日本の不動産インフレは続くのか?東京23区「1億3309万円」の衝撃から読む終わりの条件

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少なくとも首都圏(とりわけ東京23区)の新築分譲マンションに関しては、名目価格の上昇(=不動産インフレ)が当面は続く公算が高いです。

東京23区の新築マンション、3年連続1億円超え 25年度上半期、首都圏も1億円に迫る
不動産経済研究所が21日発表した今年4~9月の東京23区の新築マンション平均価格は、前年同期比20・4%増の1億3309万円となり、2023年から3年連続で過…

これは、最新データが示す価格の更新建設コストの高止まり地価の上昇幅拡大、そして金利が「上がったが致命的ではない」水準に留まっているという四重の根拠に基づきます。

不動産インフレが、「いつ終わるのか」「終わらないならどこまで上がるのか」を、条件別シナリオと上限レンジで具体的に示します。

① 直近の事実と数字

東京23区と首都圏の価格は過去最高を更新

2025年4–9月の新築マンション平均価格は、東京23区が1億3,309万円(前年比+20.4%)で上半期として3年連続の過去最高。首都圏全体でも9,489万円と過去最高を大きく更新しました。

背景は土地代・建設資材・人件費の高騰で、調査会社も「高値傾向が続く」とコメントしています。

月次・在庫・契約率の体温

月次では、最新月に近い公表資料で23区平均1億3,810万円・㎡単価215.6万円の記録が確認できます。初月契約率は60%台を維持しつつ、在庫は5,000〜6,000戸レンジでタイト(例:8月末在庫5,715戸)。

販売戸数は前年同月比の振れはあるものの、需給が大崩れしていない点は重要です。

地価は上昇幅が拡大

令和7年(2025年)地価公示では、三大都市圏の住宅地・商業地ともに4年連続上昇、上昇幅拡大。とりわけ東京圏は上昇幅の拡大傾向が継続しています。

地価は仕入れ原価であり、売値の下値を押し上げる要因です。

金利は「上がったが致命傷ではない」

長期固定の代表である【フラット35】の最頻金利は1.890%(2025年10月)で、前月から据え置き。

金利範囲は1.890%〜4.290%と公表されています。足元の長期金利は上向きですが、現時点の最頻帯は家計の返済可能性を大きく崩す水準ではありません。

人口・企業の流入が下支え

東京都の人口は2024年に転入超過7万9,285人と拡大し、コロナ期の一時的な逆流から再び都心回帰傾向。首都圏の雇用・企業活動も活発で、住宅需要の底堅さに寄与しています。

豆知識:マンション価格は「土地(仕入れ)+建設原価(資材・労務)+販売費+利益」で構成され、金利は需要側(家計の借入余力)を通じて価格の許容度を左右します。供給が絞られ、土地・原価が高止まりし、金利が致命的に高くないと、名目価格は上振れやすくなります。

② なぜ上がるのか?価格を押し上げる3エンジン

1. 地価:仕入れ原価の上昇が継続

2025年の地価公示は三大都市圏の住宅・商業いずれも4年連続上昇、かつ上昇幅拡大。東京圏はとくに拡大傾向が明確で、土地仕入れの最低ラインを切り上げています。仕入れが高くなれば、ディベロッパーが売値を崩しにくいのは自明です。

2. 建設コスト:資材・労務の高止まり

建設資材の物価・価格指数は2025年も高水準。鋼材・コンクリート・内装材、そして人件費の上昇が建築原価を押し上げ続ける構造は大きく変わっていません。原価が下がらなければ、完成在庫を値下げして現金化する消極策は取りづらく、価格の粘着性が高まります。

3. 需給と金利:在庫タイト×致命傷でないローン負担

在庫は5,000〜6,000戸レンジ、初月契約率は60%台で過熱でも冷え込みでもない適温。フラット35の最頻1.890%は家計の実効負担にとって警戒は必要でも、直ちに価格崩壊を招く高さではありません。

