「ショベルカー」と聞いて、投資対象として思い浮かべる方は少ないかもしれません。でも、もしその会社が長野県の人口1万人あまりの町から製品の98%以上を海外に輸出し、欧州では業界2位・北米では5位のシェアを誇る「隠れたグローバル企業」だったとしたら、どうでしょう。
しかも15期連続で増配を続け、14年間で配当額を126倍に増やしてきたとなれば、一気に興味が湧いてきませんか。今回は、証券コード6432の竹内製作所を投資家目線で徹底解説します。知名度は低くとも、その実力は本物です。
「建機のベンツ」と呼ばれる理由
竹内製作所は1963年に長野県埴科郡坂城町で創業した、小型建設機械の専門メーカーです。主力製品はミニショベル(小型油圧ショベル)とクローラーローダーの2つで、どちらも世界で初めて開発・商業化した製品です。
欧米の建機ユーザーが竹内製作所の製品に付けた愛称が「建機のベンツ」です。欧米での年間稼働時間は約2,000時間と、日本の平均(500〜1,000時間)の2倍以上に及びます。そのような過酷な使用環境にも耐え抜く耐久性と、精密な操作性が高く評価され、プロの建機オペレーターたちの間でこの愛称が定着しました。
現在、東証プライム市場に上場しており、時価総額はおよそ3,400〜3,600億円規模。機械セクターの中堅企業として、知る人ぞ知る優良株として投資家の間で注目を集めています。
豆知識:ベルリンの壁崩壊でも大活躍した竹内製作所のミニショベル
1989年のベルリンの壁崩壊。あの歴史的な瞬間に、竹内製作所のミニショベルが壁の撤去作業に約40台投入されたことが世界中で話題になりました。大型重機が入れない狭い場所でも精密に動くことができる小型機だからこそ、歴史の舞台で活躍できたのです。この出来事が竹内製作所の欧州での知名度を一気に高めるきっかけになったといわれています。
たった3か月で「世界初」を生み出した男
竹内製作所の歩みは、現在の礎を築いた創業者の「現場主義」から始まります。1970年、住宅の基礎工事を手作業で行っていた知人から「手ごろなショベルカーを作れないか」という相談を受けたことがきっかけでした。当時のショベルカーはどれも大型で、狭い市街地や住宅の基礎工事ではスコップとツルハシで対応するしかなかった時代です。
創業者は相談を受けてからわずか3か月で、世界初のミニショベル「TB1000」を完成させます。「おもちゃみたいだ」「床の間にでも飾るのか」と周囲から笑われた小さな機械でしたが、現場の土木業者から圧倒的な支持を獲得。こうして「ミニショベル」という新しい市場そのものを生み出したのが竹内製作所なのです。
1993年には100円を超える超円高という逆風の中でも海外戦略に舵を切り、欧州市場の開拓に成功。1996年に英国、2000年にフランスへと販売子会社を展開し、今日のグローバル体制を着実に築き上げてきました。
安定した収益力とPERの割安感
竹内製作所の業績は、直近でも力強い成長を続けています。2025年2月期(前期)の実績として、売上高は約2,155億円、経常利益は約373億円を計上しました。
2026年2月期(今期)の会社予想では、売上高2,230億円・営業利益380億円を見込んでおり、増収増益の継続を想定しています。第3四半期累計の時点で経常利益の通期計画に対する進捗率が88.2%に達しており、過去5年平均の77.6%を大きく上回るペースで推移しました。
投資指標の観点でも竹内製作所の魅力は際立っています。ROEは約15〜18%と高水準を維持しており、自己資本比率は76.7%と財務の健全性も抜群です。PERは時期によって8〜13倍前後と、同業他社や市場平均と比較しても割安圏での推移が続いており、バリュー投資家からの関心も高まっています。
| 主要指標 | 数値 | 評価コメント |
|---|---|---|
| 売上高(2026年2月期予想) | 2,230億円 | 増収継続 |
| 営業利益(2026年2月期予想) | 380億円 | 増益継続 |
| ROE(実績) | 約15〜18% | 高い資本収益性 |
| 自己資本比率 | 76.7% | 財務健全性が高い |
| PER(予) | 約8〜13倍 | 割安圏での推移 |
| 配当利回り(予) | 約3〜4% | 高利回りかつ増配継続 |
14年で配当額が126倍になった理由
竹内製作所の配当履歴は、投資家にとって目を疑うような数字が並んでいます。2025年10月に発表された内容によると、2026年2月期の予想配当は1株あたり210円(前期比10円増)。これにより15期連続増配が達成される見込みです。
驚くのはその伸び幅です。増配を開始した頃の配当額と比較すると、14年間で配当額は実に126倍にまで増加しています。業績の拡大に素直に連動して株主還元を引き上げ続けてきた結果であり、経営陣の株主に対する誠実な姿勢が数字に表れています。
配当方針としては、連結配当性向40%を目標として段階的に引き上げていく方針を公式に明示しています。2025年2月期の配当性向は36.2%程度であることから、今後も利益成長に伴う増配の余地が残されており、長期保有のインカム投資家にとっては魅力的な銘柄といえます。
なお、竹内製作所は株主優待の設定がない点はあらかじめ把握しておきましょう。その分、配当に集中して株主還元を行うスタイルです。
豆知識:配当利回りの計算で「お得度」を確認しよう
