7期連続赤字でも、今が仕込み時か?楽天グループ(4755)の適正株価を本気で考えてみた

株式

株式投資の世界では、誰もが敬遠するタイミングこそ、大きなリターンが潜んでいることがあります。

楽天グループ(東証プライム・証券コード4755)は2025年12月期決算でも最終赤字が続き、7期連続の赤字という数字だけを見れば、確かに近づきがたい銘柄です。しかし、あえてそのタイミングだからこそ、この銘柄と真正面から向き合ってみる価値があると考えて適正株価を出すことにしました。

2026年3月8日時点の最新情報をもとに、赤字企業でも活用できる株価評価の手法を使いながら、楽天グループの適正株価を算出し、今が買いかどうかを考えていきます。

楽天グループとは何者か

楽天グループは「楽天市場」を中核とするEコマース(ネット通販)だけでなく、楽天銀行・楽天カード・楽天証券といった金融サービス、そして携帯キャリア「楽天モバイル」を展開する、日本を代表するインターネット企業です。楽天ポイントを軸に70以上のサービスが連携する「楽天経済圏」を形成しており、会員数は1億人を超えています。

事業は大きく3つのセグメントに分かれています。インターネットサービス(楽天市場・旅行など)、フィンテック(銀行・カード・証券・保険)、そしてモバイル(楽天モバイル・楽天シンフォニー)です。売上収益は2025年12月期で前年比9.5%増の約2兆4,965億円と堅調に成長しています。では、なぜ赤字が続いているのか。その答えは、ほぼすべて「楽天モバイル」に集約されます。

赤字の正体は「楽天モバイル」への巨額投資

楽天グループが7期連続の最終赤字を計上してきた最大の要因は、2020年に本格参入した携帯キャリア事業への先行投資です。基地局設備の整備、ネットワーク構築、顧客獲得のためのプロモーション費用がグループ全体の利益を圧迫してきました。

ただし、ここで注目したいのは「赤字の質」が変わってきていることです。2025年12月期のNon-GAAP営業利益(一時的な費用や減価償却を調整した実態に近い指標)は前年比で大幅に増加し、1,062億円の黒字を達成しています。一方でIFRS基準の営業利益は143億円と大きく下がっていますが、これは主に会計上の処理の違いによるものです。モバイル事業単体のEBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)は2025年通期での黒字化を目指して順調に改善を続けており、四半期ベースでは既に78億円のEBITDAを計上するところまで回復しています。

豆知識:Non-GAAPとIFRSの違い

Non-GAAP営業利益とは、会社が「実態を正しく見てほしい」と定義する独自指標です。減価償却費や一時的な費用を除いた数字なので、事業の稼ぐ力を見やすくなります。一方、IFRS(国際財務報告基準)は会計ルールに基づく公式な数字です。楽天モバイルのように設備投資が巨大な事業では、この2つの数字が大きく乖離しやすいため、両方を確認することが大切です。

2026年3月8日時点の株価と基本指標

直近の株価を確認しておきましょう。3月6日終値は805円で、前日比22円高(+2.83%)となっています。年初来高値は1,068円(2025年11月)、年初来安値は695円(2025年4月)です。時価総額は約1兆7,479億円です。

PER(株価収益率)は赤字のため計算不能です。PBR(株価純資産倍率)は約1.76倍となっています。配当は2025年12月期も見送りが決定しており、現時点では配当利回りはゼロです。これだけ見れば確かに買いにくい銘柄ですが、「適正株価」を算出するためには別の視点が必要になります。

楽天グループ(4755)主要指標(2026年3月6日時点)
項目 数値
現在株価 805.3円
時価総額 約1兆7,479億円
PER(予想) 算出不能(赤字)
PBR(実績) 約1.76倍
年初来高値 1,068.5円(2025年11月)
年初来安値 695円(2025年4月)
発行済み株式数 約21億7,050万株

