三菱重工(7011)の最新動向を整理

株式

三菱重工業(Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.)は、日本の重工業を代表する総合メーカーとして、防衛・エネルギー・航空宇宙・インフラなど広範な分野をカバーしています。

この記事では、2025年度の最新決算データ、中期経営計画、事業構造、株価評価までを一次資料ベースで整理し、投資観点からの見通しを考察します。

① 最近の状況・決算ハイライト

2025年度第1四半期(4〜6月)決算

  • 受注高:1兆7,686億円(前年比 −788億円)
  • 売上収益:1兆1,936億円(前年比 +820億円)
  • 事業利益:1,041億円(前年比 +206億円)
  • 当期利益(親会社帰属):682億円(前年比 +59億円、+9.5%)

受注はやや減少したものの、利益率が改善し、全体としては堅調なスタートを切りました。特にエネルギー関連や防衛事業の貢献が大きく、収益構造が強化されつつあります。

通期見通し(会社計画)

  • 受注高予想:5.9兆円
  • 売上収益予想:5.4兆円
  • 事業利益予想:4,200億円
  • 当期利益予想:2,600億円(→ 9月に2,300億円へ下方修正)

2025年9月30日、三菱重工は通期最終利益を2,600億円から2,300億円に下方修正しました。理由は、事業再編関連損失として約300億円を見込むためで、これにより通期は「増益」見通しから「減益」予想に転じました。

中期経営計画(MTBP:2024–2026年)

  • 重点領域:脱炭素・エネルギー転換、インフラ、航空宇宙・防衛分野。
  • 技術スタートアップとの連携、燃料転換(アンモニア・水素など)、新規エネルギー事業への積極投資。
  • 「Spectra by MHI」などのオープンイノベーション活動も展開。

受注・政策トレンド

  • 「Defense & Space」部門での売上拡大見込み。防衛費拡充が強い追い風。
  • 豪州との次世代フリゲート艦(もがみ級)輸出契約が実現すれば、日本初の本格的艦艇輸出案件となる見通し。

防衛・宇宙分野の存在感が増しており、三菱重工は国策と整合する「安全保障関連株」として注目を集めています。

② 事業ポジションと強み・課題

強み・成長ドメイン

  • 多角的な事業ポートフォリオ:エネルギー、プラント、航空・宇宙、防衛、物流・ドライブシステムなどを網羅し、景気変動への耐性が高い。
  • 防衛・宇宙分野の競争優位:政府の防衛予算拡大・装備品輸出の自由化と一致。艦艇・航空機部品・ロケットなどで重要プレーヤー。
  • 技術革新と脱炭素対応:水素ガスタービン、次世代燃料、CO₂回収装置など、グローバルな脱炭素トレンドに即した開発が進む。

豆知識:三菱重工の航空宇宙部門は、国産ロケット「H3」や防衛省向け航空機部品、宇宙機器などを製造しています。H3の打ち上げ成功によって、宇宙関連株としての評価も上昇傾向にあります。

主な課題・リスク

  • 業績の予見性:非継続事業や再編損が利益を大きく動かす可能性。
  • 受注偏重:大型プロジェクトの納期遅延・コスト上振れリスク。
  • 為替・コスト変動:円高や原材料高、人件費上昇が収益圧迫要因。
  • 国際競争圧力:欧米・韓中の重工メーカーとの価格競争、コスト構造の硬直性。
  • 配当魅力:成長投資を優先しており、配当性向・利回りは控えめ。

③ 財務・バリュエーションスナップショット

  • 株価水準(参考):約4,037円(2025年10月時点)。
  • アナリスト評価:Jefferiesは“Buy”継続、目標株価4,100円。
  • EPS成長率:過去3年で年率約29%(SimplyWallSt評価)。
  • PER(TTM):約47倍(Barron’s調べ)。
  • EV/EBITDAなどの指標でもプレミアム評価傾向。

PERは高水準ですが、これは脱炭素・防衛・宇宙といった「長期テーマ株」としての成長期待が株価に織り込まれている結果です。株価上昇には「受注確度」と「利益確定」がセットで進む必要があります。

④ 投資判断

総論:中立〜やや強気。「押し目で拾い、テーマで持つ」タイプの大型株です。

注目の判断材料

  • 次の決算(第2四半期)での業績再修正の有無。
  • 豪州艦艇輸出契約の正式確定。
  • 為替動向(円高方向はマイナス影響)。
  • 政府による防衛・産業政策の具体化度。

投資スタンス案

スタンス 内容
エントリー 3,700〜3,900円で押し目分割買い。
利益目標 中期(2〜3年)で4,500〜5,000円レンジ。
損切ライン 3,400円前後(直近サポート割れ)。
ポジション比率 ポートフォリオの中で中型〜テーマ株枠として組み入れ。

参考:三菱重工の防衛関連売上は年次で約1兆円規模とされ、防衛省向け比率が年々上昇しています。政府予算の増加が続けば、安定した利益源になる見込みです。

テーマ株としての妙味は健在、慎重な押し目拾いが鍵

三菱重工(7011)は、防衛・宇宙・エネルギー転換という3大テーマを兼ね備えた「国策銘柄」です。短期的には利益修正リスクが上値を抑えていますが、政策と為替環境が整えば再評価が進む可能性があります。

高PERながら成長期待が根強く、株価はやや先行しています。したがって、配当狙いよりもテーマトレード+中期成長シナリオを重視するのが適切です。防衛・インフラ・脱炭素の国家案件に絡む動きを見ながら、3,700〜3,900円台での押し目買い戦略が妥当でしょう。

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