「運動によって脳は物理的にアップグレードできる」という希望に満ちた事実

【本】

『脳を鍛えるには運動しかない!』というタイトルは、一見すると体育会系の根性論や、単なるダイエット本のキャッチコピーのように聞こえるかもしれません。
運動という行為が私たちの脳に及ぼす影響についての、驚くべき神経科学の最前線です。ハーバード大学医学部准教授であるジョン・J・レイティ博士によって書かれた本書は、運動が生理学的にどのように脳の構造を変え、知能を高め、精神的な不調を改善するかを、膨大なデータと臨床例に基づいて証明した画期的な一冊であり、世界中で運動に対するパラダイムシフトを引き起こした名著として知られています。

脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方 | ジョン J.レイティ, エリック ヘイガーマン, 野中 香方子 |本 | 通販 | Amazon
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本書の冒頭で紹介されるアメリカ・イリノイ州のネーパーヴィル・セントラル高校の事例は、教育関係者のみならず、インパクトがありました。この高校では「0時限目」という早朝の授業枠を設け、生徒たちに読み書きの授業ではなく、心拍数を最大心拍数の80〜90%まで上げる激しいランニングを行わせました。
その結果、生徒たちの基礎体力が向上したのはもちろんですが、最も劇的だったのは学力の向上です。このプログラムに参加した生徒たちは、理科で世界1位、数学で世界6位という驚異的な成績を叩き出しました。運動が脳の準備運動となり、学習効率を飛躍的に高めることを証明したこのネーパーヴィル・トレンドは、文武両道という精神論を、科学的なメソッドへと昇華させた象徴的なエピソードです。

なぜ、体を動かすことが頭を良くするのか。著者はそのメカニズムを、「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質の働きによって解き明かします。
レイティ博士は、BDNFを脳のための奇跡の肥料と呼びます。私たちが有酸素運動を行い、心拍数を上げると、脳内でこのBDNFが分泌されます。これがニューロン(神経細胞)の回路を増やし、細胞間の結合を強化し、さらには新しい脳細胞の生成さえも促すのです。
かつて脳細胞は死滅する一方で、増えることはないというのが定説でしたが、本書はその常識を覆し、運動によって脳は物理的にアップグレードできるという希望に満ちた事実を突きつけます。つまり、ランニングシューズを履いて走り出すことは、単にカロリーを消費するためではなく、脳のインフラを整備するための最も効率的な投資なのです。

また、本書が優れているのは、運動の効果を単なる頭の良さだけでなく、メンタルヘルスの改善という側面からも深く掘り下げている点です。
ストレス、不安障害、うつ病、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、依存症、そして加齢による認知症。現代人を悩ませるこれらの精神的な課題に対し、運動がいかに強力な薬として機能するかが、具体的な症例とともに語られます。
運動をすると、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質のバランスが整えられます。著者は運動は副作用のない服用量無制限の抗うつ剤であると断言し、薬物療法に頼る前に、まずは心拍数を上げる運動を処方することの重要性を説きます。
特に、集中力が続かない子供や、強いストレスを感じているビジネスパーソンにとって、本書が示す解決策は非常に実践的であり、すぐにでも生活に取り入れられるものです。

この本を読み終えたとき、「運動」に対するモチベーションがかわりました。
「痩せるため」「筋肉をつけるため」という見た目の変化を目的とした運動は、辛くて挫折しがちです。しかし、「脳を最高の状態にするため」「不安を消してポジティブになるため」という目的であれば、運動は食事や睡眠と同じくらい欠かせない生存戦略になります。
ただ散歩をするだけでなく、息が上がるほどの運動を生活に組み込むこと。それが、予測不能な現代社会を生き抜くための最強の武器になると教えてくれる本でした。

※章をやめて、一気に書き上げた文章にしてみましたが見づらいので今後はやめます。

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