  • 要するに、土地が高い建てるのも高い(現状の)金利はまだ耐える、という三拍子が揃っているのです。

③ 「終わるなら、いつ?」反転・鈍化の条件表

価格上昇が止まる/反転するために必要な複合条件

  • 追加利上げ→住宅ローン上昇:変動型の実効金利が+0.25~0.50%程度上がると、月返済の増加が購買力を圧迫し、契約率が60%割れへ傾くリスク。
  • 供給の回復:着工・発売戸数の増加で在庫が6,000戸超に積み上がる状態が持続。
  • 地価・資材のピークアウト:地価上昇の鈍化・反落、資材指数の低下で原価の下押しが明確になる。
  • 需要ショック:円高転換で海外資金が細る、雇用悪化で実需が萎む、など。

このうち、政策要因の重みが大きいのは金利です。直近の公的・業界データの延長線上では、2025年~26年前半は「上昇~高止まり」がベース、26年後半~27年にかけて金利次第で鈍化リスクが現実味を帯びる、という時間軸が妥当です。

④ 「終わらないなら、どこまで上がる?」レンジで読む3シナリオ

起点は2025年上期:東京23区1億3,309万円、首都圏9,489万円。この起点から12~18か月先を、地価・資材・金利の組合せでレンジ化します。

強気シナリオ(確率感30%)

  • 前提:地価+8%/年、資材横ばい~微増、フラット35最頻1.8~1.9%維持、在庫5,000台。
  • 価格レンジ:東京23区1.45~1.55億円(+8~+16%)、首都圏1.02~1.07億円
  • 根拠:地価上昇幅の拡大継続と需給タイトの維持。

中立シナリオ(確率感50%)

  • 前提:地価+4~6%/年、資材横ばい、フラット35最頻1.9~2.1%、契約率60%近辺。
  • 価格レンジ:東京23区1.38~1.50億円(+4~+12%)、首都圏9,900万~1.03億円
  • 根拠:現在の金利・需給・人口流入の延長線。

弱気シナリオ(確率感20%)

  • 前提:追加利上げで変動実効が+0.25~0.50%、供給回復で在庫6,000超が常態化、契約率60%割れ。
  • 価格レンジ:東京23区1.25~1.33億円(−6~0%)、首都圏9,000万~9,500万円(−5~0%)
  • 根拠:金利上昇の購買力押し下げと在庫増の同時進行。

計算メモ:価格はおおむね「土地×(容積率・建ぺい率)+建設原価(資材・労務・仕様)+販管費+利益」で決まります。金利は「買い手の許容価格=将来返済の割引率」に効くため、土地・原価が高止まり×金利が致命傷でない局面では、名目価格は上振れバイアスになります。

⑤ 投資・実需の行動指針

実需(居住用)

  • 固定金利を基準に返済率を試算:フラット35最頻1.890%で月返済を計算し、家計の耐性を把握。金利が2.1%を超えると、同条件での借入可能額はおおむね数%縮む点に留意。
  • 在庫・契約率を熱指標に:在庫が6,000戸超に積み上がり、契約率が60%割れが続く局面は買い手優位

投資(賃貸・転売)

  • 立地×賃料成長の分解:人口・企業の流入が見込める23区・駅近で、賃料成長率と空室率の感応度をチェック。東京の転入超過7.9万人は強い追い風。
  • 出口価格の前提:中立シナリオのレンジ(23区1.38~1.50億円)をコアに、弱気・強気の±レンジで感応度を事前に計算。

⑥ 監視すべきKPI(毎月チェック)

  • 金利:【フラット35】最頻が1.890%→2.10%超へ進むか。
  • 在庫・契約率:在庫6,000戸超と契約率<60%が持続するか。
  • 地価:公示・基準地価で東京圏の上昇幅が明確に鈍化するか。
  • 人口移動:東京都の転入超過が縮小に転じるか。

不動産インフレは続くのか・終わるのか・どこまでか

①続くのか
少なくとも2026年前半までは「上昇~高止まり」が基本シナリオです。根拠は価格の過去最高更新(23区1億3,309万円、首都圏9,489万円)地価の上昇幅拡大建設コスト高止まり金利が致命傷ではないこと。

②終わるならいつ
2026年後半~2027年にかけて、追加利上げ×在庫増×地価/資材の一服が重なれば鈍化・反転リスクが顕在化します。

③どこまで上がる
12~18か月のレンジで、東京23区1.38~1.50億円(中立)、上下に1.25~1.55億円の拡げ。首都圏は9,900万~1.03億円(中立)、上下に9,000万~1.07億円のレンジを見ます。数字の鍵は「土地・原価・金利」の三変数です。

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