ライジング・サンが選んだ10銘柄、2026年3月版ポートフォリオを徹底解剖

スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド (愛称:ライジング・サン) 投資信託

スパークス・アセット・マネジメントが運用するスパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド(愛称:ライジング・サン)は、設定来の累積リターンが811%超(2026年3月末時点)という実績を持つファンドです。

その秘密は、市場が見落としている割安な優良企業を丁寧にすくい上げる運用哲学にあります。では、2026年3月末時点の組入上位10銘柄にはどんな企業が並んでいるのでしょうか?それぞれの企業がなぜ選ばれているのかを、事業内容や成長のポイントとともにわかりやすく解説します。

ファンド概要(2026年3月31日現在):

基準価額70,565円、純資産総額47.91億円、銘柄総数44銘柄。当月のパフォーマンスは-12.18%と厳しい結果でしたが、過去1年では+23.49%、過去3年では+50.59%と、ベンチマーク(東証グロース市場指数)を大幅に上回る長期実績を誇ります。

2026年3月版 組入上位10銘柄一覧

まず全体像を把握するために、上位10銘柄を一覧で確認しましょう。

順位 銘柄名 比率 市場 業種
1位 戸田建設 4.2% プライム 建設業
2位 東京建物 3.7% プライム 不動産業
3位 リンテック 3.5% プライム その他製品
4位 MARUWA 3.4% プライム ガラス・土石製品
5位 タクマ 3.4% プライム 機械
6位 横浜ゴム 3.3% プライム ゴム製品
7位 山陰合同銀行 3.2% プライム 銀行業
8位 ミスミグループ本社 3.2% プライム 卸売業
9位 ニプロ 3.1% プライム 精密機器
10位 PILLAR 2.9% プライム 機械

全10銘柄がプライム市場の企業です。業種は建設・不動産・素材・機械・金融・医療と幅広く、特定のテーマに偏らない分散の効いたポートフォリオが形成されています。それでは各銘柄を詳しく見ていきましょう。

第1位:戸田建設(4.2%)— 収益力が急改善した老舗ゼネコン

創業150年以上の歴史を持つ中堅ゼネコンの戸田建設が、堂々のトップ組入銘柄です。建設業というと地味なイメージがありますが、今の戸田建設は大きく変わりつつあります。

2026年3月期の第3四半期累計で、連結経常利益が前年同期比で約2.3倍に急拡大しました。長年の課題だった建設コスト上昇分の価格転嫁が進み、国内建築事業の完成工事総利益率が12%台まで改善してきています。さらに、2026年1月には長崎県五島市沖で日本初となる浮体式洋上風力発電所を本格稼働させました。環境・エネルギー事業という新たな収益の柱が育ちつつあり、建設業の枠を超えた成長ストーリーが評価されていると考えられます。

豆知識・浮体式洋上風力発電とは:

海底に固定するのではなく、海面に浮かべた装置に風車を設置する発電方式です。水深が深い日本近海でも設置できるため、再生可能エネルギーの切り札として注目されています。戸田建設はこの分野で先行しており、建設会社からエネルギー会社へと変身中です。

第2位:東京建物(3.7%)— 東京の再開発ラッシュを背負う名門デベロッパー

1896年創業という日本の近代的不動産業の草分けである東京建物が2位に入りました。八重洲・日本橋・京橋エリア(YNKエリアと呼ばれています)を重点エリアとした大規模再開発プロジェクトを複数同時進行させています。

特に注目されるのが東京駅直結の八重洲プロジェクトで、2026年秋に第一期オープンを予定しています。オフィスビルの賃貸収入という安定的な収益基盤を持ちながら、都市再開発による資産価値の向上も期待できる、守りと攻めを兼ね備えた銘柄です。金利上昇局面では不動産株が敬遠されがちですが、都心の一等地開発という強みは長期的な価値を持つと判断されているようです。

第3位:リンテック(3.5%)— 粘着技術でAI半導体を支える縁の下の力持ち

リンテックって何をしている会社?と思った方も多いかもしれません。シール・ラベル用の粘着紙や粘着フィルムを製造する企業ですが、実はAI時代の半導体製造に欠かせない素材メーカーです。

リンテックが製造するペリクルという部材は、半導体の回路原版(フォトマスク)をホコリや傷から守る防じん膜です。AI向け先端半導体の需要拡大に伴い、このペリクルの需要が急増しています。同社はAI向け先端半導体の製造過程で使われるペリクルの量産に約50億円を投資し、生産能力を大幅に引き上げています。日常生活ではほぼ見えないところで活躍する隠れたAI関連株といえます。

第4位:MARUWA(3.4%)— 江戸時代の陶芸家の家系が半導体素材世界大手に

MARUWAのルーツは江戸時代から続く陶芸家の家系というから驚きます。そのやきものの技術を進化させ、今では電子部品向けのセラミック素材メーカーとして世界的な地位を確立しています。

半導体・車載・情報通信向けのセラミック部品は、EVの普及や5G・6Gの展開、そしてAI向けサーバーの増加といった複数の成長トレンドに乗っています。2025年3月期の実績では、売上高が前期比16.7%増、営業利益が前期比35.9%増と高成長を継続しています。ROEも14%超と収益性が高く、技術力で世界と戦えるニッチトップ企業の典型例です。

豆知識・セラミックと半導体の関係:

セラミックは熱に強く、絶縁性が高いため、半導体部品の基板や絶縁材として不可欠です。スマートフォンからEV、AIサーバーまで、あらゆる電子機器に使われているため、需要が世界規模で拡大しています。MARUWAはこの分野で高いシェアを持つグローバル企業です。