配当利回りとは、1株あたり配当金を現在の株価で割った数値です。たとえば株価が5,000円で年間配当が210円であれば、配当利回りは約4.2%となります。東証プライム市場の平均配当利回りがおよそ2.3〜2.5%前後であることを考えると、竹内製作所の利回りは市場平均を大きく上回る水準といえます。長期保有で配当収入を積み上げながら、株価上昇も狙えるのがこの銘柄の魅力のひとつです。
なぜ長野から世界へ?竹内製作所の圧倒的な強み
海外売上高比率98%超という数字は、日本の上場企業の中でも異例の高さです。なぜ長野県の小さな町で生産するメーカーが、世界市場でこれほどの存在感を発揮できているのでしょうか。その背景には3つの構造的な強みがあります。
強み1:「壊れない」製品への徹底したこだわり
欧米の建設現場では年間稼働時間が2,000時間を超えます。竹内製作所はこの過酷な使用条件に耐えられるよう、部材の板厚の見直しや精密な耐久試験を繰り返し、「まず壊れない」製品づくりを徹底してきました。工場内では無人のミニショベルが何千時間もひたすら旋回を繰り返すという独自の耐久試験が行われており、品質へのこだわりはものづくりの現場に根付いています。
強み2:長野一拠点での生産という逆転の発想
欧米という主要市場にあえて工場を作らず、長野県坂城町の本社工場に生産を集中させています。現地に工場を作るほうが輸送コストや関税面でメリットがある場面も多い中、この選択は「品質管理の一元化」と「熟練技術者による安定した製造」を優先した戦略です。世界中のディストリビューターから吸い上げた現場の声を即座に製品開発に反映できる体制が、競争力を支えています。
強み3:商社を通さない直販ネットワーク
竹内製作所は商社を介さず、建機関連の展示会や見本市を積極的に活用して直接ディストリビューターと関係を構築してきました。アメリカ・英国・フランスに現地法人を設立し、世界各国の現地に精通したディストリビューターと一体となった販売・アフターサービス体制を整えています。この体制がスピーディなサービス提供を可能にし、ブランドへの信頼を積み上げてきました。
電動建機と脱炭素への挑戦
投資家が中長期の視点で注目したい動きが、電動建機分野での先行者優位です。竹内製作所は2021年7月に日本初のリチウムイオン電池式ミニショベル「TB20e」を発売しました。
TB20eの特徴は、同クラスのディーゼルエンジン式と同等のパワーを保ちながら、1回の充電で最大8時間稼働できる点にあります。作業中のCO2排出ゼロ、低騒音・低振動の特性を活かし、都市部の夜間工事や地下・屋内工事での需要が想定以上に旺盛とのことです。
さらに2023年には国土交通省が創設した「GX建設機械認定制度」の初回認定第1号を取得しました。GX(グリーントランスフォーメーション)の追い風を受け、電動建機の普及が加速すれば、先行者として大きなビジネスチャンスが生まれます。脱炭素に向けた世界的な規制強化の動きは、竹内製作所にとって追い風となる可能性を秘めています。
| 分野 | 取り組み内容 | 投資家視点での意義 |
|---|---|---|
| 電動化 | 電動ミニショベルTB20eを日本初発売 | 脱炭素需要の先行獲得 |
| 認証取得 | 国交省GX建機認定を制度初の第1号で取得 | 政府支援の恩恵を先行享受 |
| アフタービジネス | 保守パーツ・サービス事業の拡大 | 安定した収益ストリームの多様化 |
| 販売網強化 | 米国子会社の敷地拡張・保守トレーニングセンター開設 | 北米での顧客基盤のさらなる強化 |
確認したいリスク
魅力的な銘柄であっても、リスク面を把握しておくことは長期投資家の基本です。竹内製作所には主に3つのリスク要因があります。
最大の注意点は為替リスクです。売上高の98%以上を海外で稼ぐため、円高局面では円換算の業績が大きく目減りします。特に対ドル・対ユーロの動向は業績に直接影響を与えます。2026年2月期においても、米国の追加関税の影響で一部四半期に減益が生じた経緯があります。
次に建設需要の景気循環リスクがあります。建設機械は景気の浮き沈みを受けやすいセクターです。欧米での住宅・建設投資が停滞すると、ミニショベルの需要が急速に落ち込む可能性があります。
また、競合激化リスクも見逃せません。クボタ、コマツ、キャタピラー(米国)、ボブキャット(米国)などの強力な競合がひしめく中で、差別化を維持し続けることが常に求められます。特にクボタはミニショベルの世界首位として強大な競争相手です。
地方発・世界シェア企業の「稼ぐ力」と「還元力」の両立
竹内製作所(6432)を投資家目線で整理すると、その魅力は大きく3点に集約されます。
第一に、海外売上高比率98%超というグローバル体制と、欧州2位・北米5位という確固たる市場ポジションです。コマツやキャタピラーといった巨人たちと真正面から競い合い、プロから「建機のベンツ」と称される製品力は本物です。
第二に、15期連続増配・14年で配当126倍という驚異の株主還元実績です。業績成長に素直に連動した増配姿勢は、長期投資家にとって非常に信頼性の高い指標です。
第三に、自己資本比率76.7%という盤石な財務基盤です。景気後退局面でも内部留保と財務の強さで耐え抜ける体力を持っています。そこに電動建機という次世代の成長ドライバーが加わり、長期視点での成長ストーリーが描けます。
日本ではほとんど知られていない企業が、長野の山あいから世界の建設現場を支えている。そんな「知る人ぞ知る」銘柄だからこそ、投資家としての目利き力が試されると感じませんか。


コメント