Spotifyは便利だが、文化保存装置ではないという現実

デジタルデータはすぐに消える 暇つぶし

Spotifyは日常に完全に溶け込んだ音楽サービスです。他の音楽サブスクも同様で、使っている人も多いのが現代です。

Spotifyは音楽を届ける仕組みではありますが、音楽文化を保存する仕組みではありません。この違いは普段意識されませんが、実はとても重要です。

2025年12月、Anna’s ArchiveがSpotify上の音楽データを大規模にバックアップした事実は、この違いをはっきりと示しました。

Spotifyは巨大だが、保存を目的としていない

Spotifyには約2億5600万曲もの楽曲が登録されています。この数字だけを見ると、音楽はすでに十分すぎるほど蓄積されているように見えます。しかし、Spotifyの役割は配信であり、保存ではありません。権利者との契約が変われば楽曲は消えますし、地域や時期によって聴けなくなることもあります。

これはSpotifyの問題ではありません。ビジネスとして正しい設計です。むしろ、永続性を約束しない点で正直です。問題は、利用者側が無意識のうちにSpotifyを巨大な音楽保管庫のように捉えてしまっていることです。

Anna’s Archiveは何をしたのか

Anna’s Archiveは、Spotifyのメタデータと音源を保存しました。対象となったメタデータは約2億5600万曲分で、音源ファイルは約8600万曲です。全体の曲数で見ると約37パーセントですが、再生数ベースでは約99.6パーセントをカバーしています。

この数字が示しているのは、ほとんどの人が実際に聴いている音楽体験は、すでに保存されたという事実です。一方で、ほとんど再生されていない楽曲は意図的に多くが除外されています。

なぜすべてを保存しなかったのか

ここが重要なポイントです。文化保存という言葉から、すべてを残す行為を想像しがちですが、現実はそう単純ではありません。人気度が極めて低い楽曲をすべて含めると、追加で700TB以上のストレージが必要になるとされています。

さらに、人気度0の領域には、品質が不安定な音源や自動生成されたコンテンツも多く含まれます。保存コストに対して文化的な価値が極めて低い場合、全体の持続性が損なわれます。Anna’s Archiveはここで割り切りを選びました。

  • 再生体験の大部分を守ることを優先した。
  • 物理的な保存コストを現実的な範囲に抑えた。
  • 文化保存を確率の問題として捉えた。

音楽は残っているようで、簡単に消える

CDが売られ、配信サービスが普及し、音楽は昔よりも安全になったと思われがちです。しかし実際には、特定の誰かが意識的に残さなければ、多くの音楽は静かに消えていきます。特に無名の楽曲や地域限定の音源は、その傾向が顕著です。

Spotifyは利便性を最大化した結果、利用者に安心感を与えました。しかし、その安心感は保存とは無関係です。Anna’s Archiveの行動は、その事実を静かに突きつけました。

豆知識:Spotifyの人気度は再生回数だけでなく、直近の再生状況も強く影響します。そのため、過去に聴かれていた楽曲ほど人気度が低く表示されやすい仕組みです。

これは音楽だけの話ではない

この問題は音楽に限りません。動画、文章、ゲーム、ソフトウェアも同じ構造を持っています。プラットフォームが巨大化するほど、そこにあること自体が永続性だと錯覚してしまいます。

しかし、保存されていないものは、ある日突然失われます。誰かが意図的に残さない限り、文化は自然には残りません。この点に気づけるかどうかで、デジタル文化との向き合い方は大きく変わります。

物の記録媒体がないと、あっという間になくなってしまうという問題は、だれかがバックアップしてくれるという解以外が出てくることを期待したいです。

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