JR東日本の運賃値上げと株価、指標から見る投資判断

株式

JR東日本(9020)が2026年3月に予定している運賃値上げ。

ニュースだけを見ると「収益が上がる=株価も上がる」と思いがちですが、実際には市場はすでにその期待を織り込みつつあります。

運賃値上げの概要:2026年3月から全国で実施へ

JR東日本は、国土交通省への申請を経て、2026年3月から全国的に運賃を改定する計画を発表しています。普通運賃で平均7.8%、通勤定期で約12%、通学定期で約4.9%の引き上げ。初乗り運賃も150円から160円に上がります。

さらに、割安だった「山手線内」「電車特定区間」を廃止し、幹線区分に統合。これにより、日常的に都心を移動する層への実質的な負担増が見込まれます。通勤定期の割引率も見直される方向で、長年続いた料金体系に大きな転換が訪れます。

豆知識:JRの運賃改定は「許可運賃制」であり、値上げには国交省の認可が必要。今回の改定は申請時点でほぼ承認済みであり、法的障壁はありません。

業績と市場見通し:売上は増えるが、コストも増える

2025年3月期までのJR東日本は4期連続の増収増益。営業収益は約2兆8,875億円、翌2026年には3兆円台を見込んでいます。コロナ後の人流回復、観光需要、沿線開発が追い風になっています。

一方で、設備投資・修繕コストの上昇も避けられず、「値上げ=利益増」とは限らない構造。市場もそれを理解しており、株価にはすでにポジティブな要素がかなり織り込まれています。

財務指標の現状:2025/10時点のPER・PBR・PSRから見た割高感

指標 数値 業界平均との比較
PER(株価収益率) 約17.9倍 鉄道業界平均12〜15倍より高い
PBR(株価純資産倍率) 約1.4倍 重資産業界では1倍前後が通常
PSR(株価売上倍率) 約1.4倍 通常0.8〜1.1倍程度

これらを総合すると、JR東日本の株価は「やや割高圏」にあるといえます。以下にその理由を整理します。

① PER:利益期待が高すぎる

PER17.9倍は、鉄道会社としては高水準。値上げ効果を市場がすでに先取りしており、実際の利益が伸び悩めば「過剰評価」と判断されかねません。

② PBR:資産バリューを超える評価

JR東日本は駅ビル・不動産を多く抱える「資産型企業」ですが、PBR1.4倍は純資産価値を40%上回る評価。将来の安定利益への信頼が高い反面、景気悪化で剥落しやすいリスクもあります。

③ PSR:売上に対して株価が先行

PSR1.4倍は鉄道業界の平均を上回り、売上に対して株価がやや割高。値上げで一時的に収益が増えても、エネルギーコストや人件費が吸収してしまう可能性があります。

投資判断:いまは、押し目待ちが無難

現状の株価は値上げ効果を織り込んだ「天井圏」にあり、短期での上昇余地は小さいと見られます。むしろ、決算発表や実際の値上げ後の利用動向を確認してからでも遅くはありません。

  • PER15倍・PBR1.2倍(株価3,100円前後)まで調整したら買いゾーン
  • 2026年3月の運賃改定後、実績利益が出る時期に再評価の可能性
  • 分散投資で「押し目買い」を狙うのが安全

今は割高だが強い局面

JR東日本は値上げによって確かに収益体質の改善が期待できます。しかし、すでに市場はその期待を織り込んでおり、短期での上値追いはリスクが高い状態です。

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