任天堂(証券コード:7974)の株価が、2025年8月18日につけた年初来高値14,795円から、2026年2月25日現在の8,514円まで、わずか半年で約42%も下落しています。
Nintendo Switch 2の販売は絶好調で、発売からわずか数か月で累計1,737万台を突破し、任天堂のゲーム機史上最速ペースを記録しているにもかかわらず、です。
好調なのに株価が下がるという不思議な現象には、投資家心理と企業の収益構造、そして世界規模のコスト変動が深く絡み合っています。
まず現状を把握!任天堂株の基本データ(2026年2月25日現在)
現在の任天堂株がどんな状況にあるのか、まずは数字で確認しましょう。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 現在値(2/25) | 8,514円 |
| 年初来高値(2025/8/18) | 14,795円 |
| 年初来安値(2026/2/6) | 8,326円 |
| 高値からの下落率 | 約▲42% |
| 時価総額 | 約11兆92億円 |
| 予想PER | 27.16倍 |
| 予想配当利回り | 2.13% |
特に注目したいのは、2026年2月3日の決算発表後の動きです。売上高は前年同期比99.3%増、営業利益は21.3%増という大幅増収増益の決算だったにもかかわらず、翌日の株価は一時12.6%安という急落を記録しました。好決算でも株が売られるというのは、一見すると矛盾しているように見えますが、これには合理的な理由があります。
なぜ株価は下がり続けているのか?5つの要因を解説
要因1:メモリ価格の高騰が利益を直撃している
今回の株価下落を語るうえで外せないのが、半導体メモリ価格の急騰です。生成AIの爆発的な普及により、AIデータセンター向けのメモリ需要が急増しました。その結果、Switch 2に使われているようなコンシューマー向けメモリの調達コストが跳ね上がっています。
Switch 2の部品原価はすでに約400ドルと推測されており、特に価格を低く抑えている日本国内市場では作れば作るほど採算性が悪化するという構図が生まれています。2025年10月時点で約8,000円だったDDR5メモリ(16GB)の平均価格は、同年12月には3万5,000円前後まで急騰したという報告もあり、コスト圧力は深刻です。市場は「このコスト高が長期化するのでは?」という懸念を先取りし、株価に織り込みにいきました。
要因2:海外販売が想定を下回った
任天堂の売上の約7〜8割は海外から生まれています。Switch 2は日本国内では絶好調ですが、古川俊太郎社長自身が2月3日の決算説明会で「海外販売は当社想定と比べるとやや弱めの水準」だったと認めています。
利益率が相対的に高いアメリカやヨーロッパでの販売がカギを握るため、この発言は投資家にとって大きなマイナス材料となりました。ゲーム機の価格が高めに設定されているアメリカ市場では、需要の冷え込みが懸念されています。
要因3:ソフトウェアのラインナップへの不安
ゲームビジネスのキモは、実はハード(本体)ではなくソフト(ゲームソフト)にあります。ゲームメーカーは本体を普及させて、その後に利益率の高いソフト販売やライセンス収入で収益を回収するのが基本的なビジネスモデルです。
しかし、Switch 2の今後のソフトラインナップが手薄に見えることが、投資家の間で「ハードが売れても利益は伸びないのでは?」という不安を引き起こしています。「マリオカート」「ゼルダの伝説」など看板タイトルのリリース時期や内容が明確でないと、株価を押し上げるきっかけになりにくいのです。
要因4:業績予想を据え置いたことへの失望
2026年2月3日の決算発表では、好調な数字が並んでいたにもかかわらず、通期の業績予想が据え置かれました。市場はすでに上方修正を期待していたため、「修正なし」という結果が逆に失望売りを招きました。これはいわゆる「期待値超えの失敗」で、株価が先行して動く株式市場ではよくある現象です。
要因5:円高・マクロ環境のリスク
海外売上比率が高い任天堂にとって、円高は大きな逆風です。円高が1円進むごとに数十億円規模の利益影響があるとされており、2025年以降の円高基調は業績の下押し圧力となっています。また、トランプ政権の関税政策の不透明感や地政学リスクの高まりも、グロース株・エンタメ株全体への売り圧力となっています。
豆知識:「好決算でも株価が下がる」のはなぜ?
