日経平均が2倍になる間に2割下落したNTT株の正体は通信会社から資産回転企業への転換途中

ntt 株式

NTTの株価は2026年7月10日終値で147.6円、2024年1月に付けた高値192.9円から約23%低い水準にあります。この間、日経平均株価は約3年で2倍超に上昇しました。日本を代表する通信会社が、史上有数の株高相場に完全に置き去りにされた形です。

しかも2025年度決算は増収増益、配当は16期連続増配予定、2,000億円の自社株買いまで発表済みという状況で、株価だけが動きません。業績が良いのに株価が上がらない銘柄には、必ず市場が織り込みきれていない構造変化があります。

NTTの場合、それは通信会社から資産を作って売る会社への転換です。この記事では、直近の決算数値と株価指標を整理した上で、NTT株が低迷する本当の理由と、買い時を判断するための具体的な水準を解説します。

株価147円のNTTを数字で確認する

最初に現在地を押さえます。以下は2026年7月上旬時点の主要指標です。

項目 数値
株価(2026年7月10日終値) 147.6円
年初来高値(2026年1月6日) 161.2円
年初来安値(2026年6月23日) 142.6円
10年来高値(2024年1月23日) 192.9円
時価総額 約13.4兆円
PBR(実績) 1.23倍
予想配当利回り 約3.6%
アナリスト平均目標株価 169円

1単元100株が約1.5万円で買える手軽さは、2023年7月に実施した1株を25株にする大型分割の産物です。分割前の株価に換算すると3,600円台に相当し、分割直後の熱狂で4,800円相当まで買われた後、ずっと値を下げてきた計算になります。新NISAで初めて買った株がNTTだったという読者も多いはずで、含み損のまま塩漬けになっているケースが典型です。

25分割の背景:

2023年の分割前、NTTの最低投資金額は約40万円でした。分割によって1万円台まで下がり、若年層や投資初心者の買いやすさが一気に高まりました。ただし買いやすさは売りやすさでもあり、株価が下がる局面では個人の投げ売りが出やすくなる側面も持ちます。

2025年度決算は増収増益なのに2026年度は減益予想という矛盾

2026年5月8日に発表した2025年度決算の数字を確認します。営業収益は前期比5.1%増の14兆4,091億円、営業利益は1兆7,062億円、純利益は1兆370億円でした。グローバル・ソリューション事業の成長とデータセンター事業の拡大が業績をけん引しています。

一方、2026年度の会社予想は連結純利益9,800億円と前期比5%の減益です。増収なのに減益という予想が、決算発表後も株価の重石になっています。ここで多くの個人投資家が見落とすのが、2025年度の利益に含まれる一過性の売却益の存在です。次の章で説明するデータセンターのREIT譲渡によって、NTTデータグループは約1,443億円の譲渡益を計上しました。純利益1兆370億円のうち約14%が、通信料でもシステム開発でもなく、資産売却から生まれた利益という構図です。この分がはげ落ちる2026年度が減益予想になるのは、会計上はむしろ自然な流れになります。

NTTは通信会社から資産回転企業に変わりつつある

2025年7月14日、NTTデータグループはデータセンター特化型REITのNTT DC REITをシンガポール証券取引所に上場させました。米国カリフォルニア州サクラメントの3物件、バージニア州アッシュバーンの1物件、オーストリアのウィーン、シンガポールの計6物件、総電力容量90.7メガワットを組み入れ、譲渡総額は2,295億円に達しています。IPOでは約7.7億米ドルを調達し、シンガポール政府系ファンドのGICがNTTに次ぐ第2位の株主として参加しました。

この仕組みの意味を分解します。NTTグループは中国事業者を除き世界第3位のデータセンター事業者で、2025年3月末時点で約1,500メガワットの容量を運営し、2024年度には4,130億円を投資しました。データセンターは建設に数百億円単位の資金がかかり、投資回収に長い年月を要します。そこで完成した施設をREITに売却して資金を回収し、その資金で次の施設を建てる。売却後も施設の運営と資産運用の受託で手数料収入を得る。不動産デベロッパーが分譲マンションを作って売るのと同じ資本循環モデルを、AIブームの主役であるデータセンターで回し始めたわけです。

つまりNTTの利益は今後、安定した通信料収入に、資産売却のタイミングで大きく変動する売却益が上乗せされる形に変わります。従来の安定高配当株という物差しだけで決算を見ると、増益と減益が交互に来るように見えて評価を誤ります。見るべき指標は当期純利益の増減よりも、データセンターの受注残と稼働容量、そしてREITへの追加譲渡の有無です。

上場先がシンガポールだった理由:

組み入れたデータセンターの大半が海外物件だったため、海外資産への許容度が高いシンガポールREIT市場が選ばれました。日本のJ-REIT市場はデータセンターへの投資が制度上進めにくく、日本有数の大企業の資産受け皿として選ばれなかったことが、不動産業界で波紋を広げたと東洋経済が報じています。

