2024年1月に東証に上場したグローバルX 超短期米国債ETF(133A)。チャートを見ると、株価のような激しい上下動ではなく、まるでゆっくりと坂を登るように価格が上昇し続けています。なぜこのETFはじわじわと上がり続けるのでしょうか。
その理由は、このETFが投資している資産の性質そのものにあります。仕組みを一度理解してしまえば、むしろ上がるのが当たり前だと感じるくらいシンプルな構造です。
133Aとはどんな金融商品なのか
133Aの正式名称はグローバルX 超短期米国債ETFで、東証に上場しているETF(上場投資信託)の一つです。2024年1月29日に上場し、愛称はGX超短期米国債と呼ばれています。
このETFが連動を目指す指数はSolactive 1-3 month US T-Bill Index(円換算)です。名前の通り、残存期間が1カ月から3カ月の米国短期国債(T-Bills)のバスケットに投資することを目的としています。
T-Billとは:
T-Bill(ティービル)とは、米国政府が発行する満期1年未満の超短期国債のことです。米国財務省が発行するため世界最高水準の信用力を持ち、安全資産の代表格とされています。通常の債券のように定期的な利子払いではなく、額面より安く購入して満期時に額面を受け取る割引発行方式が特徴です。
133Aは1口単位で売買でき、決算は毎年1月、3月、5月、7月、9月、11月の年6回。隔月で分配金を受け取れる仕組みになっています。また新NISAの成長投資枠の対象ファンドであるため、分配金を非課税で受け取ることも可能です。
価格がじわじわ上がる理由は二つある
133Aの価格推移を見ると、一般的な株式ETFとは異なる動きが目立ちます。急騰や急落がほとんどなく、長期的に右肩上がりのグラフを描いています。この値動きの背景には、大きく分けて二つの要因があります。
理由1: 米国の高金利が利子収益を積み上げている
133Aが投資しているT-Billは、米国政府への貸し付けに対して利子を受け取る金融商品です。その利子率は米国の政策金利(FFレート)に連動して変動します。
2022年から2023年にかけて、米連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制のため急激な利上げを実施しました。その結果、T-Billの利回りは一時年率5%前後という水準まで上昇しました。低金利時代の日本の投資家にとって、安全性が高い米国政府債でこれほどの利回りが得られることは非常に魅力的に映りました。
T-Billの仕組みは、額面より安く購入して満期時に額面金額を受け取るというものです。この差額が利子収益にあたり、ETFの基準価額に着実に反映されていきます。毎日少しずつ利子収益がETFの価値に積み上がっていくため、チャートがゆっくりと右肩上がりになるのです。
理由2: 円安・ドル高が円換算の価格を押し上げている
133Aは為替ヘッジのない円建てETFです。米国のT-Billはドル建て資産ですが、東証では日本円で売買されます。そのためETFの価格はドル建ての資産価値とドル円の為替レートの両方に影響を受けます。
2022年以降、歴史的な円安が進行しました。ドル円が1ドル=110円台から150円台へと大幅に動いたことで、ドル建て資産を円に換算した価値が大きく上昇しました。仮にT-Billの価値自体が変わらなくても、円安が進むだけで円換算の価格は上昇します。
利子収益の積み上がりに加えて、この円安効果が重なったことが、133Aの価格が上場以来じわじわと上昇し続けている主な理由です。
価格上昇の構造をまとめると:
133Aの価格上昇は、T-Bill利子収益の積み上がりと円安による為替効果の組み合わせです。この二つが重なることで、リスクが低い資産でありながら円建て価格として右肩上がりのチャートが形成されています。
なぜ他の投資商品ではなく133Aが注目されるのか
似たような商品として、米ドル建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)や外貨預金があります。133Aはそれらとどう違うのでしょうか。
| 比較項目 | 133A(超短期米国債ETF) | 米ドルMMF | 外貨預金 |
|---|---|---|---|
| 取引方法 | 株のように東証で売買 | 証券会社経由 | 銀行窓口・アプリ |
| NISAの利用 | 成長投資枠で可 | 一部対応 | 不可 |
| 信託報酬 | 比較的低い | やや高め | なし(為替手数料あり) |
| 分配金 | 隔月分配あり | 毎日自動再投資 | 利子として受取 |
| リスク | 為替リスクあり | 為替リスクあり | 為替リスクあり |
133Aの最大の強みは東証に上場していることです。証券口座さえあれば株と同じ感覚で売買でき、新NISAの成長投資枠を使えば分配金が非課税になります。MMFは魅力的な商品ですがNISA口座での非課税メリットが得にくく、外貨預金は為替手数料のコストが大きくなることがあります。
手間なく米国短期金利にアクセスでき、隔月の現金収入も得られる手軽さが、特に2024年の新NISA開始以降に個人投資家から支持を集めた理由です。
133Aが持つリスクも理解しておこう
じわじわ上がり続けているとはいえ、133Aにはリスクが存在します。投資を検討する前に必ず確認しておきましょう。
円高になると価格が下がる可能性がある
為替ヘッジのない商品であるため、急激な円高が進んだ場合、ドル建て資産価値が変わらなくても円換算の価格は下落します。たとえば1ドル=150円が1ドル=130円に動いた場合、円建て価値は約13%目減りします。T-Billの利子収益だけではそのような為替損失をカバーしきれない場合もあります。
米国が利下げに転じると利回りが低下する
T-Billの利回りはFFレートに連動します。FRBが利下げを進めると、T-Billから得られる利子収益が減少し、ETFの価値上昇のペースが鈍化します。2024年後半からFRBは段階的な利下げを開始しており、今後の金融政策の行方は重要な注目点です。