株価は「過去の業績」ではなく「将来への期待値」で動きます。市場がすでに好業績を織り込んで株価を上げていた場合、実際に好決算が出ても「想定通り」または「想定以下」として売られることがあります。これを「噂で買って、事実で売る」と呼びます。今回の任天堂はまさにこのパターンでした。
テクニカル面でも弱気シグナルが点灯中
チャート分析の観点からも、現在の任天堂株は逆風にさらされています。株価(8,514円)は25日移動平均線(9,297円)を約8.4%下回っており、「サイコロジカルライン」という直近の勝敗指標も4勝8敗(勝率33.3%)と売り優勢を示しています。短期的なモメンタム(勢い)は明確に下向きです。
ただし、テクニカル分析はあくまで過去のデータをもとにした参考指標であり、ファンダメンタルズの好転があれば状況は一変します。
では、株価が反転する可能性はあるのか?上昇のカタリストを探る
カタリスト1:メモリ価格の正常化(シリコンサイクル)
半導体市場には「シリコンサイクル」と呼ばれる3〜4年周期の好不況の波があります。現在はAI需要急増による高コスト局面ですが、各社が増産投資を進めているため、2027年以降には需給が緩和し、メモリ価格が落ち着くと予測する専門家も多くいます。コスト圧力が和らげば、Switch 2の採算性は一気に改善し、株価の大きな回復要因となり得ます。
ここが確認できれば、買いに転じてもよいと考えています。
カタリスト2:大型ソフトのリリースラッシュ
マリオ、ゼルダの伝説、ポケモン、スプラトゥーンなど、任天堂が持つIPは世界最強クラスです。これらの看板シリーズの新作がSwitch 2向けにリリースされ始めれば、ハードとソフトの相乗効果で売上が急拡大します。2026年3月期予想では増収率+101.7%という大幅回復が見込まれており、ソフトラインナップの充実が最大のカギとなります。
カタリスト3:映画・IP展開によるブランド価値のさらなる向上
2023年公開の「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が世界興収13億ドルを超える大ヒットを記録したように、任天堂のIP映像化戦略はブランド価値を高めます。今後はマリオやゼルダの映像プロジェクトの続報も期待されており、これらが発表されれば株価の上昇トリガーとなる可能性があります。
カタリスト4:財務の強さが下値を支える
任天堂は実質無借金経営で、自己資本比率は80.2%という驚異的な財務健全性を誇ります。手元には1兆7,000億円を超えるキャッシュがあり、今回のようなコスト高が数年続いたとしても、経営が揺らぐ心配はほぼありません。この安心感が長期投資家の支持を集めており、株価の下値を支える重要な要素となっています。また、配当性向57.7%・利回り2.13%の株主還元も魅力です。
カタリスト5:円安転換・リスクオン相場の回帰
円安に転換すれば、海外売上の円換算が膨らみ業績は大きく改善します。また、米国の金融政策転換などによりリスクオン相場が戻ってくれば、グロース株・エンタメ株への資金が流入し、任天堂株にも追い風が吹きます。
過去の事例:ニンテンドー3DSの教訓
2011年発売のニンテンドー3DSは、発売当初に大幅な値下げを実施し、一時的に赤字を計上しました。しかし、その後はソフトのヒットが続き、2013年には黒字へと転換。株価も大きく回復しました。「ハード普及期の一時的な赤字は通過点」というのはゲームビジネスの定石であり、Switch 2でも同じ展開が起きる可能性があります。
バリュエーションはどうか?現在の株価は割安なのか
| 指標 | 評価 |
|---|---|
| 予想PER(27.16倍) | Switch 2発売後の増益予想を織り込めば割安水準 |
| PBR(3.52倍) | IP・ブランド価値を考慮すると適正〜割安 |
| 配当利回り(2.13%) | ゲームセクターとして相対的に高水準 |
| ROE(13.4%) | 財務健全性は高く、資本効率には改善余地あり |
現在の予想PER27.16倍は、歴史的なレンジの中では特段に高いとも低いとも言いにくい水準です。ただし、26年3月期予想の増収率+101.7%が現実になれば、現在の株価水準はかなり割安に見えてくる可能性があります。
一方で、メモリ高騰が長期化した場合は増益幅が縮小するリスクも残ります。
注意すべきリスク要因もしっかり確認しよう
反転への期待がある一方で、以下のリスクも冷静に把握しておく必要があります。Switch 2の海外販売台数が市場予想を下回り続けた場合や、ソフトの供給が不足・品質問題が発生した場合は、さらなる下落圧力が生じます。また、スマートフォンゲームとの競合激化や、ソニー・マイクロソフトなど競合他社の攻勢、そして円高の進行による海外収益の目減りも引き続き注意が必要です。さらに、世界的なマクロ経済の悪化による消費者支出の縮小も、ゲーム機の販売には影響を与えます。
今の任天堂株は「通過点」か「落とし穴」か
今回の任天堂株の下落は、Switch世代交代という構造的な移行期に、メモリコスト高騰・円高・マクロリスクという複数の逆風が重なった結果です。ただし、任天堂の本質的な競争力は全く損なわれていません。
Switch 2は発売からわずか数か月で1,737万台を達成し、世界最強クラスのIPポートフォリオ、無借金で潤沢なキャッシュを持つ盤石な財務基盤、そして今後のソフトラインナップ拡充という反転材料が控えています。年初来高値から42%下落した現在の株価は、悪材料の多くを既に織り込みつつある水準とも言えます。
今後の最大の注目ポイントは、Switch 2向け大型ソフトのリリース動向、メモリ価格の落ち着き、そして海外市場での販売回復の3点です。この3つが揃い始めたとき、任天堂株は力強い反転の局面を迎えるかもしれません。引き続き情報をしっかりチェックしながら、動向を見極めていきましょう。

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