年時点の公的データをもとにすると、以下のような水準が得られます。

  • 世界株式時価総額:約125.7兆ドル(World Federation of Exchanges)
  • 世界名目GDP:約110.5兆ドル(IMF WEO推計)

したがって、2024年の世界版バフェット指数は約114%となります。

2019年以降の推移を並べると以下の通りです。

世界版バフェット指数(%)
2019 108
2020 135
2021 132
2022 106
2023 106
2024 114

パンデミック後の緩和局面で急騰し、2022年に一度調整。その後再び上昇しており、「100%超えが常態化」している状況です。

2.2 世界版でも暴落予測には限界がある

  • 上場企業のみを対象としており、非上場・国有企業の経済活動を反映しきれない。
  • 為替換算や購買力平価(PPP)の違いで数値が変動する。
  • グローバル企業の利益は国境を超えており、GDP(国内生産)と乖離する。
  • 金利・流動性・マネー供給といった割引率の影響を反映していない。

つまり、「市場規模が経済規模を上回っている度合い」を長期的に測る指標としては有効でも、短期的な暴落予測には不向きです。

3. 「100%超え常態化」の意味をどう読むか

3.1 危険信号ではなく期待度メーター

かつては100%を超えると「割高・危険」とされましたが、現在では構造的に100%超えが普通になっています。つまり、「危険信号」ではなく「期待がどれだけ先行しているか」を測るメーターとして見るのが現実的です。

目安としては以下のように捉えられます。

  • ~100%:実体経済とバランスが取れた状態。
  • 100~120%:市場が成長期待をやや先取り。
  • 120~150%:楽観・過熱が強まるゾーン。

歴史的には150%を超えた水準(例:2000年ITバブル、2021年米国株高騰期)では、後に調整が起きやすくなっています。

3.2 他指標との併用で立体的に見る

  • 長期金利・実質金利:割引率の変化を確認する。
  • 企業利益成長率(EPS成長):株価の裏付けを測る。
  • 流動性指標(M2や中央銀行バランスシート):資金供給の圧力を把握する。
  • 信用スプレッドや地政学リスク:外的ショックの可能性を補う。

これらを組み合わせて「市場の過熱度」を判断するのが、2020年代以降の現実的アプローチです。

4. 「バフェット指数は壊れた」のではなく、時代が変わった

バフェット指数が200%を超えても暴落しない理由は、データが嘘だからではありません。資本市場と経済構造そのものが変化したからです。世界全体ではおおむね110%前後が新たな平常圏となり、100%を超えても直ちに危険とは言えません。

むしろ重要なのは、「どれだけ経済の先を市場が織り込んでいるか」を測る温度計として読むことです。100%を超えた状態は「危険」ではなく、「期待が熱を帯びている」シグナル。温度が上がりすぎたときに冷やす準備をしておく、のですが何年もこの値だとどうしたらいいかはわからないですね。

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