第5位:タクマ(3.4%)— ごみを燃やして電気を作る廃棄物発電のリーダー

タクマは1938年創業のプラントエンジニアリング企業で、ごみ焼却プラント・水処理プラント・バイオマス発電プラントを手がけています。一見地味に思えますが、実はSDGsの観点から非常に注目される事業です。

日本全国の自治体が抱える廃棄物処理施設の老朽化問題は深刻で、今後20〜30年にわたる更新需要が見込まれています。タクマはこの市場で高いシェアを持ち、プラント建設後のアフターサービスで安定収益を確保するビジネスモデルが評価されています。2026年4月にはIHIの汎用ボイラ事業と統合し、熱源事業でのシェア拡大も図っています。

第6位:横浜ゴム(3.3%)— タイヤから1兆円企業へ躍進中

横浜ゴムといえばタイヤメーカーというイメージですが、中期経営計画YX2026では2026年度に売上収益1兆2,500億円、事業利益1,500億円という高い目標を掲げています。当初の計画から上方修正されるほど業績が好調で、まさにうなぎ昇りの成長を目指しています。

EV向けの専用タイヤ開発や、航空機用タイヤ・ホース事業など、高付加価値製品へのシフトが収益改善を後押ししています。タイヤという成熟した市場の中で、技術革新と事業ポートフォリオの変革によって成長を続けている点が評価されています。

第7位:山陰合同銀行(3.2%)— 地方銀行に春が来た

島根・鳥取を地盤とする山陰合同銀行は、一見すると地味な地方銀行に見えます。しかし、長年の低金利政策が転換され、日銀が利上げ方向に舵を切ったことで、銀行株全体に追い風が吹いています。

金利が上昇すると、貸出金利と預金金利の差(利ざや)が拡大し、銀行の収益は改善します。山陰合同銀行は財務健全性が高く、地域密着型のビジネスモデルが安定した収益基盤を支えています。地方創生や中小企業支援という社会的な役割と投資としての魅力が重なる、割安に放置されてきた優良銘柄の典型例といえます。

第8位:ミスミグループ本社(3.2%)— AIで即見積もり、製造業の部品のAmazon

ミスミグループは、機械部品消耗材の調達プラットフォームとして製造業界では圧倒的な知名度を誇ります。ねじ一本から注文できる豊富な品揃えと短納期が強みで、製造業の縁の下の力持ちとも呼ばれています。

特に注目すべきは、AIを活用して瞬時に見積もりができる独自サービスmeviy(メビー)です。図面をアップロードするだけで即座に価格と納期が確認できるこのサービスは、内閣総理大臣賞を受賞するほどの革新的なシステムです。製造業のDXを支えるプラットフォーマーとして、海外売上比率54%のグローバル企業へと成長しています。

第9位:ニプロ(3.1%)— すべてのいのちに、よろこびをを世界で実現する医療メーカー

ニプロは注射器・輸液バッグ・透析器(ダイアライザー)など、医療現場に欠かせない製品を世界に供給する総合医療メーカーです。真にグローバルな総合医療メーカーを目指し、4つの研究・開発拠点で新製品開発を続けています。

特に世界規模で患者数が増加している慢性腎臓病向けの透析事業は安定した需要を持ちます。2026年3月には日本政策投資銀行による米国子会社への出資も決まり、海外展開を加速しています。少子高齢化が進む日本だけでなく、アジアをはじめとする新興国市場での医療需要拡大という大きな波に乗っています。

第10位:PILLAR(2.9%)— 半導体工場の縁の下を支えるシール専業メーカー

PILLARは、ポンプや配管の継ぎ目から液体や気体が漏れないようにするメカニカルシールやグランドパッキンを製造する専業メーカーです。知名度は低いですが、半導体製造装置・化学プラント・食品工場など幅広い産業インフラを支える部品を供給しています。

半導体工場では腐食性の高い薬品を使用するため、高耐久・高性能のシール部品が必要不可欠です。TSMCの熊本進出をはじめ、日本国内で半導体工場の建設・稼働ラッシュが続く中、PILLARへの需要も着実に高まっています。誰も知らないけれど誰もが必要としているという典型的なニッチトップ企業です。

10銘柄に共通するライジング・サンの投資哲学

10銘柄を振り返ると、ライジング・サンのポートフォリオには明確なパターンが見えてきます。

まず、市場が見落としている本質的な価値を重視しています。MARUWAやPILLARのように、一般的な知名度は低くても特定分野でニッチトップの地位を持つ企業が多く含まれています。次に、社会の構造変化への適応力を重視しています。脱炭素(戸田建設・タクマ)、半導体・AI関連(リンテック・MARUWA・PILLAR)、金利正常化(山陰合同銀行)など、日本社会や世界の大きな流れを捉えた銘柄が選ばれています。そして3つ目として、特定業種への偏りをあえて排除しています。流行りのテーマに飛びつかず、建設・不動産・素材・機械・金融・医療と幅広い業種を組み合わせることで、リスクを分散させています。

2026年3月は、中東情勢の緊迫化と原油価格急騰により日本株全体が大幅に下落し、ライジング・サンも-12.18%と厳しい月になりました。しかし運用チームは短期的な市場の混乱よりも、企業の長期的な本質価値に目を向けるという姿勢を崩していません。個別の銘柄の中身を知ることで、なぜこのファンドが長期で高いリターンを出してきたのかが、少し見えてきたのではないでしょうか。

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