ひふみマイクロスコープproが選んだ10社を徹底考察!レオスのプロが見つけた小型株の原石

ひふみマイクロスコープpro 株式

「ひふみマイクロスコープpro」は国内の小型株に特化し、まだ多くの投資家に気づかれていない成長企業を発掘するアクティブファンドです。

レオス・キャピタルワークスが2024年3月に設定したこのファンド、2026年3月末時点の基準価額は11,617円で、設定来の騰落率は+16.17%とTOPIX(+36.09%)に対してアンダーパフォームしています。ただしこれは、2026年3月に中東情勢(イラン情勢の悪化・ホルムズ海峡封鎖懸念)による株安局面で、流動性の低い小型株を中心に売却を進め現金比率を高めた結果です。

第1位 トライアルホールディングス(証券コード:141A 組入比率3.73%)

「日本のウォルマートを目指す、AIスマートスーパー」

九州を地盤とするディスカウントスーパーのトライアルホールディングス。食品、日用品、衣料品まで幅広く揃え、安さと利便性で顧客を集めてきた企業です。しかしこのファンドが注目するのは、単なるディスカウンターではなくリテールAI企業としての側面です。

同社はウォルマートのデジタル戦略に刺激を受け、独自の「Skip Cart(スキップカート)」を開発しました。決済機能を内蔵したスマートカートで、商品を入れながら自動的に精算できるため、レジに並ぶ必要がありません。2025年6月末時点で導入店舗数は258店舗、導入台数は2万1,561台に達し、月間450万人が利用しています。また、カメラ認識による棚管理システムや、購買データを活用した「MD-Link」というデータ分析プラットフォームは288社が活用するほど普及しています。

2025年には西友を完全子会社化し、売上高は前年同期比67%増の規模へと急拡大しました。西友との統合によるシナジー効果と、AI技術を活用した店舗運営のモデルを全国へ横展開できるかが、今後の見どころです。

豆知識:スキップカートって何がすごいの?

トライアルのSkip Cartは、カートに搭載されたスキャナーで商品をスキャンしながら買い物でき、会計時はカートでそのまま精算できます。レジの列に並ぶストレスがゼロになるだけでなく、店側はレジ業務の人件費を大幅に削減できます。さらにカートに内蔵されたデジタルサイネージで広告を流す収益モデルも持っており、ただの「スマートカゴ」ではなく「動くメディア」として機能しています。

第2位 セリア(証券コード:2782 組入比率3.65%)

「値上げしない100円ショップ、逆境で磨かれた商品企画力」

岐阜県に本社を置く100円ショップ大手のセリアは、業界2位の企業です。ダイソーが300円以上の高価格帯に軸足を移しつつある中、セリアは「純粋な100円ショップ」路線を徹底的に貫くという独自の道を選んでいます。

インフレ下でも100円を維持できるのは、緻密なコスト管理と商品の選択と集中によるものです。採算の取れない商品は潔くラインナップから外し、1円単位で包装コストを削り、POSレジを早期から積極活用してデータで売れ筋を把握する。そうした地道な積み重ねが、他社が苦しむ局面でも増収増益を実現する体力を支えています。2025年度上期は売上高が前年同期比4.7%増の1,213億円、営業利益が9.2%増と堅調な伸びを見せました。

特に雑貨の商品企画力は業界でも高く評価されており、「100円でこのクオリティ?」と消費者を驚かせる商品を生み出し続けています。インバウンド需要を取り込む観光地出店も進んでいます。

第3位 MTG(証券コード:7806 組入比率2.95%)

「ReFaとSIXPADで過去最高益、ブランド力で勝つファブレスメーカー」

「ReFa(リファ)」の美容ローラーや、「SIXPAD(シックスパッド)」のEMS機器で知られるMTGは、自社工場を持たないファブレス型の健康美容メーカーです。製品の企画・ブランディングに集中し、製造は外部に委託することで、高い機動性と収益性を両立しています。

2025年9月期の連結決算は売上高が前年同期比37.5%増の988億円、営業利益は225%増の106億円という驚異的な成長を遂げ、いずれも過去最高を更新しました。けん引役はReFaのヘアケア製品で、ドライヤーやヘアアイロン、シャンプーなどが軒並み好調です。ReFaのコームは月間30万本が売れると報じられるほどの人気です。2026年9月期も売上高1,200億円、営業利益130億円を計画しており、成長が続いています。

さらに2025年7月から本格展開を開始した新ブランド「ReD(レッド)」は、疲労回復・ボディメンテナンスに特化したリカバリーウェアブランドで、発売初月で10万枚超を販売。JAL国際線ファーストクラスへの採用や、レクサスとのコラボなど高級志向の販路も開拓しています。

豆知識:ファブレス経営のメリットとは?

