「毎日褒めて育てているのに、なぜか子どもが自分で動かない」と首をかしげたことはありませんか?
子育てって、本当に正解がわからなくて途方に暮れることがありますよね。
そんな子育て中のパパ・ママにこそ読んでほしいのが、小倉広氏が著した『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社・2014年)です。アドラー心理学は「嫌われる勇気」で一気に有名になりましたが、この本はもっと読みやすく、日常の子育てシーンにすぐ使える知恵が100個ギュッと詰まっています。
今回はビジネスと子育てを両立する親の視点で、この本の核心を徹底的に読み解いてみました。読み終わるころには、明日からの子どもへの声かけが、きっと変わっているはずです。
著者・小倉広氏はなぜ子育てにも使えるアドラー本を書けたのか
著者の小倉広氏は、組織人事コンサルタントとして活躍するビジネスパーソンです。「任せる技術」「自分でやった方が早い病」など、職場のマネジメントに関する著書で知られています。しかし実は、リーダーシップに悩んでいた時期にアドラー心理学と出会い、アドラー心理学の第一人者・岩井俊憲氏に師事して心理カウンセラーの資格まで取得した人物でもあります。
ここが重要なポイントです。職場の部下マネジメントも、家庭の子育ても、根っこにある課題はまったく同じなのです。「どうすれば相手が自分から動くようになるか」「なぜ感情的になってしまうのか」「人間関係のストレスをどう減らすか」という問いに、アドラーは100年以上前にすでに答えを出していました。
本書の構成を子育て視点で整理してみた
本書は100の言葉を10のテーマに分け、見開き1ページで1つの言葉と解説が完結する構成になっています。育児中で本を読む時間が取れない親にとって、どこからでも読め、1分あれば1つの気づきが得られるこのフォーマットはとても助かります。
| テーマ | 子育てでの活用シーン |
|---|---|
| 感情(感情には隠された目的がある) | 子どもに怒鳴ってしまう自分を理解する |
| ライフスタイル(性格は今この瞬間に変えられる) | 育て方への思い込みや固定観念を手放す |
| 教育(叱ってはいけない、ほめてもいけない) | 褒める・叱るに代わる声かけを学ぶ |
| 課題の分離(他人の課題を背負ってはいけない) | 子どもの宿題・片付け問題のストレスをなくす |
| 共同体感覚(幸せになる唯一の方法は他者への貢献) | 子どもの自立心・協調性を育てる |
| 自己決定性(すべてあなたが決めたこと) | 子どもが自分で選び、責任をとる力を育む |
子育て中の親に特に刺さる3つの核心
1. 「褒める子育て」は実は子どもを弱くする
「褒めて伸ばす」という考え方は、いまや子育ての常識のように語られています。しかしアドラーはこれを真っ向から否定します。褒めるという行為は、上から下への評価であり、親子の間に縦の支配関係を生み出してしまうのです。
「すごいね」「えらいね」と言われ続けた子どもはどうなるか。褒められることが行動の目的になってしまいます。誰も見ていない場面では頑張れなくなり、親や先生に評価してもらえない環境になったとたん、急激に意欲を失ってしまうのです。これは職場に置き換えると、上司に褒められるためだけに働く社員が育つ状況と全く同じです。
アドラーが推奨するのは「感謝」です。「えらいね」の代わりに「ありがとう、助かったよ」と伝える。「すごいね」の代わりに「それを見てうれしかった」と自分の気持ちを伝える。この小さな言葉の違いが、評価を求めるのではなく、自分の意志で動ける子どもを育てていくのです。
豆知識:褒めすぎると「褒められないと動けない子」になる理由
公認心理師の研究によると、細かいことでも頻繁に褒められて育った子どもは、褒められない状況を異常と感じるようになると指摘されています。進学先や習い事の場など、褒めてくれる人がいない新しい環境に入ったとき、適応できずに意欲を失いやすいのです。「自分がどうしたいか」ではなく「大人はどう思うか」を基準に動く子どもになってしまうリスクがあります。
2. 「宿題しなさい!」と言い続けても逆効果な理由
子育て中の親が最も消耗する悩みのひとつが「子どもが自分でやらない」問題です。宿題、片付け、準備。いくら言っても動かない子どもに、毎日ため息をついている親は少なくないでしょう。
アドラーの「課題の分離」という考え方は、このストレスを根本から解消してくれます。シンプルに言うと、その課題の結末を最終的に引き受けるのが誰かで、それが誰の課題かが決まるのです。
宿題をするかしないか、その結末として授業についていけなくなったり先生に叱られたりするのは、子ども自身です。つまり宿題は子どもの課題であって、親の課題ではありません。親の課題は、勉強できる環境を整えること、なぜ勉強が大切かを伝えることまでです。
