2026年3月、日本銀行は18〜19日に金融政策決定会合を開催します。
ここで政策金利は現状の0.75%に据え置かれる公算が大きい一方、次の4月会合では追加利上げが現実味を帯びています。さらに、中東情勢の急激な緊迫化が原油価格を押し上げ、株式市場を揺さぶっています。
こうした状況を前に「自分の保有株はどうなる?」「今は買い時?売り時?」と迷っている個人投資家の方へ向けて、3月・4月の相場を読み解くポイントをわかりやすくまとめました。
いまの相場をつくる3つの要因を整理
今の株式市場を動かしているのは、大きく3つの要因です。
1つ目は日銀の利上げ路線の継続です。日銀は2025年12月に政策金利を0.75%まで引き上げ、30年ぶりの高水準となりました。3月会合での利上げはほぼゼロと見られていますが、次の4月会合では約37%のエコノミストが利上げを予想しており、7月までに88%が追加利上げを見込んでいます(ブルームバーグ調査)。
2つ目が中東情勢の急変です。2月末に米国とイスラエルがイランを軍事攻撃し、ホルムズ海峡が事実上封鎖されました。ホルムズ海峡は世界の石油消費量の約5分の1が通過する要衝です。この封鎖を受けて原油価格が急騰し、WTI先物は2026年の年初から16%以上に上昇しました。封鎖が長引けば原油がさらに跳ね上がり、経済全体への打撃が大きくなる可能性があります。
3つ目は春闘と実質賃金の動きです。大企業を中心に高い賃上げ率が見込まれており、日銀がシナリオ通りと見ている背景のひとつです。賃金が上がり続ければ、日銀が利上げをためらう理由は薄れていきます。
豆知識:ホルムズ海峡ってどこ?
ホルムズ海峡はイランとオマーンの間に位置する幅わずか約54kmの海峡です。中東の産油国から出荷される原油の大部分がここを通過します。世界の原油取引の約5分の1が経由するため、ここが封鎖されると原油供給が一気に絞られます。過去にも中東危機のたびに注目される「原油価格の急所」と呼ばれる場所です。
3月据え置きが決まっても安心できない理由
今の株式市場が警戒しているのは、原油高が引き起こすスタグフレーション(景気停滞+物価上昇)のリスクです。野村証券の試算によると、原油価格が100ドルで高止まりした場合、2026年のコアCPIインフレ率は前年比で一時3%台後半まで高まり、実質賃金が明確なマイナスに転落する可能性があります。これは企業業績にとっても個人消費にとっても大きな下押し圧力です。
日銀は3月会合を「中東情勢を見極める場」と位置づけています。つまり今回の据え置きは「景気が悪いから」ではなく「先行きが読めないから」です。中東情勢が短期で収束すれば4月利上げ、長期化すれば6月以降にずれ込むという構図が現在の市場コンセンサスです。
元日銀理事の前田栄治氏は、4月利上げと6月利上げの確率はそれぞれ五分五分との見方を示しています。つまり4月は「利上げがある可能性と、ない可能性が半々」という、非常に読みにくい局面なのです。
セクター別に見る上がりやすい株と下がりやすい株
こうした環境下では、すべての株が同じ方向に動くわけではありません。セクターごとに明暗が分かれます。
追い風が吹いているセクター
まず注目したいのが銀行・保険などの金融株です。利上げが続く局面では、貸出金利と預金金利の差(利ざや)が拡大しやすく、銀行の収益が改善します。2024年3月の日銀マイナス金利解除以降、メガバンクの利ざやはすでに改善傾向にあります。追加利上げへの期待が続く限り、メガバンク株には引き続き注目が集まりそうです。
次に、エネルギー・資源関連株です。原油高の恩恵を受けやすい石油関連企業や、エネルギー安全保障の観点から国策として後押しされている資源関連銘柄は、中東リスクが続く局面で物色されやすい傾向があります。
さらに、防衛関連株も引き続き注目されています。中東情勢の緊迫化は地政学リスクの象徴であり、各国の防衛費増強への関心を高めます。日本も防衛費増額を進めており、関連企業への期待が続く状況です。
逆風が強まっているセクター
一方で注意が必要なのが消費関連・内需型の企業です。原油高はエネルギーコストを押し上げ、食品・輸送・小売など幅広い業種のコスト増につながります。実質賃金がマイナスに転じれば個人消費も冷え込み、業績への影響が大きくなります。
輸入依存度の高い製造業も注意が必要です。原材料コストの上昇が利益を圧迫する可能性があります。また、高PER(株価収益率)の成長株は、金利上昇局面では理論的な株価の割引率が上がるため、売られやすくなります。
| セクター | 現在の方向感 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 銀行・保険(金融株) | 追い風 | 利上げによる利ざや拡大期待 |
| エネルギー・資源 | 追い風 | 原油高・エネルギー安全保障の国策 |
| 防衛関連 | 追い風 | 地政学リスク上昇・防衛費増額 |
| 消費関連・内需 | 逆風 | 原油高によるコスト増・消費冷え込み懸念 |
| 輸入依存型製造業 | 逆風 | 原材料コスト上昇 |
| 高PER成長株 | 逆風 | 金利上昇で理論株価が低下しやすい |
個人投資家が3月・4月にとるべき4つの行動
では実際に、個人投資家はどう動けばよいのでしょうか。ここでは現実的に実行できる4つの考え方をお伝えします。
1. 保有株のセクターを確認し、リスクを把握する
まず今すぐできることとして、自分が保有している株がどのセクターに属するかを確認してみましょう。消費関連や輸入依存型の銘柄が多い場合、原油高と利上げのダブルパンチを受けやすい状態にある可能性があります。保有比率を見直すきっかけにしてみてください。
2. 「悪材料出尽くし」のタイミングを意識する
地政学リスクによる急落は、過去の経験では一時的に終わることも多いです。2022年のロシア・ウクライナ侵攻時も、侵攻開始直後に悪材料出尽くしから株価が反発した例があります。
「紛争が起きた直後が底」というパターンを念頭に、パニック売りを避けることが大切です。ただし、中東情勢が長期化した場合は別のシナリオも考えられるため、慎重な姿勢を保つことが重要です。
3. 4月19日の日銀会合前後に注目する
4月の日銀会合は投資家にとって最大の注目イベントです。利上げが実施された場合は金融株が買われやすく、高PER株が売られやすくなります。据え置きの場合は短期的に株価全体が落ち着く可能性があります。会合の結果と植田総裁の記者会見の発言を、必ずチェックするようにしましょう。
4. 長期投資の視点を忘れない
短期的な材料に振り回されるのは、個人投資家の最も陥りやすい落とし穴のひとつです。野村証券の見通しでは、2026年度のTOPIX予想EPS成長率は前年比14%超と強気です。
日本株全体の企業業績は改善基調にあり、コーポレートガバナンス改革や脱デフレの流れも長期の追い風となっています。短期のノイズに惑わされず、長期保有のコア銘柄はホールドを基本に考えることが、資産形成においては王道の戦略です。
知っておきたい:スタグフレーションとは?
スタグフレーションとは「景気停滞(スタグネーション)」と「物価上昇(インフレーション)」が同時に起きる状態のことです。通常は景気が悪ければ物価が下がり、景気が良ければ物価が上がる、という関係があります。しかし原油高のような外部ショックで供給が絞られると、景気が悪いのに物価だけが上がるという最悪の状況が生まれます。1970年代の石油危機でも世界規模のスタグフレーションが起きており、今回の中東情勢でもその再来が警戒されているのです。
4月以降の株式市場
現在の不確実性が高い相場では、1つの予測を信じるよりも、複数のシナリオを想定しておくことが賢明です。
シナリオA:中東情勢が比較的早期に収束した場合。原油価格が落ち着きを取り戻し、日銀は4月に利上げを実施します。金融株・エネルギー株は底堅く、消費関連株も回復方向へ。日経平均は再び上昇トレンドを試す展開になりそうです。
シナリオB:中東情勢が長期化した場合。原油価格の高止まりが続き、日銀は6月以降に利上げを先送りします。スタグフレーション懸念が続くなか、株式市場はボラティリティが高く、しばらくは不安定な展開が予想されます。この場合、ディフェンシブ株(生活必需品、電力、通信など)や金など実物資産への分散が有効になってきます。
シナリオC:中東情勢の急激な悪化(原油100ドル超)。最も警戒が必要なケースです。景気失速と物価上昇が同時進行し、株式全体への下押し圧力が強まります。ただし歴史的に見ても、このような急落局面は中長期の仕込み機会になることが多く、焦って全売りするより、余裕資金で買い増しを検討するという発想も持っておきたいところです。
何もしないも立派な戦略
3月・4月の相場は、日銀の金利政策と中東情勢という二重の不確実性を抱えています。情報が飛び交う中で「すぐに何か動かなければ」と焦る気持ちもわかりますが、不確実性が高い局面では、むしろ慎重に待つことも重要な戦略です。
まず今の自分のポートフォリオがどのセクターに偏っているかを確認し、利上げや原油高に対して脆弱な銘柄がないかをチェックすること。そして4月の日銀会合という重要なイベントを意識しながら、中東情勢の動向に目を向けること。この2点を押さえるだけでも、無駄なパニック売りや見切り発車の買いを避けることができます。


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