2026年4月29日、格闘ゲームファンのあいだで大きな話題となる一戦が行われました。それが対戦イベント獣道 The Beast vs The Bullです。
ストリートファイター6部門のメインマッチでは、日本が誇る格ゲーレジェンド・ウメハラ選手と、ドミニカ共和国出身のプロゲーマー・MenaRD選手が激突。最終スコア10-6でMenaRD選手が勝利し、REJECT公式YouTubeチャンネルには最大約17万人もの視聴者が集まりました。
ウメハラ選手といえば、世界で初めてプロゲーマーとしてギネス認定を受け、格闘ゲーム界で生ける伝説と呼ばれる存在です。そのウメハラ選手を下したThe Bull こと、MenaRD選手とはいったいどんな選手なのでしょうか。
MenaRDとはどんな選手なのか
MenaRD選手の本名はSaul Leonardo Mena II(サウル・レオナルド・メナ2世)。1999年8月26日生まれで、出身は中米カリブ海に浮かぶ島国、ドミニカ共和国です。現在26歳という若さながら、すでに格闘ゲーム界のレジェンドプレイヤーの一人に数えられています。
名前のMenaRDには意味があります。本名のMenaと、スペイン語でドミニカ共和国を意味するRepública Dominicanaの頭文字RDを組み合わせたものです。つまり名前そのものがドミニカ共和国の代表という意志を示しているのです。
ドミニカ共和国ってどんな国?
カリブ海に浮かぶ島国で、人口は約1,100万人。野球が国民的スポーツとして知られ、メジャーリーガーも多く輩出しています。格闘ゲームのプロシーンにおいては長らく無名の存在でしたが、MenaRD選手の活躍によって一気に世界から注目を集めるようになりました。
MenaRD選手のプレイスタイルで真っ先に目を引くのが、PS純正コントローラー(パッド)を使ってプレーするという点です。格闘ゲームの上位プレイヤーの多くがアーケードスティックやレバーレスコントローラーを使用するなか、ゲームに付属するような通常のパッドで世界の頂点に立っているのは異色の存在です。使用キャラクターはブランカ・ルーク・ザンギエフなど個性的なキャラが中心で、積極的に間合いを詰めた攻撃的な読み合いと、相手を追い詰めてからの択の精度が際立っています。
MenaRDが世界最強であり続ける理由
MenaRD選手の強さは、野性味あふれる大胆な読み合いです。安全を選びがちなプレイヤーが多いなかで、MenaRD選手は通ればリターンが大きい一発を臆せず狙い、そして執拗な逆択で試合のペースを自分のものにします。相手が嫌だと感じる場所に踏み込み続ける、攻撃的なスタイルが最大の武器です。
EVO Japan 2024の決勝では、遠距離を得意とするJPというキャラクターを使う翔選手に対し、ブランカのスライディングやローリングアタックで強引に懐へ入り込み、投げと打撃の2択を延々と迫るという戦法で圧倒しました。一度間合いを詰めたら離さない、まるで肉食獣のような戦い方です。
もうひとつの強みが、大舞台での心臓の強さです。緊張して慎重になりすぎるどころか、大きな舞台になればなるほど大胆な選択肢を通してくるのがMenaRD選手の本領です。2023年のストリートファイターリーグ決勝では、チームの大将戦と先鋒戦をほぼ一人でこなし、日本のFAVチーム相手に70ポイント中50ポイントを稼ぐという爆発的な活躍を見せました。
さらに特筆すべきは複数キャラクターを高いレベルで使いこなせる器用さです。ブランカ・ルーク・ザンギエフと、それぞれ全く異なる戦い方を求められるキャラクターを、どれも大会レベルの精度で使い分けます。相手の対策を事前に崩す選択肢の広さが、長期戦でも安定した強さを生んでいます。
そして忘れてはならないのが仲間との練習環境です。Capcom Cup 2017のグランドファイナルで一度ときど選手に敗れたあと、MenaRD選手は一緒に練習している仲間に立ち回りの修正点を聞き、わずかな控え室の時間で改善を施して逆転優勝しました。本人もそのときの勝因について、信頼できる仲間の存在が最大の勝因だったと振り返っています。世界最強のプレイヤーが、それでも仲間との対話を大切にし続けているのです。
パッドで世界一になれる理由とは?