赤字企業の適正株価、どうやって算出するのか

赤字企業はPERが使えないため、別の手法で株価の妥当性を探る必要があります。ここでは3つの方法を使って多角的に考えてみましょう。

方法1:PBR(純資産倍率)基準で考える

現在のPBRは約1.76倍です。アナリストの理論株価(PBR基準)は、株予報Proの情報によると1,130円(PBR約2.47倍)が理論中央値、下値目途は878円(PBR約1.92倍)とされています。これはインターネット・金融複合企業としての同業種平均PBRを参考にした試算です。PBRだけで見ると、現在の株価805円は1,130円に対して約29%ほど割安な水準にあります。

方法2:EV/EBITDA倍率で考える

赤字企業に有効なもう一つの手法が、EV/EBITDA倍率を使った評価です。EVとは企業価値(時価総額に純有利子負債を加えたもの)、EBITDAは減価償却前の営業利益です。

楽天のNon-GAAP EBITDAは改善が続いており、モバイル事業が黒字化に向かっていることを踏まえると、2026年通期では全社EBITDAが大幅に拡大すると見込まれます。通信事業者や総合インターネット企業の一般的なEV/EBITDA倍率(8〜12倍程度)を参考にすると、現在の株価はEBITDA改善シナリオのもとでは割安感があります。

方法3:アナリスト目標株価の平均値

2026年3月8日時点のアナリストコンセンサスでは、13名のアナリストが楽天グループをカバーしており、強気買い1人・買い5人・中立6人・売り1人という内訳です。

平均目標株価は1,010円で、現在株価からの上昇余地は約25%と試算されています。なお、野村証券は目標株価を1,085円として「買い」判断を維持しています。

3つの手法で見た適正株価のまとめ

PBR基準理論値:約1,130円、アナリスト平均目標株価:約1,010円、PBR下値目途:878円。3手法の平均を取ると、おおよそ1,000〜1,100円が一つの目安となります。ただし、これらはあくまで試算であり、赤字継続・有利子負債の水準・事業環境の変化によって大きく変わることに注意が必要です。

フィンテック事業の大再編

楽天グループの株価を考える上で、今最も重要なトピックがフィンテック事業の再編です。2026年2月25日、楽天グループと楽天銀行は、楽天銀行・楽天カード・楽天証券ホールディングスなどを一つのグループに集約する組織再編について基本合意書を締結し、2026年10月の実施を目指すと発表しました。

この再編の意義は非常に大きいものです。現在、楽天カードは資金調達を外部市場に頼っていますが、グループ内の楽天銀行から短期調達できるようになれば、数百億円規模の金利コスト削減につながるとされています。楽天銀行の預金残高は2025年12月時点で13兆2,000億円に達し、口座数は前年比7%増の約1,700万口座と国内ネット銀行最大規模です。この強力な預金基盤を活用することで、グループ全体の財務効率が劇的に向上する可能性があります。

さらに三木谷浩史会長兼社長は「世界最大のフィンテックカンパニーが登場する」と強い意気込みを示しており、将来的には新会社の海外上場も視野に入れています。ただし、楽天カードに14.99%出資するみずほ銀行、楽天証券に49%出資するみずほ証券との交渉がどう進むかは現時点で未定であり、再編が予定通りに進むかどうかはまだ不透明な部分もあります。

楽天モバイルが変わってきた、契約者数950万回線の意味

2025年11月時点で楽天モバイルの契約回線数は950万回線に達しています。事業の採算ラインとして市場でよく語られてきた「1,000万回線」の大台が視野に入ってきた状況です。正味ARPU(1契約あたりの純売上)も前年比110円上昇して2,471円となり、ユーザーのデータ利用増加がARPUを押し上げています。

モバイル事業の四半期EBITDAはすでにプラスに転じており、2025年通期での黒字化に向けて着実に進捗しています。楽天モバイルが最大の赤字要因から「稼げる事業」へと転換することができれば、グループ全体の損益が劇的に改善します。この転換が近いと読むか、まだ遠いと見るかが、投資判断の分かれ目となります。