株価低迷のもう一つの要因は3連続の巨額買収です

資産回転モデルへの転換と並ぶもう一つの重石が、買収資金の負担です。NTTは2020年にドコモ完全子会社化で約4.3兆円を借り入れ、2025年にはNTTデータグループの完全子会社化に伴い約2.6兆円の社債を発行しました。さらに2025年にはドコモが住信SBIネット銀行を約4,200億円で連結子会社化し、銀行サービスのd NEOBANKを開始しています。

買収それ自体は事業戦略として筋が通っています。楽天、ソフトバンク、KDDIが金融と決済で先行する中、ドコモだけが銀行機能を持たない状態でした。それでも借入と社債で調達した資金には金利がかかります。日銀の利上げ局面では支払利息が増え、利益を直接圧迫するため、有利子負債の大きいNTTは金利上昇に弱い銘柄として売られやすい構造にあります。自己資本比率が通信業界内で低水準にあることも、同じ理由で機関投資家の警戒対象です。

社名の話も添えておくと、2025年7月に商号を日本電信電話株式会社からNTT株式会社に変更しました。電信も電話も主力ではなくなった実態に名前を合わせた変更で、上記の事業構造転換と同じ方向を向いた動きです。

16期連続増配と2,000億円自社株買いの中身

株主還元は数字で見ると手厚い部類に入ります。2026年度の年間配当は1株5.4円と前年度から0.1円の増配予定で、実現すれば16期連続増配です。配当性向は約42%と無理のない水準で、2003年度と比べると配当額は10倍以上に拡大しました。100株保有なら年間540円を受け取れる計算です。

自社株買いは2026年5月8日に2,000億円を上限とする取得を決議し、取得期間は2026年5月11日から2027年3月31日までとなっています。上限14億株は発行済株式数の1.72%に相当し、約1年間にわたって株価の下値を支える買い需要となる見込みです。累計の自社株取得額は2026年3月までで約5.9兆円に達しており、還元姿勢は一貫しています。

還元策 内容 ポイント
配当 年間5.4円(予想) 16期連続増配予定、性向約42%
自社株買い 2,000億円上限 2027年3月末まで、発行済の1.72%
株主優待 dポイント進呈 100株以上を2年以上継続保有で1,500ポイント、5年以上で3,000ポイント

優待利回りの意外な高さ:

投資額約1.5万円に対して2年後に1,500ポイントを受け取れるため、優待だけで投資額の約10%に相当します。配当と合わせた実質利回りで見ると、大型株としては異例の水準です。dポイントを日常的に使う人ほど恩恵が大きくなります。

買い時の目安を配当利回りとシナリオで整理する

NTT株の買い場を測る物差しとして使いやすいのが配当利回りです。年間配当5.4円を前提にすると、利回り4%に達する株価は135円になります。2025年のトランプ関税ショックの急落時でも135円近辺で下げ止まった実績があり、この水準は過去の売られすぎラインと重なります。現在の147円台は利回り3.6%で、悪くはないものの割安と言い切れる水準までは距離が残る位置です。

シナリオ 想定株価 前提条件
強気 169円以上 データセンター受注拡大とREIT追加譲渡で利益成長が確認され、アナリスト平均目標株価に到達
中立 145円から160円 2024年6月以降続くレンジ相場が継続、配当と自社株買いが下値を支える
弱気 135円近辺 金利上昇の加速や相場全体の急落で利回り4%ラインまで売られる

チェックすべき今後の材料も挙げておきます。直近では2026年8月6日の第1四半期決算が最初の関門です。減益予想の初年度がどんな滑り出しになるか、データセンター関連の受注がどこまで積み上がるかを確認してください。次に日銀の金融政策で、追加利上げがあれば有利子負債の大きいNTTには逆風、据え置きなら高配当株としての相対的な魅力が増します。REITへのデータセンター追加譲渡が発表されれば、その期の利益が押し上げられる点も頭に入れておくと決算の読み間違いを防げます。

安定高配当株の看板は一度忘れてください

NTT株の現状を一言で表すなら、安定高配当株の顔をした事業転換途上の企業です。通信料収入という土台の上に、データセンターを建てて売る資産回転ビジネスと、銀行を含む金融事業が載り始めました。転換期の企業は投資負担が先行し、利益の変動も大きくなるため、株価は評価しづらくなります。日経平均2倍の相場で置き去りにされた理由はここにあり、業績が悪いからという単純な話とは違います。

すでに保有している人は、配当5.4円と自社株買いを受け取りながら、8月6日の決算でデータセンター事業の進捗を確認する。新規で検討している人は、147円台で少しずつ買うか、利回り4%の135円近辺まで指値で待つかを自分の資金計画に合わせて決める。どちらの場合も、四半期ごとの純利益の増減に一喜一憂せず、受注残と稼働容量という実需の数字を追ってください。

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