2026年2月の衆議院総選挙で自民党が単独過半数を確保し圧勝する場合、株式市場は一度大きく上に跳ねる可能性があります。
政治の不確実性が消えると、海外投資家はまず安心して買いに来るからです。しかし、その株高が持続するかどうかは、株の材料ではなく国債と為替が決めます。選挙後の日本株は、指数が上がっていても中身が弱いという状態になりやすく、判断の基準を間違えると高値掴みになりやすい局面です。この記事では、株価そのものではなく、どの指標が危険信号になり、どの順番で崩れやすいかを、実務的に整理します。
まず起きやすいのはご祝儀相場
自民圧勝の直後は、政権基盤の安定と政治的空白の解消が好感されやすく、短期的には買いが先行しやすいです。特に海外勢は、まず指数先物や大型株でポジションを作り、細かい検証は後回しにします。ここで起きる上昇は、景気が急に良くなったからではなく、政治リスクの割引が一時的に外れた結果です。
ただし、ご祝儀相場は長続きはせず、圧勝が積極財政の追い風と解釈されると、債券市場が先に反応し、金利上昇が株の評価を押し下げ始めるからです。
本当の採点者は債券市場
最重要は超長期国債の利回りと入札の安定度です。
なぜなら、財政への懸念は株より債券に先に出るからです。株が上がっている間に、国債が崩れているという形が最も危険です。
30年債利回りと入札の形
30年債などの超長期が上がると、企業価値の計算に使う割引率が上がり、将来利益を買うタイプの銘柄ほど不利になります。厄介なのは、金利の水準そのものより、上がり方が速いことです。金利がじわじわ上がるなら市場は消化できますが、数日で急騰する局面では、流動性が薄いところから値が飛びやすく、株にも連鎖します。
入札に関しては、札割れや応札倍率の低下、テールの拡大のような形で需給悪化が見えます。入札が不安定になると、次の入札まで市場が構えてしまい、金利高と株安の同時進行になりやすいです。
豆知識 札割れとは、国債などの入札で応募額が予定した入札額に満たない状態のことです。国の資金調達が不安定になるリスクを連想させるため、心理的なインパクトが大きい用語です。
危険信号の見分け方
危険信号を見分けやすい順に並べると、超長期金利の急騰、入札の弱さ、為替の荒さ、日銀の姿勢の変化になります。
| 見るもの | 正常に近い状態 | 異常に近い状態 | 実務の動き |
|---|---|---|---|
| 30年債利回りの動き | 上昇が緩やかで日々の変動が小さい | 短期間で急騰し日々の変動が大きい | 長期成長株と内需高PERを段階的に縮小する |
| 国債入札の安定度 | 応札倍率が安定し需給が読める | 応札倍率の低下や札割れ懸念が出る | 指数連動の比率を下げ現金比率を上げる |
| 円安の進行スピード | 緩やかで材料と整合する | 急落が連発しボラが跳ねる | 輸出株でも利確優先に切り替える |
| 日銀の市場対応 | 必要時に流動性を供給し市場が落ち着く | 静観が続き金利高を容認する印象が強い | ポジションを最大級に落とし守りに寄せる |
円安は味方にも敵にもなる
選挙後に円安が進む場合、輸出企業の利益押し上げとして歓迎される場面があります。
ゆっくりした円安はプラスになりやすい一方で、急激な円安は海外勢にとって為替差損のリスクになり、日本株全体の売りにつながりやすいです。
良い円安と悪い円安
良い円安は、金利差や貿易条件など説明できる材料と整合していて、値動きが比較的滑らかです。悪い円安は、材料の説明が追いつかず、窓を開けるような下落が続き、当局の牽制や介入観測が出る状態です。悪い円安が始まると、輸出株は上がるどころか、先に利益確定売りが出ることがあります。
海外投資家が嫌うのは方向より荒さ
海外投資家が一番嫌うのは、円安か円高かの方向よりも、ヘッジコストの急変と値動きの荒さです。日本株を買っても為替で負けるかもしれないとなると、株の評価以前に資金を引き上げます。指数が高いままでも、出来高が細り、上値が重くなるなら警戒が必要です。
日銀が静観するかどうかが最後の分岐点
超長期金利が上がったとき、日銀が臨時買い入れなどで市場を落ち着かせるか、それとも基本方針を優先して静観するかで、株の地合いは大きく変わります。
臨時買い入れは万能薬ではない
臨時買い入れが出れば一旦は落ち着くことがあります。しかし、それが恒常化する気配が出ると、別の不安を呼びます。市場は、金利形成が政策に縛られるのではないかという疑念を持ち、円安圧力やリスクプレミアムの拡大として跳ね返る場合があります。短期の鎮静と長期の信認は別物です。
日銀が静観を続けると株の前提が変わる
一方で、日銀が静観を続け、実質的に金利上昇を容認する印象が強まると、低金利を前提に成立していた株のバリュエーションが崩れます。
特に、利益が遠い成長株や、借入依存度が高い業種、内需の高PER銘柄は打撃を受けやすいです。
セクター別に考える勝ち筋と負け筋
金利上昇と円安が同時に起きる局面では、指数の上げ下げよりも、勝つ業種と負ける業種の差が広がります。全体で勝つのではなく、負けにくい発想が必要です。
金利上昇が緩やかなら、銀行や保険など金利感応度が高いところは相対的に有利になりやすいです。円安が緩やかなら、輸出比率が高い大型株は業績面で支えが出やすいです。金利が急騰するなら、高PERの内需成長株や不動産などは評価面で逆風が強まりやすいです。
重要なのは、どのセクターが上がるかを当てることより、環境が変わったときに沈みやすい船を先に降りることです。
個人投資家の生き残りルール
選挙後はニュースが多く、つい感情で動きやすいです。ここでは、迷ったときに機械的に動けるよう、ルールを先に置きます。
指数が上がっていても、超長期金利が急騰しているなら、リスクを落とす方向を優先します。為替が荒れてきたら、輸出株でも利確を先にして、円安の恩恵を過信しないようにします。日銀が静観を続ける印象が強まったら、ポジションを大きく落として現金比率を上げます。
自民圧勝シナリオは、最初は株に追い風になり得ますが、すぐに債券市場の採点が始まります。選挙翌週の国債入札、超長期金利の変動、為替の荒さ、日銀のスタンスという順に確認し、異常のサインを見ていくことになります。


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