エレベーターで稼ぐ、でも方法が全然違う!エレベーターアセットとジャパンエレベーターサービスのビジネスモデルを徹底比較

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最近、エレベーターという設備を金融商品や広告メディアとして捉え直す会社が登場しています。それがエレベーターアセット株式会社です。

一方、独立系メンテナンス会社として東証プライムに上場し、保守契約台数を急拡大させているのがジャパンエレベーターサービスホールディングス(JES、証券コード:6544)です。同じエレベーターで稼ぐ会社でも、収益の仕組みはまるで別物。この記事では、2社のビジネスモデル、稼ぎ方の違い、そして成長性とIPOの可能性まで、わかりやすく掘り下げていきます。

そもそも2社は何をしている会社なのか

まず、それぞれの会社が誰に、何を売っているのかを整理します。ここを押さえると、その後の比較がグッとわかりやすくなります。

エレベーターアセット:設備を資産として再定義する会社

エレベーターアセット株式会社は2024年3月に設立された新興企業で、公式サイトではエレベーターリース事業・エレベーター共同事業・エレベーター広告事業の3本柱を掲げています。

リース事業では、建物オーナーが所有するエレベーターを同社が買い取り、リース形式で貸し出す仕組みを提供しています。オーナー側は設備を現金化でき、維持管理の一部負担を軽減できるという提案です。共同事業では、エレベーターという実物資産をベースにした共同運用スキームを組み、投資家に参加機会を提供します。広告事業では、エレベーターかご内の空間をデジタルサイネージや広告面として活用し、広告主から収益を得る構造です。

一言で言うと、エレベーターを設備ではなく資産・金融商品・広告面として価値づけし直す会社です。2024年11月に広告関連の特許を取得し、同12月から2025年1月にかけてJESグループおよびJES本体と業務提携契約を締結、2025年4月には出前館への広告掲載も開始しています。関連会社として合同会社エレベーターファンドも設立しており、金融・広告・アセット流動化を組み合わせた独自モデルを構築中です。

ジャパンエレベーターサービス(JES):保守契約の積み上げで稼ぐ会社

JESは2007年設立、2019年に東証マザーズ(現グロース)上場、その後プライム市場に移行した独立系エレベーターメンテナンス会社です。日本国内には約120万台のエレベーターが稼働しており、その多くはオーナーが三菱・日立・東芝・オーチス・シンドラーといったメーカー系保守会社と契約しています。JESはそこにメーカー同等品質をリーズナブルな価格でと切り込み、保守契約台数を増やし続けてきた会社です。

売上の中心は保守・保全業務(エレベーターを安全に動かし続けるための定期点検・部品交換)とリニューアル業務(老朽化した設備の更新工事)です。契約台数が増えるほど売上基盤が太くなり、修理・部品供給・リニューアルへと横展開できる、典型的なストック型のビジネスモデルです。

豆知識:独立系とメーカー系の違い

エレベーターの保守会社にはメーカー系と独立系があります。メーカー系は三菱・日立・東芝などメーカーの系列子会社で、自社製品の保守を得意とします。独立系はJESのように特定メーカーに縛られず、複数メーカーの機種に対応できる会社です。独立系は価格競争力を武器にシェアを拡大しやすい一方、部品調達や技術習得の難しさも抱えています。

2社のビジネスモデルを5つの軸で比較する

同じエレベーター周辺のビジネスでも、稼ぎ方の構造はまったく異なります。以下の表で5つの軸を一気に比較してみましょう。

比較軸 エレベーターアセット ジャパンエレベーターサービス(JES)
誰から稼ぐか 建物オーナー・投資家・広告主の3方向 マンション管理組合・ビルオーナー・施設管理者
何を提供するか 設備の現金化・投資機会・広告面 安全な稼働維持・修理・設備更新
収益の性質 案件ごとの組成・販売型(金融・広告商品寄り) 契約台数の積み上げによるストック型
広告事業の位置づけ 本業の3本柱のひとつ 周辺の成長事業(LiftSPOT等)
強みの源泉 設備の資産化・金融化・広告化という新しい価値づけ 独立系の価格競争力・全国拠点・技術標準化

