「人類は、いったいどこへ向かうのか?」
この問いが、いまほど切実な時代はないかもしれません。農耕を始め、産業を起こし、そしてついには宇宙空間へ飛び出した人類。でもその次のステップが、まだ見えていません。
夢を語るなら、「宇宙開拓」。
でも現実を直視するなら、「地上に留まり、現状を維持する」選択肢が浮かびます。
ここで問いたいのは、“どちらがロマンか”ではなく、“どちらが現実的か、そして未来をひらけるのか”ということです。
宇宙開拓は、地球という母体が元気なうちにしかできない
「宇宙に行けばなんとかなる」と思っていませんか?というのも、宇宙に人を送り、維持し、居住地を作るには、地球からの巨大な支援が必要なんです。
ロケットを1つ飛ばすだけでも、燃料・金属・高精度の加工・高度なエネルギー供給、そして何よりお金と時間と人が必要です。
つまり、地球がまだ「元気」なうちにしか、本格的な宇宙進出なんて始められないんです。
さらに、宇宙技術は関わる人や企業が少ないので、辞めてしまうとあっという間に技術が失われてしまいます。かつてアメリカには月に到達できる技術があったのに、イーロン・マスクがロケット事業を始めた頃には再現する技術がすでになく、再び新しく構築しなおしていったという話しがあります。下巻にあった話しだったと思います。
でも、その“元気”は、すでに減ってきている
今、地球の資源はもう限界が近いのでは?という声も出てきています。
たとえば石油。可採年数はあと50〜70年という見積もりもあり、しかもそれは平和で経済が順調に回っている前提。
もし戦争や環境災害が起きれば、もっと早く尽きる可能性もあります。
アルミニウムやリチウムなどのレアメタルも、需要が急増しており、採掘コストも跳ね上がっています。今は当たり前のように使っていますが、あと数十年すれば、「これ、使ってもいいの?」というレベルの貴重品になっているかもしれません。
火星移住は、正直かなりキツい
「じゃあ火星に行けばいいじゃん」と思うかもしれません。
でも、たとえば100万人を火星に移住させるには、数千万トン単位の物資を打ち上げる必要があります。それを今のエネルギー資源でやることが、本当にできるのか。地球で暮らしている方が、持続可能性があるという経済的判断がありえます。
さらに厄介なのが、そのエネルギーを生むための技術すら維持できなくなるかもしれないという点です。エネルギーが尽きると、再生可能エネルギーや核融合も開発どころじゃなくなります。
このままでは、「宇宙に行くための装備が、そもそも作れない」未来が見えてきます。
では、地球にとどまるしかないの?
宇宙開拓が難しくなった場合、私たちは地球で「静かに生き延びる」方向へ進むことになるでしょう。
大量生産・大量消費から距離を置き、よりシンプルな暮らしへ。エネルギーや水を節約し、地域ごとの小さな循環型社会を作る。
これって、ある意味で「進化」じゃなくて、「持続」や「生存のための最適化」なんです。
文明のスピードは落ちて、イノベーションも抑えられるかもしれませんが、人類は細々とでも生き続けるはずです。
両者を比較すると、以下です。
項目 | 地上で足踏み | 宇宙開拓 |
---|---|---|
必要資源 | 衣食住+最低限のインフラ | 燃料・金属・精密部材など膨大 |
必要技術 | 現状維持で対応可能 | 推進・資源採掘・生命維持の革新 |
エネルギー | 地域ごとの再エネでもOK | 核融合クラスの集中エネルギー必須 |
政治・経済 | 不安定でも生存可 | 超安定した国際協調が必要 |
リターン | 日常生活の維持が目的 | 見返りが不透明で長期的 |
トラブル時 | 局地的な影響で済む | 宇宙では即・命にかかわる |
じゃあ未来はどうなるの?
ここまでをまとめると、次のような確率で未来が分岐することが予測されます。
地球で現状維持〜縮小傾向のまま生き延びる可能性が60〜70%。
一方、部分的にでも宇宙開拓が進む可能性は20〜30%ほど。
そして、火星に本格的な都市を築くような未来は、奇跡的な技術革新があったとしても1〜5%にとどまるでしょう。
ちなみに、文明が破綻して原始レベルに戻るようなシナリオ(巨大隕石、核戦争、AI暴走など)も、1〜5%の確率で起こるリスクとして残っています。
進化するなら“今”、足踏みするなら“長い休止”へ
人類の未来は、思っている以上に“分かれ道”に立っています。
宇宙へ向かう道はロマンがあり、科学者や企業も夢を追いかけています。でも、その道を選ぶには、今、この時代に意志をもって、資源と技術と政治を集中させる必要があるんです。
もしそれができなければ、人類はしばらく「足踏みの時代」を過ごすことになるでしょう。進化を止めたわけではなく、生き延びるための最適化。でも、そこに“夢”は少ないかもしれません。
だからこそ今、宇宙を見上げながら、足元を見つめる時なのです。