ファブレス(Fabless)とは「工場(Fabrication facility)を持たない」という意味です。工場を持つ必要がないため、巨額の設備投資や固定費が不要。市場のトレンドに合わせて素早く商品ラインナップを変えられる柔軟性が強みです。アップルも実はファブレス企業で、iPhoneの製造は台湾の鴻海(ホンハイ)などに委託しています。MTGは日本版アップルモデルの健康美容版といえます。

第4位 岡野バルブ製造(証券コード:6492 組入比率2.69%)

「原発・火力発電所の心臓部を守る、ニッチ最大手の特殊バルブメーカー」

岡野バルブ製造は、電力会社の原子力発電所や火力発電所で使われる、大型で高温・高圧環境に耐える特殊バルブの専門メーカーです。発電所向けの特殊バルブでは国内草分けかつ最大手という圧倒的なポジションを築いており、技術力の高さで業界に定評があります。

発電所のバルブは一般的なバルブとは次元が違います。数百度の蒸気や高圧水が流れる配管を制御するため、数センチでも誤差があれば重大事故につながりかねません。そのため一度納入した発電所との取引関係は長年にわたり継続し、メンテナンス・交換需要も安定的に発生します。中東情勢を背景にエネルギー安全保障の重要性が高まる中、既存の発電設備の稼働継続・保守需要は増加傾向です。脱炭素に向けた電源構成の変化の中でも、安定した電力供給を担う特殊バルブの需要は続きます。

第5位 ジェイ・エス・ビー(証券コード:3480 組入比率2.48%)

「ほぼ100%満室の学生専用マンション、業界トップシェアの不動産企業」

「UniLife(ユニライフ)」ブランドで学生専用マンションを展開するジェイ・エス・ビーは、1976年に京都で創業した学生向け不動産の老舗です。2025年10月期の管理戸数は99,300戸と業界第1位を誇り、毎春ほぼ100%の入居率を維持しています。

一般の賃貸マンションと大きく異なるのは、入居者を学生に限定することで生まれる安心感とサービスの充実です。防犯カメラ・オートロックの完備、食事付きプランの提供、合格前予約制度(入試前から部屋を確保できる)など、「親元を離れる学生と心配な保護者」の両方に刺さるサービスが満室稼働を支えています。全国約1,000校の大学・大学生協との連携ネットワークも他社の追随を許しません。

18歳人口の減少という逆風は確かに存在しますが、市場シェアが約5%にとどまっているため、シェア拡大によって十分な成長余地があります。また、留学生の増加が新たな需要として加わっており、構造的なビジネスモデルの強固さが評価されています。

第6位 帝国繊維(証券コード:3302 組入比率2.44%)

「明治創業の麻糸メーカーが防災インフラ企業に変身、空港・原発を守るホース」

明治17年(1884年)創業という140年以上の歴史を持つ帝国繊維は、もともと麻糸の紡織メーカーでした。転機は1995年の阪神淡路大震災です。この惨事を受け、防災・減災への貢献を使命として掲げ、消防用ホースをはじめとした防災関連製品へと事業の軸を移しました。

現在は消防用ホースで業界トップシェアを誇るだけでなく、空港や原子力発電所などの重要インフラ向け機材においても確固たる地位を持ちます。日本全国の消防署に自社製品が納入されており、一度採用されれば長年にわたり補充・交換需要が継続するストック型のビジネス性があります。近年は能登半島地震など自然災害が相次いでいることから、防災インフラへの社会的需要はむしろ高まっています。繊維という地味なイメージとは裏腹に、社会の命綱を作り続ける企業です。

豆知識:消防ホースって何でできているの?

現代の消防ホースは、外側が合成繊維の織布、内側が合成ゴムや合成樹脂でコーティングされた構造になっています。高い水圧に耐えながら軽量で折りたたみやすく、素早く展開できることが求められます。帝国繊維はこの繊維技術と防水コーティング技術を長年磨いてきており、創業時の麻糸加工技術がルーツになっているというのは歴史のおもしろさです。

第7位 カーリット(証券コード:4275 組入比率2.41%)

「車の発炎筒から防衛省のミサイルまで、国内唯一の過塩素酸アンモニウムメーカー」

カーリットは、自動車の発炎筒や産業用爆薬で知られる化学メーカーです。「カーリット」という社名は、同社の主力製品である「カーリット爆薬」に由来しています。一見すると地味な存在に見えますが、今まさに脚光を浴びている理由があります。

それは「過塩素酸アンモニウム」の国内唯一の製造メーカーであるという事実です。過塩素酸アンモニウムは、H3ロケットやイプシロンロケットの補助ブースターに使われる固体燃料の主原料(燃料の約70%を占める)で、防衛省向けのミサイルにも不可欠です。東アジアの安全保障環境が緊迫化する中、防衛省向けの固体推進薬需要が急増しており、カーリットは製造能力増強のための設備投資を決定しました。この設備投資には防衛省からの初期投資費用(初度費)が充当されるほどで、国の安全保障政策と直結した成長ストーリーを持つ企業です。

月次レポートでもカーリットは特集「組入銘柄のご紹介」に選ばれており、ファンドマネージャーが特に注目する銘柄の一つです。発炎筒や飲料ボトリング事業という安定収益の柱を持ちながら、防衛・宇宙という成長領域で独占的地位を持つ構造は、投資妙味が高いと判断されているようです。

第8位 テスホールディングス(証券コード:5074 組入比率2.39%)