誰からお金をもらうか:3方向 vs 1方向

エレベーターアセットの収益源は、建物オーナー(リース・現金化)、投資家(共同運用)、広告主(エレベーター内広告)の3方向に分散しています。これはビジネスが軌道に乗れば複数の収益エンジンを持てるという強みがある一方、3つのビジネスを同時に育てる難しさもあります。

JESの収益源は明快で、建物オーナー・管理組合・施設管理者が主な相手です。保守契約を結んだ瞬間から月次・年次で安定した収益が積み上がり、そこに修理・部品・リニューアルの追加収益が乗る構造になっています。シンプルゆえに再現性が高く、M&A(他社買収)でも台数を積み増しやすいです。

収益の性質:フロー型 vs ストック型

エレベーターアセットの収益は、リースの組成・共同運用スキームの販売・広告枠の販売といった案件ベースの要素が強く、金融商品や広告商品に近い性質があります。案件を積み重ねることで成長しますが、保守契約のような純粋な積み上げ型とは少し異なります。

JESは典型的なストック型ビジネスです。2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)時点で国内保守契約台数は12万3,370台に達し、1四半期でほぼ1万台をオーガニック(M&Aなし)で純増させています。契約台数が増えるほど売上の土台が厚くなり、業績が安定するという好循環を生んでいます。

JESの業績は本当に伸び悩みなのか

冒頭でJESは上場済みで伸び悩みという印象があることに触れました。しかし、業績と株価は別の話です。この2つを混同すると誤った判断につながるので、しっかり分けて見ていきましょう。

事業業績:過去最高を連続更新中

2025年3月期の連結業績は、売上高493億7,500万円、営業利益86億2,400万円でいずれも過去最高を更新しました。2026年3月期の通期業績予想は売上高565億円・営業利益106億円で、これも過去最高の見通しです。

第3四半期(2025年4〜12月)の累計実績を見ると、売上高は前年同期比16.9%増の415億4,600万円、営業利益は同28.5%増の78億6,600万円となっており、通期業績予想に対する進捗率は74%と順調な水準です。JES自身も極めて順調な拡大続くとコメントしています。事業として伸び悩んでいるという表現は、現時点では当てはまりません。

株価:成長をかなり織り込んでいる

株式市場がすでに高い成長を相当織り込んでいます。2026年4月17日時点の株価はPER(株価収益率)約45倍という水準にあり、ビジネス自体の好調さに対して株価が先行している状態です。

平たく言うと、会社は順調に成長しているが、それ以上の成長を株価が先取りしてしまっているため、さらなる株価上昇には次の成長材料が必要という構図です。事業は伸びている、でも株のリターンを出すのは難しくなってきている、というのが正確な表現です。

豆知識:PER(株価収益率)とは

PERとは株価 ÷ 1株あたり利益で計算される指標で、投資家がその会社の利益1円に対していくら払っているかを示します。一般的に日本株の平均PERは15〜20倍程度と言われ、PER45倍は市場が高い成長を期待している状態を意味します。成長期待が高い分、期待を下回ると株価が大きく下落するリスクもあります。

エレベーターアセットにIPO(株式上場)の予定はあるか

設立からまだ2年足らずのエレベーターアセットについて、IPO(新規株式公開)への動きがあるかどうかは多くの人が気にするところです。

現時点では、エレベーターアセットの公式サイトにはIPOや上場スケジュールの公式な発表はありません。確認できるのは、設立・資本金(1,200万円)・事業内容・許認可・関連会社・沿革という基本情報のみです。一方、採用関連の情報源では第二種金融商品取引業取得準備中という記載が確認されており、法的な整備を進めながらビジネスを拡張しようとしていることはうかがえます。

ただし、IPOを目指す会社が上場準備を公表するのは通常、証券会社の引受審査が進んでからです。現段階でIPO予定があると断言できる公開情報はなく、将来的に上場を視野に入れている可能性はあるが未確認というのが正確なところです。

どちらが伸びるビジネスか

2社を比較し評価をまとめます。

安定成長ならJES

事業の再現性・継続性・規模という観点では、JESに分があります。保守契約という安定したストック収益があり、M&Aと有機成長の両輪で台数を積み増せる構造は、業績の予測可能性が高いです。2026年3月期も営業利益率はのれん償却前で19.4%という高水準を維持しており、収益性と成長を両立している点は評価に値します

課題は株価バリュエーションの重さです。事業は好調でも、PER45倍という高い評価が続くためには、現在の成長率を維持し続ける必要があります。

ハイリスク・ハイリターンならエレベーターアセット

エレベーターアセットは、設備の資産化・金融化・広告化という新しいコンセプトが軌道に乗れば、ゼロに近い母数から急角度で成長する可能性があります。JESとの業務提携は、エレベーターの現場基盤へのアクセスという点で大きなアドバンテージになり得ます。

一方で、資本金1,200万円の設立2年目の会社であり、ビジネスモデルの再現性・投資家募集の規制対応・案件継続獲得力といった不確実性は大きいです。現時点で成功する確率が高いとは言い切れません。夢は大きいが、検証がまだ足りない、というのが正直な見立てです。

評価軸 エレベーターアセット JES
事業の安定性 未検証(創業2年目) 高い(ストック型・過去最高更新中)
成長の伸び率ポテンシャル 高い(母数が小さい分、倍率は大きくなりやすい) 中程度(すでに規模があるため高倍率は出にくい)
リスクの大きさ 高い(規制・案件獲得・資金力の不確実性) 中程度(株価の高バリュエーションリスク)
IPO・上場状況 非上場・IPO予定未公表 東証プライム上場済み(6544)

2社の関係に注目:ライバルではなく提携先

実は2社の関係で見落とせないのは、2024年12月〜2025年1月にかけてエレベーターアセットとJESが業務提携しているという事実です。JESはエレベーターの現場・設備・顧客基盤を持ち、エレベーターアセットはその上でリース・投資・広告というレイヤーを重ねる関係性と見ることができます。

つまり、両社は競合ではなく、インフラを整えるJESとそのインフラの上で金融・広告価値を乗せるエレベーターアセットという役割分担になっている可能性があります。エレベーターアセットが成功するためには、JESのような現場基盤を持つパートナーとの協力が不可欠であり、その点でこの提携は戦略的に理にかなっています。

関連情報:エレベーター広告市場の可能性

中国ではエレベーター広告市場が大きく成長しており、新潮伝媒(フォーカスメディア)という会社がエレベーター内デジタルサイネージで巨大なビジネスを作りました。日本でもエレベーターの待ち時間・移動時間を広告接触機会として活用する動きは広まりつつあります。エレベーターアセットが目指すビジネスモデルは、この中国発のエレベーター広告プラットフォームの日本版とも言えます。

同じエレベーターでも、稼ぎの仕組みはまるで別物

エレベーターアセットとジャパンエレベーターサービスは、どちらもエレベーターをビジネスの起点にしながら、まったく異なる経済ロジックで成り立っています。

JESはエレベーターを安全に動かし続ける保守契約の積み上げで、再現性の高いストック型ビジネスを構築し、上場企業として業績を拡大し続けています。一方エレベーターアセットはエレベーターという空間・設備に金融・広告価値を重ねるという、従来にないアプローチで市場を切り拓こうとしている新興企業です。

2社が提携していることも踏まえると、この業界は保守・運用のJESと価値の上乗せを狙うエレベーターアセットという分業関係が生まれつつあると見ることもできます。今後、エレベーターアセットのビジネスがスケールするかどうか、JESの高バリュエーションが業績で正当化され続けるかどうか、両社の動向から目が離せません。

エレベーターという身近な設備が、実は複数のビジネスモデルのフィールドになっているという事実、少し視点が変わりませんでしたか。ビルのエレベーターに乗るたびに、このエレベーターは誰が保守していて、この空間はどう収益化されているのだろうと考えてみると、意外なビジネスの面白さが見えてきます。

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