生成AIが登場してからわずか数年。私たちの「未来予想図」は日々アップデートされ、もはや“SF の中の出来事”とは呼べない速度で変化が進んでいます。
本記事では、AI思想家カール・シュルマン氏(オックスフォード大学FHI所属)が語ったインテリジェンス・エクスプロージョン(知能爆発)のメカニズムを噛み砕きつつ、株式投資の観点から今後伸びそうな日米企業をピックアップ。

1. インテリジェンス・エクスプロージョンとは何か
シュルマン氏の核心は「ハードウェア(半導体)×ソフトウェア(アルゴリズム)×投資マネー」の3点掛け算が指数関数的に回り始めた瞬間、研究者人口が“物理的に”倍々ゲームで増えるという仮説です。
GPUクラスタに新しいモデルをコピーするだけで「AI研究者を即席で複製」できるため、「優秀な人材が足りない問題」はチップと電力の問題に置き換わります。Morgan Stanleyの最新レポートでも、H100/H20クラスの推論需要は依然ひっ迫していると指摘されました。
1-1. ソフトウェア進歩は8→4→2か月ダブル?
氏が示す目安では、アルゴリズム改良による“実効演算量”の倍増ペースは現在およそ8か月。AI自身がAI研究を学習対象に加えると4か月、2か月…と短縮し、ついには人間のチェックが追いつかない速度へという予測です。
1-2. ハードウェアは「ムーアの法則以後」も止まらない
Google、Microsoft などのクラウド巨人は2025年度も設備投資を減速させず、Blackwell世代GPUだけで四半期3兆円規模の売上が見込めるとの強気観測も。
東京エレクトロンは2026年に再び二桁成長を予測し、装置投資の反転を示唆しています。
2. ロボット大増殖のシナリオ
「脳みそ」の準備が整えば次は「手足」。自動車産業の設備をロボット生産へ振り替えるだけでも、年間10億台規模のヒューマノイドが理論上は可能というのが氏の大胆試算です。
ファナックの最新決算ではロボット受注が前年比5%増、中国を除くアジアと米州が二桁成長を記録。安川電機も「次世代ロボットが成長エンジン」と宣言しています。
3. アラインメント問題――暴走は防げるのか?
知能爆発がバラ色とは限りません。シュルマン氏は「人類滅亡シナリオ」を25%前後と見積もりつつも、“AI が AI を監査する”仕組みと、人間によるランダム抜き取り監査を組み合わせれば暴走確率を大きく下げられると指摘します。
要は「観察される可能性がある環境」こそ最強の安全装置というわけです。
豆知識: 人類の脳は体重の2%しかないのに、基礎代謝の20%を消費すると言われます。AIの場合“脳=GPU”は電気さえあれば24時間稼働。省エネ昼寝が不要な点は投資効率の鍵にも!
4. 投資家目線で読む「知能爆発」――注目の日米株
4-1. 米国株:プラットフォームを押さえる
最有力は言わずと知れたNVIDIA。Morgan Stanleyは2026年度の業績予想を10%以上上方修正し、株価160ドル目標を継続。
MicrosoftはAzureとOpenAI連携でFY25売上16%増。クラウド原価が下がるほど営業利益が加速する“レバレッジ型”です。
4-2. 日本株:半導体とロボットのダブルエンジン
東京エレクトロンは装置市況の一服で株価は足踏みですが、2026年に二桁成長回帰を見込む中長期ストーリーが健在。
キーエンスはAI搭載センサで北中南米売上が牽引、財務余力も十分。
ロボット大増殖の主役、ファナックと安川電機は工場自動化の“腕力”を担い、市場調査では産業用ロボCAGR13%超えとの予測も。
5. 知能爆発前夜を楽しむコツ
AI研究者がAIによって指数関数的に増殖する。
そんなシュルマン仮説は、もはや机上の空論ではなくなりつつあります。ハードとソフトの飛躍的進歩がロボット生産までも加速し、企業価値は「どれだけAIループの中心にいるか」で決まる時代へ。
投資家としては、①GPU/クラウドで演算を握る米テック、②装置とロボで“物理世界のAI化”を担う日本メーカー、この二本柱を押さえつつ、リスク要因(アラインメント問題)には常にアンテナを立てることが肝心です。
知能爆発のスピード感は、従来の「10年スパン」の投資思考を軽く凌駕します。しかし、だからこそ早めのインプットと小さな実験を積み重ねる読者の姿勢が、次の巨大波を乗りこなすサーフボードになるでしょう。
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