「でも放っておいたら本当にやらない」という心配はよくわかります。しかしアドラーはこう言います。自分でやらなかった結果を体験することが、最大の学びになると。失敗して恥ずかしい思いをすること、困ること、そこから「次はやろう」と自分で気づくことが、子どもを本当の意味で自立させるのです。
親が先回りして怒ったり、代わりに用意してしまうと、子どもは「自分が何をしても親がなんとかしてくれる」と学習し、依存的な性格が育ってしまうのです。これはビジネスの現場で過干渉な上司が部下の成長を妨げる構造と全く同じです。
3. 子どもへの怒りは「感情」ではなく「道具」だった
夕食の準備中に子どもが散らかし続ける。何度言っても約束を守らない。そのたびに感情的になってしまう自分が嫌で、「こんな親でごめんね」と落ち込む親は多いでしょう。
アドラーはここで衝撃的なことを言います。あなたは感情に支配されて怒鳴ったのではない、と。「言うことを聞かせたい」「自分の権限を示したい」という目的のために、怒りという感情を自分で生み出して使っているのだ、と言うのです。
これを知ると、怒ってしまった自分を責め続ける必要がなくなります。感情に飲み込まれたのではなく、目的があってその感情を選んでいたのだと気づける。そしてイライラしそうになったとき、「私は今、何のためにこの感情を使おうとしているのだろう?」と一瞬立ち止まれるようになります。
子どもに怒鳴ることが減るだけで、親子の関係は驚くほど穏やかになります。怒鳴られて育った子は、怒鳴ることで問題を解決しようとする大人になりやすいというのも、アドラーが示す重要な視点です。
豆知識:アドラーが子育てに力を入れていた理由
アルフレッド・アドラー(1870年〜1937年)は、フロイト・ユングと並ぶ心理学の三大巨頭の一人です。彼は個人心理学を提唱する一方で、教育や子育てへの関心がとりわけ強く、生涯を通じて教師向けの講演や子育て相談に取り組んでいました。「子どもの人格形成に最も影響を与えるのは幼少期の親との関係だ」というアドラーの考えは、現代の発達心理学にも大きな影響を与えています。「自己啓発の父」とも呼ばれるゆえんは、ビジネスだけでなく家庭教育においても、その思想が現代に生き続けているからです。
読んでいて正直に感じた難しさ
公平なレビューとして、この本を読んで少し戸惑った部分にも触れておきます。アドラーの考え方は、読むと「確かにそうだ」と納得できる一方で、実際の子育て現場で実践しようとすると、かなり難しさを感じます。
特に「課題の分離」は、子どもを愛しているからこそ徹底しにくい考え方です。「これは子どもの課題だから放っておこう」と頭ではわかっても、子どもが困っているのを見て何もしないのは親として本当につらい。
アドラーも「課題の分離は見捨てることではない」と言っており、課題に踏み込まないことと、側で見守って必要なときに助けを求めやすい環境を作ることは、別の話です。
また、精神的に疲弊しているときにこの本を読むと「すべて自分の選択だ」という言葉が重荷に感じることもあります。育児で消耗しているときではなく、少し余裕があるタイミングで手に取るのがおすすめです。
明日から使える3つの実践アクション
アクション1:「えらいね」を「ありがとう」に変える
子どもがお手伝いをしてくれたとき、「えらいね」の代わりに「助かった、ありがとう」と言ってみてください。最初は照れくさいかもしれませんが、子どもの表情が変わるのを感じられるはずです。
アクション2:宿題・片付けで悩んだら「誰の課題か」を問う
子どもがやるべきことをやらないときは、「その結末を最終的に引き受けるのは誰か」と自分に問いかけてみてください。子どもの課題だと気づけたとき、不思議なほどイライラが静まります。
アクション3:子どもに怒鳴ってしまったら「目的」を考える
感情的になってしまった後で、「私はあの瞬間、何のためにあの感情を使ったのだろう」と振り返ってみてください。自分を責めるのではなく、目的を分析する。この習慣が、少しずつ親としての在り方を変えてくれます。
総評
子育てに正解はないとよく言われますが、それでも「この方向で進んでいいんだ」という指針がほしいとき、この本は静かに背中を押してくれます。見開き1ページの名言集形式なので、子どもが寝た後のわずかな時間にも読め、気になる章だけを開くこともできます。
特に、子どもの自立に悩む親、つい感情的になってしまう自分が嫌だという親、子どもとの関係を根本から見直したい親には強くおすすめします。ビジネスの場で鍛えた「人を動かす」思考を、子育てにも活かしたいと考えているパパ・ママには、この本が両方の課題に一度に答えてくれる一冊になるでしょう。
アドラーが100年前に伝えたかったことはシンプルで、子どもを自分の思い通りにしようとするのをやめ、一人の人間として信頼して見守ること。その覚悟が持てたとき、親も子も、もっと楽に生きられるようになるのだと思います。


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