超短期国債のメリット:
超短期国債はデュレーション(金利感応度)が非常に短いため、長期国債と比べて金利変動による価格のブレが小さいのが特徴です。利下げ局面でも価格の急落リスクは限定的ですが、利回りが徐々に低下していく点は理解しておく必要があります。
新NISAで133Aを使う際のポイント
133Aは新NISAの成長投資枠に対応しており、年間240万円までの投資枠を使えます。特に以下のような方に向いている商品といえます。
まず、余裕資金を運用したい方です。株式やリスク資産への投資タイミングを待ちながら、待機資金に利回りを乗せたいというニーズに応えられます。普通預金に置くよりも利回りが見込め、いざ必要になれば東証で即座に売却できる流動性の高さも魅力です。
次に、分散投資の一環として安定資産を組み入れたい方にも向いています。国内株式や米国株式との組み合わせで、ポートフォリオ全体のリスクを抑える役割を担えます。株式市場が大きく下落する局面でも、T-Billは比較的安定した動きを見せる傾向があります。
また、隔月で定期収入がほしい方にとって、年6回の分配金スケジュールは生活設計に組み込みやすいといえます。NISA口座で保有すれば分配金が非課税になるため、手取りの受取額が増える点もメリットです。
アメリカ不況・日本不況・円高・円安、シナリオ別に133Aはどう動く
133Aの価格は米国金利と為替という二つの変数で動きます。今後の経済シナリオを整理すると、どのような状況でプラスになり、どのような状況でマイナスになるのかが見えてきます。
| シナリオ | T-Bill利回りへの影響 | 為替への影響 | 133A円建て価格 | ひとこと解説 |
|---|---|---|---|---|
| 米国が不況に | FRBが利下げ → 利回り低下 | ドル安・円高になりやすい | 下落圧力が強い | 利回り低下と円高のダブルパンチ。最もダメージが大きいシナリオ |
| 日本が不況に | 直接の影響は小さい | 円安になりやすい(日銀が利上げ困難) | 上昇しやすい | 円安が進むほど円換算価格は上がる。相対的に有利なシナリオ |
| 米国・日本ともに好況 | 高金利維持またはやや低下 | 日銀利上げで円高方向 | 横ばい〜小幅上昇 | 利子収益は得られるが円高で相殺される可能性あり |
| 急激な円高(1ドル=130円以下) | 変化なし | 円高で資産価値が目減り | 下落 | 利子収益では円高損失をカバーしきれないケースがある |
| 急激な円安(1ドル=160円超) | 変化なし | 円安で円換算価格が上昇 | 上昇 | T-Bill自体の価値が変わらなくても為替だけで価格が押し上げられる |
| 世界的な金融危機 | 安全資産として需要増 → 利回り低下 | 円高・ドル安になりやすい | 下落リスクあり | リスクオフでも円高が強まれば円建て価格にはマイナス |
表を見るとわかる通り、133Aにとって最も嬉しいシナリオは日本が不況で円安が進む局面であり、逆に最も厳しいのはアメリカが不況になり利下げと円高が重なる局面です。米国短期国債そのものは世界最高水準の安全資産ですが、為替ヘッジのない円建てETFである以上、円高リスクは切り離せません。
米国不況になると短期金利はどうなる:
歴史的に、米国が景気後退に入るとFRBは急速な利下げを実施してきました。2008年のリーマンショック時には政策金利が5%超から0%付近まで下がり、T-Billの利回りもほぼゼロに近づきました。不況下では利子収益の積み上がりというメリットが失われ、かつ安全資産への逃避で円高が進みやすいため、133Aの円建て価格は二重の下落圧力にさらされることになります。
バフェットも超短期国債を50兆円積み上げていた
世界最大の投資家ウォーレン・バフェット氏も同じ発想で動いていました。バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、2025年3月末時点で約3,477億ドル(約50兆円)という過去最高の手元現金を積み上げており、その大半をT-Bill(米財務省短期証券)で運用していることが株主への手紙などで明らかになっています。
バフェット氏自身、2024年の年次報告書の中でこう語っています。
「財務省短期証券の利回りが改善し、流動性の高い短期証券の保有を大幅に増やしたことで、投資収入が大幅に増加したことが功を奏した」
さらに注目すべきは、バフェット氏がT-Billを保有する理由です。氏は以前、米国債の購入について唯一の問題は3カ月物にするか6カ月物にするかだと語っており、できる限り短期で運用する方針を示してきました。これは、将来の市場混乱に備えて即座に動ける状態を保つためです。
バークシャーの手元現金はドットコムバブル崩壊以来22年ぶりの高水準に達しており、市場参加者の間では魅力的な投資先が見当たらないという判断とともに、相場の急落局面で一気に買い向かう準備と見る声もあります。
個人投資家とバフェットの違い:
バフェット氏のT-Bill保有はドル建てで直接保有しており、為替リスクの問題が生じません。一方、日本の個人投資家が133Aを保有する場合は円建てであるため、円高時には価格が下落するリスクが伴います。同じT-Billへの投資でも、為替の有無という点で性質が異なることは覚えておく価値があります。
133Aの価格上昇は利子と円安の組み合わせ
133Aがじわじわ上がり続けてきた理由を整理すると、米国の高金利環境によるT-Billの利子収益の積み上がりと、円安・ドル高による為替効果、この二つが同時に働いてきたからです。
株式投資のように大きな値上がりを狙う商品ではなく、リスクを抑えながら安定した収益を積み上げるという点では、非常にわかりやすい構造を持っています。今後は米国の金利動向や円相場の行方を注視しながら、ポートフォリオの中での位置づけを考えると良いでしょう。


コメント