「再生可能エネルギーの設計・施工から発電事業者まで、系統用蓄電池で急成長」

テスホールディングスは、再生可能エネルギー関連の設計・発注・施工を請け負うEPC企業(Engineering, Procurement, Construction)でありながら、自社でも発電設備を保有して電力を売る発電事業者でもあるという、二刀流の収益モデルを持ちます。バイオマス発電所や太陽光発電所の建設・運営を手がけてきました。

直近で最も注目されているのは系統用蓄電池の受注急増です。再生可能エネルギーの普及が進む中、太陽光や風力の出力変動を吸収するための蓄電池を電力系統に設置する需要が爆発的に増えています。テスホールディングスはこの系統用蓄電池の設計・施工を手がけており、受注残が急増しています。電力の安定供給と脱炭素化という社会的要請の両方を同時に解決するビジネスに直結しているため、中期的な成長期待が大きい企業です。

第9位 リンクアンドモチベーション(証券コード:2170 組入比率2.35%)

「従業員エンゲージメントで企業を変える、人的資本経営の支援コンサル」

リンクアンドモチベーションは、「従業員のモチベーション」に着目した組織コンサルタントです。主に人事・採用戦略や組織づくりの支援を行い、「人的資本経営」という経営手法を実践したい企業を支援しています。

日本では近年、企業の「人的資本」(従業員のスキル・モチベーション・エンゲージメント)への投資を開示・重視することが機関投資家や行政からも求められるようになりました。その潮流にぴったり合った事業を展開するリンクアンドモチベーションへの引き合いは強まっています。高ROEを維持しながら、増配や自社株買いを通じた積極的な株主還元にも取り組んでいる点も投資家に評価されています。

第10位 日本ドライケミカル(証券コード:1909 組入比率2.08%)

「データセンター向け消火設備で急成長、施工能力不足が生み出す選別受注の妙」

日本ドライケミカルは、消火設備などの防災機器の製造・施工を手がける企業です。従来は一般的な消火設備が主力でしたが、近年はデータセンター向けの特殊消火設備で急成長しています。

データセンター内のサーバーが火災になった場合、水では機器が壊れてしまいます。そのため人体への影響が少なく、サーバーを濡らさない「窒素ガス系」などの特殊消火設備が必要です。AIブームによるデータセンターの新設・増設ラッシュを背景に、この特殊消火設備の需要が急増しています。さらに、設備工事業界全体で施工能力がひっ迫しているため、日本ドライケミカルは受注を選別できる立場になっており、採算性の高い案件だけを請けることで工事採算性も向上しています。

豆知識:なぜデータセンターは「水で消してはいけない」のか?

データセンターには無数のサーバーが稼働しており、水をかけると電気系統がショートして壊滅的なダメージを受けます。そのため、窒素ガスやフッ素系ガスなどの「ガス系消火設備」が使われます。これは火の周囲の酸素を薄めることで燃焼を止める仕組みで、サーバー本体を傷めません。データセンターが世界中で急増している今、この「特殊な消し方」を知っている企業の価値は高まる一方です。

10銘柄を俯瞰する:ひふみマイクロスコープproの投資哲学とは

10社を改めて並べてみると、ひふみマイクロスコープproの投資哲学が見えてきます。

テーマ 該当銘柄
AI・DXによる小売・サービスの変革 トライアルHD、セリア、リンクアンドモチベーション
防衛・安全保障・防災インフラ カーリット、帝国繊維、岡野バルブ、日本ドライケミカル
エネルギー転換・脱炭素 テスホールディングス
ブランドと商品力で差別化 MTG、ジェイ・エス・ビー

特に注目すべきは、防衛・安全保障関連が4社もランクインしていることです。東アジアの地政学的リスクの高まりを受け、ファンドマネージャーが明確に「防衛関連や個別材料のある銘柄については買い増しを行なった」とレポートに記しています。社会が不安定なときほど、防衛・防災・インフラに携わる企業は見直される。これは逆張り的な発想ながら、ファンドの長期リターンを支える重要な視点です。

また、トライアルHDやセリアのように「AI・DXで既存ビジネスを変革する」小売業への注目も光ります。一見すると地味な小売業も、テクノロジーを自前で開発・実装できる企業は競合との差別化を持続できます。これは「リテールAI」という新しいビジネスモデルの萌芽でもあります。

「小さくて知らない」が最大の武器になる

ひふみマイクロスコープproの組入10社は、いずれも生活の中で名前を見かける機会が少ない企業ばかりです。でも消防ホース、学生マンション、バルブ、消火設備、過塩素酸アンモニウム。これらは社会が機能し続けるために絶対に必要なものです。

小型株投資の醍醐味は、「まだ誰も気づいていない成長の芽」を早期に発見することにあります。ひふみのファンドマネージャーたちは、毎月企業に足を運び、経営者の言葉を聞き、事業の本質を見極める作業を地道に続けています。そのプロセスの結晶がこの10社です。

月次レポートを読む習慣をつけることは、プロの投資視点を学ぶ最良の教科書になります。ぜひ毎月の銘柄紹介を追いながら、ファンドマネージャーの目線で日本の小型株市場を眺めてみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました