BRICS Bridgeをめぐる議論は、ネット上では「金裏付けの新通貨」や「世界通貨」に話が多いです。しかし、公表されている説明の範囲で見ると、BRICS Bridgeはそうした構想とは別物です。
狙いは、ドルとSWIFTへの依存を減らし、国際送金・決済を回すための別の経路を用意することにあります。
BRICS Bridgeは何者か
BRICS Bridgeは、国際決済のための仕組みとして説明されており、金融メッセージングを含むインフラを持ち、既存の銀行ネットワークやSWIFTに頼らずに動かすことを想定しています。決済の手段としては、各国の中央銀行が発行するデジタル金融資産(CBDCなど)を用い、自国通貨に連動させた形で国境をまたぐ決済をつなぐという説明がされています。
目的は、ドル決済とSWIFTに集中している現在の国際決済の構造に対して、リスク分散のための別レーンを作ることです。制裁や地政学リスクで既存インフラが使いにくくなる局面でも、域内貿易や送金を回しやすくする狙いがあります。また、送金にかかる時間やコストを下げ、ローカル通貨建ての取引を増やしやすくする意図も読み取れます。
豆知識SWIFTは資金そのものを移動させる仕組みというより、送金指示などの金融メッセージをやり取りするための国際的なネットワークです。実務では、この連絡経路が止まると送金処理が滞りやすくなります。
なぜ今になって「別レーン」が必要なのか
最大の背景は、金融インフラが政治リスクと直結するようになったことです。たとえ取引をローカル通貨で行っていても、決済経路が米国の金融システムやドル圏の中継に依存していると、制裁や規制の影響を受ける余地が残ります。論点は通貨そのものより、どの経路を通るかにあります。
もう一つの背景は、クロスボーダー送金の不便さです。
手数料、所要時間、事務負担は、貿易や投資の現場で無視できません。各国が「速く、安く、透明性の高い」決済を求めるのは、実務上や民間の要請が大きいのでしょう。
BRICS Bridgeができることと、できないこと
できること
一つ目は、決済経路の冗長化です。特定のネットワークや通貨に依存し過ぎると、どこかが詰まったときに全体が止まりやすくなります。別レーンがあれば、止まりにくさは上がります。
二つ目は、ローカル通貨建て取引の摩擦を下げる方向に働くことです。為替や流動性の問題が消えるわけではありませんが、少なくとも接続やメッセージングの部分を自前化しようとする動きにはなります。
できないこと
一つ目は、覇権通貨の置き換えです。BRICS Bridgeは、ドルを置き換える新通貨を作るという話ではなく、決済インフラを分散させるという性格が強いと見られます。
二つ目は、単一の仕組みで一気に統一することです。BRICS各国は、金融規制、資本規制、制度設計が大きく異なります。技術的に接続できても、制度面の調整が進まなければ運用は広がりにくく、ボトルネックになりやすい部分です。
豆知識国際送金コストが高くなりがちな要因には、中継銀行をまたぐ手続き、各種の確認業務、マネロン対策の審査、そして決済に必要な流動性の確保があります。配管を変えるだけで全部が解決するわけではありません。
中国にとっての意味と、BRICS全体の温度差
中国にとっては、人民元建て決済を増やすための受け皿として使える余地があります。決済インフラが整えば、人民元を使った取引を増やす環境が作りやすくなるためです。
ただし、BRICS全体が人民元中心で一枚岩になっているかというと、そこは別問題です。各国の利害は一致しておらず、特定の通貨に重心が寄り過ぎることへの警戒も働きます。結果として、BRICS Bridgeが仮に前進しても、運用の範囲や速度は国ごとの温度差に左右されやすいと見られます。
ドル依存を減らし新興国が台頭する
BRICS Bridgeは、金裏付けの共通通貨や新通貨の構想ではなく、ドルとSWIFTへの依存を減らすための国際決済の別レーンとして説明されています。狙いは、覇権通貨を作ることではなく、国際決済の構造を分散させ、止まりにくい実務インフラを整えることです。

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