アーケードスティックやレバーレスコントローラーが主流のプロシーンで、MenaRD選手はPS純正コントローラー(パッド)を使い続けています。海外の視聴者はその独特な持ち方を見てルービックキューブを解いているようだと表現したほどです。格闘ゲームは機材よりも読み合いと精度が勝敗を決めるという事実を、MenaRD選手の戦績が証明し続けています。
18歳で世界チャンピオンになった男の経歴
MenaRD選手がプロシーンに名前を刻んだのは2017年のことです。この年に開催されたCapcom Cup 2017において、当時わずか18歳で優勝を果たしました。
この優勝は格闘ゲーム界で歴史的な出来事でした。Capcom Cupは世界中のストリートファイタープレイヤーが集う最高峰の大会であり、優勝賞金はおよそ2,840万円(当時レート換算)にのぼりました。グランドファイナルでは日本のトッププレイヤー・ときど選手を3-1で下して優勝を決め、中南米出身としては史上初のCapcom Cup優勝者となりました。
しかしMenaRD選手の快進撃はそこで終わりません。2020年にもCapcom Cup 2020を制覇し、Capcom Cupを2度制覇した史上唯一のプレイヤーとなりました。
| 大会名 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|
| Capcom Cup 2017 | 優勝 | 18歳・中南米初優勝・賞金約2,840万円 |
| Capcom Cup 2020 | 優勝 | 史上唯一のCapcom Cup2度制覇 |
| EVO Japan 2024 | 優勝 | EVO冠大会初優勝 |
| EVO Japan 2025 | 優勝 | EVO Japan史上初の2連覇達成 |
| EVO 2025(ラスベガス) | 優勝 | EVO Japan・EVO本戦の2冠を同年に達成 |
さらにストリートファイター6の時代に入ると、EVO Japan 2024で初優勝を飾り、翌2025年も連覇を達成。EVO Japan史上初の2連覇というだけでなく、2025年8月のラスベガス本戦でも優勝し、同年に日米EVO2冠という前人未到の偉業を達成しました。
ドミニカへの熱い想いと、国を背負う覚悟
MenaRD選手が単なる強いゲーマーを超えた存在として語られる最大の理由は、母国ドミニカ共和国への深い愛情と献身にあります。
Capcom Cup 2017で手にした巨額の優勝賞金を、自国の格闘ゲームシーンとeスポーツシーンの育成に投じたことは格ゲーコミュニティで広く知られています。その後も自らeスポーツチームSanto Domingo Tigersを立ち上げ、国内の有望な選手を世界大会に送り出すための環境づくりに力を注いできました。
EVO Japan 2025優勝後の壇上インタビューでMenaRD選手は、ウメハラさん、連絡待ってますと力強くコールアウト。ファンを沸かせたこの一言が、今回の獣道開催へとつながりました。
EVO Japan(エボジャパン)とは?
毎年ラスベガスで開催されるEVO(Evolution Championship Series)の理念を受け継いで日本で行われる格闘ゲームの世界大会です。2024年はストリートファイター6部門に6,600人以上がエントリーするなど、世界最大級の格闘ゲームイベントのひとつです。EVO Japan 2025の賞金総額は1,500万円を超えました。
伝説の一戦、獣道 The Beast vs The Bullの全貌
2026年4月29日に行われたこの対戦イベントは、EVO・REJECT・Banditsが共催し、スト6部門のメインマッチとしてウメハラ選手対MenaRD選手の10先対決(先に10勝した方が勝利)が組まれました。
試合が始まると、ウメハラ選手が幸先よく2本を先取する好スタート。しかしその後MenaRD選手が3本を連取して逆転し、最初のサイドチェンジを2-3で迎えます。
サイドチェンジ後もMenaRD選手の勢いは止まらず5-2とリードを広げると、ウメハラ選手はインターバルを申請。ここからウメハラ選手が3本を連続で奪いスコアを5-5のタイに戻すという手に汗握る展開になりました。しかし2度目のサイドチェンジ後はMenaRD選手が再びペースを掌握し、最終スコア10-6でMenaRD選手が勝利しました。
試合後のコメントが両者の人柄をよく表していました。
MenaRD選手は、結果はどうでもよくて、格闘ゲームの神様と10先で戦うという夢がかなった、対戦していて、ウメハラ選手の情熱が伝わってきて感動しました、と語りました。
一方のウメハラ選手も、準備期間も長く、ベストなメンバーと練習してきた、それでも1ミリの言い訳の余地もなく負けた、残念だけどすがすがしい、と述べ、MenaRD選手への敬意とともに清々しい敗北を受け入れました。試合前には勝ったら誇っていいよと言い放ったウメハラ選手らしい、格好いいコメントでした。
ウメハラ選手とは?
梅原大吾(うめはら だいご)選手は、1981年生まれの日本を代表するプロゲーマーです。2010年にはギネス世界記録に、世界で最も長くプロゲーマーとして成功している人物として認定されました。ストリートファイターシリーズでは数十年にわたってトップレベルで活躍し続けており、世界中のプレイヤーから格ゲーの神様として尊敬されています。2026年で45歳になる今なお現役のプロゲーマーです。
MenaRDの凄さ、まとめると
MenaRDという選手の凄みは、単純な勝利数や実績の多さだけではありません。
まず18歳という若さで世界チャンピオンになり、それを1度ではなく2度達成したこと。次に、多くのプロが使わないPS純正パッドで世界の頂点に立ち続けていること。そして何より、自らの成功と賞金を母国ドミニカ共和国のeスポーツシーン全体の発展のために使い、後に続く選手たちのために道を切り開いてきたことです。
2025年に日米のEVO2冠を同年に達成したのち、ウメハラ選手へのチャレンジという夢にも挑んだMenaRD選手。試合後に格闘ゲームの神様と戦う夢がかなったと語ったその言葉は、世界最強の座に就いても格ゲーへの純粋な愛情を忘れない選手の本質を映しています。
今後のMenaRD選手の活躍から、目が離せません。


コメント