リスクの材料は

楽天グループへの投資を考える際には、ポジティブな材料と同様にリスクについて向き合う必要があります。

有利子負債の水準が依然として高い点は見逃せません。非金融事業の純有利子負債は依然として大きく、金融費用の負担が最終損益を圧迫する構造は続いています。会社側も「非金融事業純有利子負債/Non-GAAP EBITDA倍率を5倍以内にする」という目標を掲げていますが、達成時期は明示されていません。

配当再開の見通しが立っていない点も投資家心理には重くのしかかります。連結業績の黒字化および有利子負債削減が復配の条件とされており、インカムゲインを重視する投資家にとっては引き続き選びにくい銘柄です。

フィンテック再編の不確実性も残ります。2024年に一度は再編の取り止めを発表した経緯があり、今回も交渉次第では予定通りに進まないシナリオは十分ありえます。

また、モバイル競争の激化も継続するリスクです。NTTドコモ・au・ソフトバンクとの価格競争や、ポイント経済圏をめぐるLINEヤフー・dポイント陣営との競合は今後も続きます。

楽天グループ(4755)ポジティブ要因とリスク要因
ポジティブ要因 リスク要因
楽天モバイルのEBITDA改善、950万回線達成 7期連続最終赤字、配当ゼロが継続
フィンテック再編による数百億円のコスト削減期待 非金融事業の有利子負債が依然高水準
楽天銀行の預金残高13兆円超、口座数1,700万の規模 フィンテック再編が予定通り進まないリスク
1億人を超える楽天会員基盤(楽天経済圏) 携帯市場での三強との価格競争激化
アナリスト平均目標株価1,010円(現在比+25%) みずほFGとの再編交渉の行方が不透明

今は買いか

ここまで整理してきた情報をもとに、今が買いかどうかという問いに向き合ってみましょう。

「中長期視点の逆張り投資」として一定の魅力がある一方で、短期的には不確実性も高い、というのが正直なところです。

アナリスト平均目標株価が1,010円、PBR理論値が1,130円であることを考えると、現在の805円という株価には、1,000〜1,100円を目指す余地があります。特に、楽天モバイルの黒字化が実現し、フィンテック再編がコスト削減に貢献し始めれば、連結黒字化への道筋が見えてきます。連結黒字化が達成された時点では、それを織り込む形で株価が再評価される可能性が高いでしょう。

投資家がよく語る「誰も見向きもしないタイミング」こそ、実は割安水準で仕込める局面であることも多いのです。2023年6月には466円まで売り込まれていた株価が、2025年11月には1,068円まで回復した事実は、楽天株がボラティリティを持ちながらも「見直し買い」が起きやすい銘柄であることを示しています。

一方で、赤字が続く限り「損切りラインをどこに設定するか」を事前に決めておくことが非常に重要です。モバイル事業の黒字化が想定より大幅に遅れた場合、あるいは有利子負債問題が深刻化した場合には、株価が再び年初来安値水準まで下落するシナリオも排除できません。

バフェットが愛した「誰も見ていない企業」の法則

著名投資家ウォーレン・バフェット氏は「他の人が恐れているときに貪欲になる」という有名な言葉を残しています。赤字・無配・連続赤字という三重苦を抱えた企業は、市場から最も敬遠されます。しかしその悲観がすでに株価に織り込まれているなら、好転の一歩が株価の大きな見直しにつながることがあります。楽天がその法則に当てはまるかどうかは、自分で考えるしかありません。それが投資の醍醐味でもあります。

楽天グループ(4755)のチェックポイント

楽天グループ(4755)の現状と今後の見どころを整理します。現在の株価は805円前後で、アナリスト平均目標株価1,010円・PBR理論値1,130円から見て割安圏にあるといえます。7期連続赤字の主因である楽天モバイルはEBITDA改善が続いており、2025年通期の黒字化目標に向けて着実に進んでいます。フィンテック再編が実現すれば数百億円規模のコスト削減が期待でき、財務体質の改善が加速する可能性があります。

投資を検討する際のポイントとして、「楽天モバイルの契約回線数が1,000万を超えたタイミング」「フィンテック再編の最終合意が成立したタイミング」「Non-GAAP営業利益が黒字で定着したタイミング」などをウォッチポイントとして押さえておくと、判断しやすくなるでしょう。

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