NTT(日本電信電話株式会社、9432)は、日本最大の通信インフラ企業であり、携帯通信(NTTドコモ)、固定回線(フレッツ光)、データセンター、クラウド、AI、IOWN構想といった次世代情報通信の中核を担う企業グループです。政府が筆頭株主である「国策銘柄」の代表格であり、安定性と成長性を兼ね備えています。
この記事では、最新決算・事業構造・中期戦略・株価評価を整理し、投資家視点での総合評価を行います。
① 最近の状況・決算ハイライト
2025年度第1四半期(4〜6月)決算
- 営業収益:3兆2,862億円(前年比 +1.6%)
 - 営業利益:5,778億円(前年比 +0.9%)
 - 当期利益(親会社株主):3,104億円(前年比 +2.8%)
 - フリーキャッシュフロー:7,126億円(堅調な資金創出)
 
携帯事業(ドコモ)と法人向けITサービス(NTTデータ・NTTコミュニケーションズ)が引き続き堅調。利益率は高い水準を維持しつつ、成長投資も継続しています。
通期見通し(会社計画)
- 営業収益予想:13兆1,000億円
 - 営業利益予想:1兆7,200億円
 - 当期利益予想:1兆2,000億円
 - EPS:160円前後を想定
 
通信業界の中でも圧倒的な規模と収益を維持しており、通期も安定した成長見通しを維持しています。
中期経営計画(IOWN構想とAI戦略)
- IOWN(Innovative Optical & Wireless Network)構想を推進し、光ベースの次世代通信を確立
 - 低遅延・超省電力の光伝送技術で2030年に世界展開
 - 生成AI「tsuzumi(ツヅミ)」を法人分野中心に展開
 - データセンター・クラウド・サイバー防衛を強化
 
政策・市場トレンド
- 半導体・AI投資支援の政府戦略と連動
 - 防災インフラ・通信安全保障の重要性から国策の後押し
 - 6G・海底ケーブル領域でも国際参加を拡大
 
② 事業ポジションと強み・課題
強み・成長ドメイン
- 圧倒的な通信基盤:国内インフラの中枢企業であり、通信トラフィックの多くを支える。
 - 収益の安定性:携帯・光回線のストック収益により景気耐性が高い。
 - 研究開発力:IOWN・光半導体など世界トップクラスの研究体制。
 - AI・クラウドの成長期待:国内AIプラットフォーマーとしての立場を確立しつつある。
 
豆知識:NTTは世界最大級の研究機関「NTT研究所」を持ち、ノーベル賞級の技術論文を多数発表。光通信の基盤技術の多くは実はNTT発です。
主な課題・リスク
- 通信料金規制リスク:政府主導の通信料金引き下げ圧力が継続。
 - 投資負担の増大:IOWN・データセンター・AI投資は資本負担が大きい。
 - 競争:AWS・Google Cloud・Microsoft Azureとの競争激化。
 - 株価ボラティリティ:個人投資家の増加により短期売買が増加。
 
③ 財務・バリュエーションスナップショット
- 株価水準(参考):約165円(2025年10月時点)
 - 予想PER:12〜13倍(割安圏)
 - PBR:約1.4倍
 - 配当利回り:2.8〜3.2%(連続増配+自社株買い方針)
 - 自己株式取得:年間約5,000億円ペースを継続
 
通信株のディフェンシブ性に加え、自社株買い・増配を継続する株主還元重視の姿勢が評価要因です。
④ 投資判断
堅実な中長期投資向け銘柄。ポートフォリオの「中核・守り」のポジションとして適性が高い。
注目の判断材料
- IOWNの実証実験フェーズから商用化進捗へ移行できるか
 - AI「tsuzumi」による売上寄与が見えるか
 - データセンター戦略の国際競争力
 - 政府の通信政策の影響度
 
投資スタンス案
| スタンス | 内容 | 
|---|---|
| エントリー | 150〜160円台は押し目買い水準 | 
| 利益目標 | 中期(2〜3年)で200〜230円を目安 | 
| 配当戦略 | 毎年の増配+自社株買い期待で長期保有に適性 | 
| ポジション比率 | 中核資産(コア)として安定ポジションに適用 | 
参考:NTTは政府保有比率が高く、政策連動性が強い銘柄。PBR1倍割れリスクは低く、長期的に資本効率向上も図っている。
通信株から「国家情報インフラ企業」へ進化、NTTの次の10年はIOWNとAIが主役
NTT(9432)は単なる通信企業ではなく、次世代ネットワークとAIを担う国家的テクノロジー企業へ変貌しつつあります。株価は短期的にはレンジ推移でも、中長期的には安定的に資産価値を積み上げられる銘柄です。
  
  
  
  
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